東方翔霊録ーЯe:bootー   作:来翔

9 / 9
お久しぶりです。
1年ぶりの投稿になります。リアルで忙しくてあまり執筆に時間をかけていられませんでした。
少しだけ、書こうと思ったら筆が乗ってしまい1話書き上げる事ができたので投稿させていただきます!
では、本編へ。


翔聖初仕事〜後編〜

「畑仕事と言われても具体的に何をすればいいの?多分秦羅だからわかると思うけど、土いじりすらろくにした事がない都会っ子だから多分役に立たないと思うけど……」

「鍬持って耕せとは言わないさ。そんな事だろうと思って前もって相談しておいたよ。ひとまず今日の仕事の内容は依頼場で説明されるはずだ。行くぞ」

 

秦羅はそれだけ言うと、歩き始める。そんな秦羅に翔聖は遅れないように駆け足でついて行く。

ひとまず土いじりが出来なくても、自分が役に立てそうな仕事があって翔聖は安堵していた。

 

〜少年達移動中〜

 

暫く歩いて十数分後に、秦羅の今日の依頼人と思われる人物の畑に着いた。幼少期に祖母の家で見た畑に翔聖は懐かしさを覚えていた。

2人の到着を見ると、依頼人と思われる男性が駆け寄ってくる。

 

「ありがとうございます、秦羅さん。今日はこんな依頼を受けてくださって」

「いえ、構いません。この多忙な時期に人手が足りないのは支障をきたしますからね。僕も経験はありますから、遠慮なく頼ってください」

「ありがとうございます。そして、後ろにいるのが……」

 

男性は秦羅と挨拶を終えると、彼の後ろにいた翔聖と目が合う。

目が合った翔聖は、一瞬ドキリとするが先に名乗らねばと秦羅の前に立つ。

 

「か、神代翔聖です!き、今日はよろしくお願いします!」

「そんなに硬くならなくても大丈夫ですよ。秦羅さんから聞いてます、彼の助手なんですってね。今日はよろしくお願いします」

 

翔聖は助手なの?という顔で秦羅を見るが、身に覚えがないといった顔をして視線を逸らした。

確かに秦羅の元で働くのだから助手というのは間違いないため特別に嫌な気分はしないが、辻褄を合わせるために前もって言ってほしかったと翔聖は思った。

 

「あの、僕は今日何すればいいんですか?」

「畑仕事は初と聞いたので、草取りお願いできますか?」

「く、草取りですか……?」

 

翔聖は思わず拍子抜けしてしまった。依頼と言ったからもっと厳しいものかと思ったからだ。

だが、それと同時に自分でも出来るなと安心した。

 

「ええ、頼めますか?」

「はい!やらせてください!」

 

翔聖の不満も感じられない勢いのある返答に男性は笑顔で頷いてみせる。

 

「秦羅さんはいつも通り鍬で耕してくれますか?」

「はい、わかりました。翔聖、あそこの小屋で着替えるぞ」

「う、うん……!」

 

翔聖は、一足先にと向かう秦羅の後を追いかけるようにかけ出す。

初めての本格的な農作業という事で興奮が抑えられずにいた。だが、それと同時にやれるのかという不安も出てきた。

 

「おい、翔聖」

「な、なに?秦羅」

 

そんな彼の不安は秦羅に見抜かれていた。小屋に入ろうとしていた秦羅は、小屋に入りつつ背中を向きつつであるが声をかけた。

 

「初めから上手くやれる奴なんていない。失敗して人間ってのは成長していくんだ。それにお前を紹介したのは俺だ。例え失敗して、今回の依頼が破棄になったとしてもお前を恨んだりはしない。全て俺の責任だからな。お前の意見も聞かずにこの仕事を受けたんだからな」

 

とても年下とは思えない言葉をかけられた翔聖は、思わず秦羅を見つめて無言になってしまう。そんな秦羅は彼の返答を待たずに続ける。

 

「だから気を張りすぎるな。手を抜けとは言わないが……ガッチガチになりすぎると失敗しすぎるからな。お前はお前なりの頑張りをすればいいいんだ」

 

秦羅の言葉に翔聖は、肩にのしかかっていた重荷が取れたような気がした。

この様な言葉をかけられたのは、久しぶりだった気がする。励ましの言葉などいつ以来だろうか。思わず翔聖は涙ぐみそうになるも、変な心配をかけまいと耐えた。

 

「ほら、早く着替えろ。待っているぞ」

 

そんな翔聖を他所にいつの間にか、秦羅は着替え終わっており、外に出ていた。

 

「あ、うん。待ってて急ぐから」

「先に行ってるからな。急ぐのもいいが、下準備だけはしっかりしておけよ。些細なミスで怪我をする。……怪我なんてされたら霊夢に何を言われるか……たまったもんじゃないからな」

「そ、そうだね。気をつけるよ」

 

着替えを終えた翔聖は先に出ていた秦羅を追いかけるべく、小屋を後にする。

 

「それじゃ、俺とは別行動だ。何度も言うがくれぐれも怪我だけは気をつけろよ。霊夢にどやされるのは俺なんだからな」

「うん、わかってるよ。秦羅こそ気をつけてね」

 

秦羅は頷くと、立てかけてあった鍬を手に奥の方へと歩いていく。それを見送ると深呼吸をしてから持ち場に向かう。

初めての仕事の開始ではあるが先程の秦羅の言葉が効いたのか身体が軽い、これならやれそうだと翔聖は自分を奮い立たせることができた。

 

(よし、頑張るぞ。僕なりに頑張るんだ)

 

翔聖は、気合の一発と頬を叩き自分の持ち場に足を運ぶと声を上げる。

 

「改めて、神代翔聖です。今日はよろしくおねがいします!」

 

〜少年作業中〜

 

初の農作業は堪えたようで、休憩を挟みつつであったが半日で腰や膝が悲鳴を上げていた。それを示すかのように夕日に照らされながら地面にうつ伏せで寝ている。

 

「ふぉぉぉ……あ、足腰がぁ……」

「お疲れ様です、翔聖さん。初の農作業はどうでしたか?」

「足腰が……痛いです。秦羅はすごいですね……」

 

そんな状態の彼に話しけてきた依頼人と話しつつ、奥の畑で今もなお鍬で畑を耕している秦羅を見て感心してしまう。自分よりも年下なのにテキパキとこなす姿に。

翔聖の言葉に依頼人は、確かにと返答するもこう続けた。

 

「秦羅さんも最初の頃は翔聖さんと同じ、いや翔聖さんよりもできていませんでしたよ。同年代の息子よりもね。結局は慣れなんです。初めからこなせる人はいません。ゆっくりと慣れていけばいいんです」

「……そうですね。でも、意外でした、秦羅の方が僕より出来ていなかったなんて」

「ええ、かれこれ2年依頼を出してますからね。その間に経験を積んだんですよ。さて、もう日が暮れますね、今日はここまでにしましょう」

 

依頼人は、遠くで作業している秦羅達の方に終わりの合図を送る。その合図に気づいた秦羅達は作業の手を止め、こちらに向かってくる。その最中倒れている翔聖を見て苦笑いを浮かべた秦羅が見えたような気がした。

 

「だいぶ堪えたようだな?」

「たはは……草取りだけでここまでなるなんて思わなかったよ」

「今日はお疲れ様でした。明日からは親戚が手伝いに来てくれるの明日からは大丈夫ですよ。今日はありがとうございました、本日の報酬になります」

 

そう言うと依頼人は秦羅に懐から取り出した袋を手渡す。対する秦羅は袋の中身を確認すると、確かにとだけ言うと懐にしまう。

 

「翔聖さんもお疲れ様でした。疲れたと思うのでゆっくりとお休みください。今日は大変助かりました。また、何かありましたら依頼させていただきますね」

「はい、その時はまたお願いします」

 

秦羅は軽く会釈をすると、それに釣られて翔聖も会釈をする。

 

「今日はごめんなさい、後半ほとんど僕のエリアを手伝ってもらってしまって」

「いいのよ、むしろこっちからすれば手伝って貰っただけで助かったんだから。今日はゆっくり休むんだよ?」

 

翔聖のエリアを手伝ってくれたおばさんは、そんな翔聖の言葉に笑顔で返す。その言葉に翔聖の申し訳ないという気持ちは軽くなっていった。

 

「それでは報酬も受け取りましたので今日は失礼します。翔聖行くぞ」

「う、うん……。お疲れ様でした。お先に失礼します」

 

翔聖はそのまま頭を下げると、お辞儀を終え先行している秦羅に追いつくべく駆け出す。

疲れきった身体ではあったが、どこか充実感に満ちているように翔聖は感じていた。

 

「初日はお疲れ様だ。今日の代金だ」

 

歩きながら秦羅は、先程貰った依頼料の袋の中身を鷲掴みすると翔聖に手渡す。

数えては無いが、20枚位なのを見てこんなに貰っていいのかと思わず秦羅とお金を交互に見てしまう。

 

「依頼料の半分だ。人件費とか計算めんどくさいからな、気にするな。現状俺は金に困ってないからな。取っておけ」

「秦羅がいいなら良いけど……。てか、こんなに貰っていいのかな……ただ畑を耕しただけ、しかも僕は半分も出来てないのに」

「外の世界なら仕事内容やキャリアに応じた報酬が支払わられるだろうけど、俺はさっきも言った通りそういうの面倒臭いからな。俺が渡したいと思ったから渡した。それだけだ」

 

秦羅は気にするなとばかりに、背中を優しく叩くと歩を早める。翔聖も遅れないように彼の隣を歩く。

 

「これからどうするの?」

「蒼天屋に戻る。霊夢が迎えに行くって伝えてないか?」

 

そう言えばそんな事言ってたなと翔聖は頷いた。送り迎えなら秦羅ならしてくれそうだけど、と翔聖は思ったがきっと訳があるんだなと思い何も言わなかった。

それから二人の間に会話は無かった。まだ互いにどんな人間か理解しておらずどう会話していいか分からないのだ。

そんな沈黙に耐えきれなくなったのか、翔聖が口を開く。

 

「そう言えば秦羅はなんで何でも屋をしようとしたの?霊夢に聞いたけど、元々外の世界……僕と同じところから来たんでしょ。幻想郷って危ないところじゃん、どうして帰ろうとか思わなかったの?」

「……帰りたくなかったからだ」

 

含みのある言い方に翔聖はしまったと思った。

聞いてはいけない、領域に踏み込んでしまったと。

 

「ご、ごめん。聞いちゃいけないことを聞いちゃって」

「別にいい。そういうお前はどうなんだ?なんで幻想郷に居るんだ?」

「僕も同じだよ。帰りたくないだけ……父さんのいる家に……父さんがいる世界に」

 

翔聖の返答に秦羅は、そうかと呟くとまた二人の間に沈黙が訪れる。

互いが互いを、簡単に話せない重い理由があるのだなと思わせたからだ。

特に秦羅の方は帰りたくない理由すら話してくれない事から、本当に話せない事情があるんだなと理解するのは難しくなかった。

 

そんな事をしているウチに蒼天屋に着いた。

 

「霊夢はまだ来てないか……。来るまで体を休ませておけ、茶くらいなら用意するから」

 

秦羅はそう言いながらドアノブに手をかけた瞬間、動きが止まった。

 

「秦羅?どうしたの?」

 

入ろうとしない秦羅に疑問を持ったのか翔聖が声をかけると、秦羅はため息に似た息を吐き出すとそのまま扉を開けていく。

その一連の動きに翔聖は頭の中に?マークを浮かべながら秦羅に続いて入っていくと目を疑う光景があった。

 

「綺麗になってる!?1日で片付けたの!?」

 

昨日見た時は、生活スペースが無いほど汚部屋となっていた部屋が今では打って変わって整理整頓されていた。特に机の上にあった書類の山は綺麗にまとめられていた。

あの部屋をたったの1日で片付けるのは不可能だと翔聖は思っていた。

 

「あら、帰ってきてたのね?おかえりなさい」

 

そんな翔聖は部屋の奥から女性の声が聞こえた。そちらを向くと、ウェーブのかかった短い金髪に肌の色は薄く、人形の様な少女が立っていた。

 

「アリス……勝手に入るなといつも言ってるだろ。泥棒が入ったのかと思ったぞ」

「別に貴方の店から盗むようなものなんてないでしょ。それに少しは部屋を片付けてから物を言って欲しいわ」

 

翔聖は少女の正体が分からず、アタフタとしていたが秦羅と距離感の近い会話から秦羅の知り合いだと思うと安堵したのか動きが止まる。

そんな翔聖に気づいたのか、少女は微笑みかける。

 

「貴方が秦羅の言ってた翔聖ね。私はアリス・マーガトロイド。秦羅の昔馴染みね」

「よ、よろしくお願いします。神代翔聖です」

 

どこまでも自分のプライバシーはどこに行ったというツッコミを入れたかったが、挨拶の方が無意識に先手を取った。

 

「ええ、よろしくね。翔聖、秦羅は取っ付きにくいと思うけど仲良くしてね」

「おい、俺の母親か」

「少なくとも幼い貴方の面倒を見たから、姉みたいなのは間違いないんじゃない?」

 

あまりにも情報量の多い会話に翔聖は、思考を止めた。今は聞くべきではないと。

二人の会話を聞いていると、扉が開いた。

 

「翔聖、迎えに来たわよ……ってアリス。アンタも来てたのね、相変わらずの通い妻ねぇ」

「あら霊夢。貴女こそ迎えなんて優しいじゃない」

「何かあったら紫がうるさいのよ。面倒見ると言ったからには最後まで突き通すわ」

 

霊夢の言葉にアリスはくすりと笑うと、霊夢はツッコミを面倒くさがったのかため息だけをついて翔聖の近くに寄る。

 

「ほら、帰るわよ。秦羅、翔聖が世話になったわね」

「いや、こちらこそ助かった。報酬金は渡してあるから足しにしてくれ」

「そう、ありがとう。明日の予定は?」

「明日は休みにさせる。俺もやる事があるからな」

「……分かったわ。それじゃそろそろ帰るわね」

 

霊夢はそう言うと先に店を出ていく。その後を遅れないように翔聖は頭を下げると霊夢に着いて外に出ていく。

残された秦羅とアリス。アリスは秦羅をジッと見ていた。

 

「無茶はしちゃダメよ、秦羅。いくら貴方だからって……」

「……()()()()()としての責務は果たさないとな。そんな甘え許されない」

 

アリスの心配を蹴るように、秦羅は強く重い言葉で彼女の言葉を跳ね返した。

 

To be continued




如何でしたかか?
今回は翔聖の初仕事の回でした。これから秦羅の部下として手伝いを頑張って欲しいですね。
さてはて、秦羅の最後の言葉「秩序の守人」とは何なのか……。物語を進めていけばわかるのでしょうか。

では、次回の更新をお楽しみに。(書けたらいいな)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。