母さんはあの日死んだ。 私は父さんにそう聞いたんだ。
泣き腫れた目で、涙で霞んだ目で私たちをその瞳と涙を通して映し、抱きしめながらそう言った。
私もお姉ちゃんも信じたくないのにどうしようもなく父さんのそれは本当で、嫌だ嫌だって首を振って否定したいのに、ただ父さんの抱きしめる腕が暖かくって力が強くて、絶対に離さないぞっていう気持ちが伝わって、最後に父さんの顔を見てこれがどうしようもない
「お姉ちゃん……ううん、ギンねえ。 私決めたよ。 お父さんを助けるって」
どうしようもなく凹んだ私と姉だったが、どちらかといえば私のほうが先に凹んだ気持ちを少し、戻しつついた。
陰鬱な日々ばっかりで何もしない日ばかりが続いたから、なにかとりあえずやる事を決めようって涙枯らした後に思い立って言ったんだっけかな…よく覚えてないや。
でもそれが始まって大きくなって行く内に自身の道を決めるきっかけになったのだから、自分で言うのもなんだがこういう性格には助かってると思う、だから。
「疾っ!」
とりあえず。
「せっ! りゃあ!」
とりあえずだ。
「おっと、今のはいい感じよ」
この訳わっかんない状況も、
「わっとと! ギリセーフ」
殴って! それから!
「話を聞けばいいよね!」
『Axel』
「バスタァァアア!」
自分の拳から一点集中特化で放たれる魔力砲が
拳からの上半身を狙ったジャブで牽制からの体捻ってローラー加速の裏拳に見せた円を描くような足払い。 そして上手く体制崩れたところを見計らっての砲撃の一連のコンボ。
うまくいったように私は思うが……、
「ざーんねん」
魔力光の残骸が消え姿が現れた母さんは逆さまを向いてしゃがんでいた。
「ウィングロード…」
「そ、せーかい。 足場作る魔法なんだからこんなふうに数メートル四方の形したっていいじゃない? やりようよやりよう。 それにしてもなかなかいい流れで進めちゃって、レリック回収からの幻惑魔法と予備で引いていたウィングロードの活用での分散作戦。 さすがティーダ君の妹さんね」
「やっぱりそこは私だと思わないんだね…」
あったりまえじゃない! と良く返事されたことに少し凹みながらも油断なく見据える。
一連のコンボもダメだった。
近距離の砲撃も何らかの方法でかすり傷程度。
一人じゃダメかもしれない、勝てない。
くあーーこんな時にティアナがいればああああ。 と不安な思考に襲われるが。
でも、
「やるっきゃない!」
言葉を込めて力も込める。
まずは近づきインファイト。 どちらにせよ選択肢はないのだスバルは近づいて殴ることしかできない。
頭が良くないんだから仕方ないじゃない! そう言い聞かせるように魔力を巡らせる。
「疾っ!」
大きなモーションはなくして素早く早くジョブを繰り返すように右左とワンツーを重ねながら逆さまの母さんの顔を狙うが、
「よっは」
難なく逆さまのまま弾かれ流される。 そして逆さまのままなのが非常にやりづらい、まず足技が届かない、届いたとしても隙が大きすぎて繰り出せない。
技のレパートリー悪いなもうう、もっと増やしておけばよかったああ。
それでも手を休めるわけには行かない、殴り殴ってフェイントも入れたりで打ちっパナすけど全て通じない。 動かせない。
「うがああ!」
おお振り、自分でもまずいと思ったがもう遅い。
「はい、残念賞」
パァン、と軽くしかし響く音が鳴り、私は何をされたのかわからなかった。
でも、ただ目の前にいる母さん…いや目の前じゃない。 ぼんやりとして感覚はないが抱きしめられている距離ぐらいは解る。
「な…んで…」
「あら、まだ意識があっちゃうのね。 こういうところ意識変えて戦わないとやっぱりダメね貴方達を相手にする場合、普通の子と違うから」
そう言ってぎゅっとしてくる母さんに戸惑う。
「敵…じゃない…の?」
かすれかすれ出る言葉に微笑む母さん。
「敵といえば敵なのかな? やっぱり。 でも私の目的は違うからね。 今はこうして貴方を抱きしめれればいいの。 スバル」
訳が解らない、どうして。
母さんはレリックを狙ってた。
まずこんな所にいるのがおかしい。
ガジェットも近くにいた。
そしてなにより……生きてるのが…、
「な、んで…なんで、生きて…るの…?」
「ふふ…内緒。 こんなところでなんだけど会えてよかったわ、あの人の指示に従って正解だった…て言うより指示が的確すぎて笑えちゃうわ。 でもそのおかげで貴方と少しだけ、んー稽古することが出来たわ、それには感謝かしら」
だめ…意識がもう。
母さんの手が私の頭を撫でる。
懐かしい……そう心が温かくなる、懐かしい感じがして、私の意識はそこで古い機会によく有りそうなだんだんと砂嵐に飲み込まれていくように消えていった。
「――――ね」
□
ねぇ待って、どうして置いていくの! 私を一人にしないで!
「ごめんねティアナ。 一人にさせて」
どうして兄さんは悪くないのに! 皆そうやって言葉にして兄さんを汚すの!
「僕が不甲斐ないばっかりに」
私一人じゃ生きていけない!
「一人で寂しくなかったかい? 友達は出来たかい?」
ただ一緒にいて褒めて怒こって笑って欲しかった!
「一緒にいてあげれなくてごめん、傍で言葉をかけてあげれなくてごめん」
……………どうして。
「ごめんね」
……どうして!
「―――」
どうして!
「どうして謝るばかりなの! どうして何も言わないの! 兄さん!」
ティアナの心は悲鳴を上げる。 なんでどうしてなぜ! なぜ! なぜ!
「どうして生きているならもっと早く会いに来てくれなかったの!」
放つ魔力の弾丸がティーダに当たり弾ける。 が大した怪我もなく無傷な
非殺傷設定といえど昏倒するくらいの威力を怒りに乗せて放っているが何の意味もなしてはいない、でも。
「なんで私が寂しい時傍にいてくれなかったの!」
放つ。
「なんでレリックを狙って今此処にいるの!」
放つ。
「なんで兄さんは犯人を捕まえれなかったの!」
言ってはいけないと思い黙って今まで生きていた、でも何かが崩壊したようにとめどなく言葉は溢れ出る。
放つ。
言葉に乗せて。 放つ。
「なんで……なんで、なんでなんで!」
放つ。
最後の一撃が直線、ティーダの顔面に目掛けて飛び弾ける。
それを受け軽く仰け反るが、変わりはない。
「なんで…生きてるのよ…」
どうしようもなく、訳も解らず、攻撃も通じず、崩れるようにへたり込む。
涙が溢れて、どうしようもなくて、どうすればいいのかも解らない。
思考が回らず止まってしまう。
「ごめんよ、ティアナ」
そこでようやくティーダが長らく閉じていた口を開く。
「これが、今の僕だから。 今まで会えなかったのも僕のせいだ。 ティアナを一人にしたのも、ティアナが寂しい思いをしたのも僕のせいだ。 そして」
ティーダの雰囲気が変わる。
「僕が死んだのも、僕のせいだ」
身内故か直ぐ様それを感じたティアナは体が硬直してしまう。 こんなのおかしい…と。
「でも僕は生き返った、この屑のような心と体を持って、生きたいと願ってしまった」
自身の腕や体を眺めるように、幽鬼のように自分を自分ではないように見つめる姿が恐ろしく、ティアナには不安定に見えた、しかしその揺らめきは一瞬で消え去る。
「ティアナは綺麗だ、ティアナが汚れることなどないように、全て、僕が引き受ける。呪いも、汚れも、毒も、何も」
意味がわからない。
だが言葉を発すると同時に現れた違和感は今このティアナの目の前で起きていた。
周囲が腐っている。 匂いが、とかそういう物ではない。 感覚として本能がそう警報を鳴らしていた。
此処に居ては
「それが今、生き返った屑である僕に出来ること。 だから君の見えないところでいい、償いをさせてくれ」
これ以上のものには耐えられないというようにティアナの意識は反転した。
「全身腐ってるんだよ、ティーダ・ランスターは」
ティーダの最後の言葉はティアナには届くことはなかった。
スバルは格ゲーキャラっぽい感じがするのでそこらへんがモデルになってます