アラーム。 トレインに乗ったレリックが数体のガジェットとアンノウンに追われていると緊急連絡があり、直ちに現場へと向かった機動六課。 新人のフォアード四人は出動、任務が初めてという緊張さもあり、空中型ドローンを破壊しだい直ぐ様応援に行こうと決めるなのはとフェイトだったが、その決意虚しく足止めを受けていた。
「オラァ! オラオラオラオラァ!」
「くっ…」
ただ一人の男。 嫌なことを思い出させる軍服を着た存在になのはとフェイトは足止めを食らっていた。
「そんなもんで俺を突破できると思ってんのかァ!?」
怒涛。 まさに嵐。 それはまさに突破できるものはないというかのように、なのはとフェイトに襲いかかっていた。
「フェイトちゃん…!」
「うんっ」
掛け声とともになのはがアクセルシューターを放ち、砲撃体制に入る。 それに合わせて
「カッ――――」
「
タイミングを合わせた連携により軍服の男……喜芽の体勢が崩れハーケンセイバーが直撃し、爆煙に塗れる。 そして放たれる魔砲。
「レイジングハートッ!」
『Divine Buster』
放たれた必殺に値する攻撃が直撃する。
「私たちはこんなところで止まってられないの!」
「あなたなんて相手にしていられない」
そう言い去ろうとするが、笑止。
「――カハッ、カアァッハッハハハ!」
傲慢。 戯言。 身の程知らずにも程がある。 これで倒しきったなどと口にできるなど大したものだ。 笑わせる。
「オイ―――てめぇら」
なのはとフェイトの動きが止まる。
「馬鹿か、言いやがるなオイ。 笑わせてくれるよ面白ぇ」
「なんで……完璧に決まったはず」
「あの程度で殺っただと? 言うなぁオイ、この中で一番強い奴に向かってあんなもんで背を向けるだと? 殺されてえのか。 昔とは――――――もうあの時の俺じゃねえんだよォ!」
今初めてここでなのはたちは感じることになる。 本当の戦場の風というやつを。
「なのは」
「…うん」
そして思う。 あの時あの場所の彼とはまるで別人だと。 いつもいつも私たちの後ろを追いかけていた彼とは違うと。
「今更昔ことなんていいんだよ。 今俺はてめえらの敵として立ってんだよ。 ならてめえらもやることは解んだろ? あんまりのろのろとヤってっと――――あいつら死ぬぞ?」
――つまり、それは言外に新人たちの方にも脅威が存在するということ。
「―っ!?」
「フェイトちゃん!」
瞬間だった。 言葉を聞いたフェイトはすぐさま高速戦闘に入り喜芽の背後を取る。 一瞬のこと距離を詰めたフェイトは近距離からの
しかし――
「だがよ、煽ったのは俺だが一番弱ええ奴から突っ込まれてもよ」
射撃魔法は喜芽の正中線、眉から心臓にかけて急所へと寸分の狂いなく飛来した。 しかし問題があるとすれば、その全てがたった一本の腕の動作でかき消されそのまま愛機の刃をつかみ取られたという事実。
「一番弱ええのはてめえら一人ひとりなのに今更一人で突っ込んでくるとか、なぁ高町?」
魔力刃を素手で掴み飄々と問いかけてくる彼に冷や汗を流す。 魔力刃から伝わる小気味よい痺れが喜芽の全身に流れる。
「いい力持って、いい
「――――カハっ!?」
ゼロ距離からの掌底を受け空中をもんどり打ちながらなのはの方へと吹っ飛ばされるフェイト。 まるで大型トラックと衝突したのではないかという勢いで弾き飛ばされる。
「フェイトちゃん!? ――くっ、シューター!」
放たれる数十の魔弾が360度辺りを巡りながら喜芽へと収束する。
「―――ハッ!」
だが無情にもそれは一部箇所を突破され、勢いのままその他の魔弾は魔弾同士に接触し爆発し周囲に爆煙が舞う。
「今更こんなもんは挨拶がわりにもなりゃしねえぞ! あんま舐めてっと…」
そんな声とともに彼がなのは目掛けてこの煙の中突っ込んでくる。 お互い見えないのは同じだというのに―――だが、すでに手は打った。
「死んじまうぜェッ!」
右上!
「レイジングハート!」
『Protection EX』
愛機から排出されるカートリッジ。 飛来した掌底を寸分狂いなく方向を見定め受けきる。
「くうぅ――――バースト!」
『Barrier Burst』
「―――カァハ!?」
炸裂。 至近距離に迫っていた喜芽の姿が凄まじい衝撃とともに弾き飛ばさせる。
「フェイトちゃん!」
「ありがと…なのは」
そして消える親友。 未だ消えない煙幕の中彼女は一直線に敵へと走る。
マーカー。 なのはは360度シューターにある付属効果をつけていた、接触した相手に特定の魔力反応を帯びさせると言う。 そのための爆煙。 それを活用するための2対1。 彼は言ったなのは立ち一人では弱いと、ならばやってやろうじゃないか。 彼はこの煙幕の中、なのはかフェイトか解らない中で戦ってもらう。
「チャージ行くよ……デコイもお願い」
『All right,my master 』
□
勢いよく弾き飛ばされ、さらに追撃を加えに来たフェイトの猛攻により煙幕の外まで出た喜芽は、久方味わっていなかった痛みを味わい噛み締める。 いいなぁおい。 烈火のように燃えたぎる両方の瞳が赤く危険に揺らめき出す。 茶色い髪はだんだんと白へと染まっていく。
後を追うように来た金の魔力光を放つ少女はそれを見て驚愕を現す。
「喜芽……君は…」
結果としてなのはとフェイトの猛攻は、自らの首を絞めたに過ぎなかった。 先の攻防は賞賛に値するが、あれでやられていたほうがマシだったのかもしれない。
なぜなら―――
「いいな。 おまえら……フェイトになのは、悪くねえ」
今まで使っていなかった力が今此処に顕現しようとする。
「やっぱお前らは違うよ。 現状圧倒的な力の差があってもこの俺に簡単に傷を付けるなんて、ルールーでもできねえ話なのによ」
何を言っているかわからない。 でもヤバイ、フェイトの本能がそう告げていた。 アレを出させたらいけない、アレは出てはいけないものだ。 そんな既知にも似た何かがあった。
なのは! 気づいたときにはそう念話で叫んでいた。
煙を裂き、空気を裂き喜芽へと迫る桃色の収束魔砲。 それは彼女の相方が最も得意とし必殺とした技。
『Divine Buster Extension』
これはなのはが昔、空港火災時に、崩壊した建物の奥から一気に外まで脱出するために使用した魔法。 高密度で圧縮された魔力が減衰することなく対象を打ち抜く、強力な魔法。 そんなものを喰らえば彼でもひとたまりもないだろう、そう思った。
だが――――甘くはなかった。
「
ギチギチ。 嫌な音を立てそれは姿を現す。 全てを奪おうとする根。 もっと貪欲に空気、水、電気に至るまで全てを、搾取、略奪しようとする存在。 枯渇そのもの。 現れた瞬間に空気が死んでいく、そんなものが生体でも喰らえば、どうなるかは簡単に予想がついた。 それは魔力にも言えることだと思ったが―――。
「穿てよ―――らァッ!」
喜芽はそれを吸収せずに弾き飛ばした。
「はははははははははははははははは――――」
爆発する砲撃が爆音を鳴らす中大笑いが辺りに響く。
「久しぶりだぜ? こいつを魔導師相手に使うのは」
喜芽にとっては魔導師如き
「オラ! 逝けやヴァルハラァ!」
そう叫びフェイトに向かおうとした時だった。 水を差すように声が通ったのは。
「きゃあああああああ!」
「スバル!?」
「あン…?」
喜芽には聞き覚えのない、しかしフェイトには聞き覚えのある声が遠くから響いたのだった。
・3・<ぷぇー