新しい、デバイスを貰った。
ティアナも一緒に受け取って、小さな曹長から説明を受けて、新しい覚悟を決めて。 小さな2人の同僚になのはさんが言葉を挙げていて、それを聞いて更に憧れて。
初めてのセットアップにバリアジャケット、なのはさんとお揃いで嬉しくて、でも…、急に途切れた上からの念話。 不安な顔をする相棒に激高を入れて魔力反応のする車両へ。
扉を開ける。
でもきっと。
それは決して開けてはいけないパンドラの箱のようなものだったんじゃないかと私は思う。
ただのドア、最初からそういう悪い意味なんてないもの。 でも。
状況と私と、
どうして……ねぇ…、どうしてなの。
「母さんっ!」
□
「大丈夫だって! ティアナ! なのはさんやフェイトさんにもしものことなんてあるわけないじゃん! あの二人だよ?」
らぶらぶの。
スバルとティアナは降り立った屋根から突き破り車両を走っていた。
「まぁ…それはそうなんだろうけど……少しなのはさんとフェイトさんの声色っていうか、焦りっていうか、一瞬だけど流れてきた念話にそういうのが色こゆく見えたって言うか…なんと言うか…」
後ラブラブじゃない。
そんな尻すぼみになりながらも上司ふたりを心配するティアナをスバルは可愛いなぁ…。 なんて思いながらも、一瞬の念話のキャッチで相手の想いにまで干渉して読み取る相棒の能力の高さに今更ながら、すごいと思った。
凡人など才能など言っている相棒はきっと自分のそういうところを理解してない。 私にはできないことだな…なんて思いながら前を向く。
「気にしたってダメだって…! 今はレリック! それをちゃちゃー! っとやってなのはさんたちのところに行こ?」
「そう……ね。 ウダウダ言ったって始まんないものは始まんないか。 うっしやるわよスバル!」
「お茶の子さいさい!」
その切り替えの速さにさすがーと思いながらレリック反応のある車両のドアの近くまでたどり着くが、ふともう一人の相棒から声がかかる。
『マスター。 ドアの向こうから魔力反応が二つ』
「え?」
「スバル待って」
口に指を当てデバイスに魔力を流すティアナ。
「スキャンお願い…」
『OK, master』
しばしの沈黙の後、ティアナが口を開く。
「敵はあんたも知ってのとおり二人ね、もうレリックの在った部屋は出て行ってるみたい」
「え…? ただの逃げ遅れ見たいな人ってことは…?」
「そんなことあるわけないじゃないこのバカスバル」
「うっ」
「第一この列車無人貨物よ? それにいたとしてもまず魔力反応がおかしいわよ。 そして敵として認識するに決定的なのが……、ここら一帯にガジェットが一台もないことよ」
「……」
「だから。 まず敵として考えて間違いないわ」
やっぱこの子天才すぎる。
そんな言葉がスバルの頭をよぎった時だった。
「あれ……おかしい、敵の魔力反応が二つ先の車両で止まった……」
そして表示される敵の前、こちらに近い側に反応するレリックの魔力。 そして動かない二人。
まるでこれでは…、
「私たちを誘っている……?」
「え?」
そう言った瞬間、相棒が燃えていた。
「いい度胸じゃない、買ってあげるわよその喧嘩!」
「喧嘩じゃないよ…? ティアナ」
「うっさいスバル! 対人プランAで行くわよ!」
「え! え!?」
「レディ…」
「えぇ…!?」
「ゴゥ!」
やるしかなかった。
まぁこんな状況でもティアナの作戦に大概失敗はない。 たまにやらかすけど。
だからスバルは予定通りの魔法を発動した。
「ウイングロォード!」
二つに伸びる蒼い道。
「込めるわよ! クロスミラージュ! スフィア!」
魔力を込め走り込むティアナを横目に自身も動き出す。
「行くよマッハキャリバー! さっさと倒して回収してなのはさんに褒めてもらう! ディヴァイン……」
ティアナは目の前から直線に。
スバルは横から突き抜け、側面からの奇襲へ。
『5』
ティアナからのカウントに入りウィングロードを調整しつつ距離を測る。
『4』
メインはスバルだ、目前のティアナを前にして大型スフィア生成での数のごまかしと牽制と威嚇。
タイミングに合わせ本命のスバルの特攻で一矢放ち、あわよくば流れのままにレリック回収と犯人の確保である。
『3』
相手が二人の場合なのでレリック優先になるのは決定事項なのであるが…。
『2』
「行くよ、マッハキャリバー!」
『Axel boost!』
『1』
円を動く動作から一気に加速をし目的に攻まる。
『0!』
「ファイヤアアア!」
「バスタアアァアア!」
瞬間に起きる爆発と轟音。 一部車輪が壊れたのであろうか甲高い音とともに速度を落とす列車。
二人の渾身の一撃、たとえ最初から防御の体制に入ったとしても突破できると思える程の一撃。
「スバル、レリックを!」
「うん!」
後から入ってきたティアナの声を聞き、埃と煙が交差する中反応を見つけ全力で近づくが、むせるような咳を二つ聞き動きを止める。
馬鹿な。 嘘だ。 ありえない。
そんな在り来りな取って付けた様な突発的な単語しか頭に出てこずに動きが完全に停止する。
それはきっとティアナもだったのだろう。
後ろで息を呑む雰囲気が伝わった。
そして二人は列車が完全に停止し、煙が晴れるまで息をすることすらできなかったのかもしれない。
完全に視界が晴れ、目に映ったのは。
「あら、久しぶりねスバル。 元気にしてた?」
「全くひどいじゃないかティアナ。 久しぶりの邂逅だというのに」
「…………………母さん…」
「………兄さんっ!」
生きていない。
生きていては…おかしい人たちだった。