シャルロット・コルデーに聖杯を貢ぎたい……お淑やかな服の下でははちきれんばかりになってる才能を丸出しにしたい……そう思ったとき、既に行動は完了していた(理性蒸発) 作:夢見る人・夢描く人
どうぞご免あそばせ。私の
――さようなら、愛される貴方。
ロクでなし魔術講師と
なぁ、と呼びかける。
「僕が何言いたいか、分かる?」
「さぁ?」
小首を傾げる
「なんで君が同級生として入学するのかって話だよッ!」
「マスターと一緒に居たいからに決まってるじゃないですかッ!」
「逆切れっ!?」
何を当然のことを、とでも言いたげな彼女は自信満々にそう言った。本心から、僕と学園生活を送ろうとしているのだろう。
嬉しくないといえば、嘘になる。仮にも推しだ。半ば意地であったとはいえ、絆は15まで上げたし、レベルも120まで育てた。六周年記念で実装されたメダルを集めるために何度もガチャを回したのはいい思い出だ。
そんな彼女がお話をしてくれたり、手を握れたりとかできるようになる……二次元は二次元のままであるべきだという持論も、限定的に撤回せざるを得なかったのは事実だ。
だが、だがな?
仮にも
母親と並んで通学とかどんな苦行だよッ!
「いやですねぇ。私はまだ独身ですよ?」
「でも僕育てたのは君だよね」
「はい! 赤ちゃんのマスターは大変可愛らしかったですよ!」
「……うん」
むず痒さを隠すように顔を背け、けれど抵抗は止めず反論を続ける。
「兎に角! 同級生とか恥ずかしいだろ……!」
本音だ。お願いだから、せめて教員枠で学校に所属してくれないだろうか。
「マスターの命令でも、それには従えません」
だって楽しみにしてたんですからっ、マスターとの学生生活。
きっと小悪魔な笑みを浮かべているだろう彼女の顔を、僕は直視できなかった。
幼少期の恥を握られていた時点で、口論における僕の勝ち目など無かった。あるとすれば、恥を捨てるくらいだろうか。
結果、こうなった。
「ふふー、んふふー」
「……………………」
上機嫌な彼女に、ブスッと膨れる僕。目に毒な女学生服は企画モノのAV臭を漂わせている。それを着ているのが今世の育て主であるから、たとえ彼女が
こんな学生生活は心底嫌だったが、心のどこかで楽しんでいるのは間違いもない。なんだかんだ言っても、相手は推しだ。
だから、不承々々、膨れた顔で並んで歩くのだ。
「今日もいい天気ですねー」
「……そうだね」
「ふふふー」
「はぁ」
引っ付いてくる彼女の僕への好感度は、前世で意地を張る様に連れ回した経緯からだろうか。
「じゃ、今日も一日頑張りましょうか。マスター」
「ああ。今日も一日、頑張ろうか――」
――シャルロット。
シャルロット=コルデー。
暗殺の天使。クラスはアサシン、レアリティは星1。
前世の推しで、今世では何故か転生特典として一生を共にすることと相成った、僕の
***
空高く人が舞う。着地点が噴水でも、下手すれば死にそうな勢いで。
「なぁ、あれってまさか」
「グレンくんですね。それがどうしましたか」
「確かセラさんは助けられたんじゃなかった?」
心の折れてない主人公が非常勤講師として雇われるなんてことがあるのだろうか。
「……人の心が折れるきっかけは、意外と沢山あるもの。らしいですよ?」
むぐ、と口を噤んだ。
それは何時かの昔に自分がシャルロットに語って見せた言葉だからだ。自分の言葉だから、その意味もよく理解した。
「筋書きって、変わらないもんなのかな」
「どうでしょう。変わったものもあります。変わらなかったものもあります」
「そっか」
「そうです」
少し、湿っぽい。
「あー、もういいや。止めだ、止め。こんなこと気にしててもしょうがない」
シリアスな空気を換気するように手を振り回す。
「ところでさ、今日の授業多分自習になるんだけど、何する?」
「そうですねー。大人しく勉強したらどうです?」
「ははっ」
「勉強しましょう? マスター」
「……はーい」
カラッと晴れた空は、胸が透くほど青い空が広がっている。虚像のような半透明の城が綿雲に紛れて空に浮かぶ。背後の騒がしさすら吸い込むような快晴に、僕は思わず微笑んだ。
「雨降らねぇかなぁ」
「そういえばマスター、熱いの嫌いでしたね」
日差しが鬱陶しいぜ。
教室に着き、辺りを見渡す。人の姿は少なく、それを見て、随分早く来てしまったようだと気付く。
「んふふー。二人っきりですねー、マスター♪」
「なるほどこれが目的かー」
シャルロットの抱きつきを回避しつつ、自身の指定席に腰を落とす。机にノートを広げ、勉強する姿勢を見せることでシャルロットの追撃を阻止した。尚、何処からか聞こえてきた舌打ちは幻聴であると願いたい。
適当に掴んだそれは、白魔術についての物。錬金術には自信があるが、一方で白魔術には自信がない。というか、錬金術以外が殆どボロボロな自分には、錬金術以外の科目は苦行でしかない。いや、実技なら得意なんだけどね?
例えるならあれだ。英語の授業だ。全く単語を覚えられなかった自分にとっては、あれは軽い拷問の時間だった。
言い訳をさせて貰えば、理論は分かるのだ。
ルーン文字が分からないだけで。
……テストにおいては致命的だ。
「あ、分からない所があったら教えましょうか?」
「じゃあ、此処について教えてくれ。白魔【ライフ・アップ】について何だが、此処のルーンの意味がどう繋がってるのかいまいち分かんなくてな」
「えーっと、これはですねー」
肩を寄せられると、当然体同士の距離が狭まるわけで。二の腕に感じる柔らかいものの温かさと、頬にかかるさらりとした髪のくすぐったさ。ほぅ、と吐かれた甘いため息に身を捩りながら、ノートに視線を落とし続ける。少しだけシャルロットと距離を開けながら、彼女の説明に耳を傾けた。
小首を傾げる彼女の姿は視界に入らず、距離を詰めてこなかったことに軽く胸を撫で下ろしながら二人きりの自習が続いた。だが、その時間も僅かなもので、十数分もしない内に教室内にはまた何人か生徒が増えることとなる。
階段状に並ぶ席が埋まる度に、教室内の喧騒は賑やかになっていく。暫くすると自習する所もなくなったために、シャルロットのからかいを躱す口実が尽きることになった。
さて、次は教科書で予習でもしようか。そんなことを考えると、それを先読みされたように手元から鞄が消えていた。シャルロットが引き寄せたのだ。その顔はとてもいい笑顔で、何処か嫌な予感がする。具体的には、舌打ちの嵐が飛び交いそうな予感だ。
思わず真顔になって距離を離すが、荷物ごと近寄ってくるシャルロットのせいで間は広がらない。
そのまま後ろに退いていると、距離を見誤ったのか、席と席の合間の通路を歩む誰かに背をぶつけてしまった。トン、という軽い衝撃から、相手は女子であると判断する。
僕は咄嗟に振り返って、謝った。
「あ、ごめん――っと」
「ううん。大丈夫だよ。アダムくん」
「ルミアさんか。おはよう」
ぶつかった相手は、クラスの人気者と断言できる陽だまりのような少女。ルミア=ティンジェルだった。
尚、僕が彼女を名前で呼んでいるのはファーストネーム呼びが比較的緩い価値観だからであり、決して僕と彼女が親しい間柄だからではない。むしろクラスメイトなのに名前呼びにすると、何処かよそよそしいと敬遠されるまである。
本当に僕が彼女と友人だとかそういう親しい間柄だったら、と思わなかったことはない。だが、そこまで踏み込めるような度胸が僕には無い以上、それは唯の夢想で終わるだろう。
「あー、ルミアちゃん、システィちゃん、おはようございます! 今日も早いですね!」
「おはよう、シャル」
「……って、おはよう、シャル。そうそう、シャルも聞いてよ。今朝の事なんだけどね? 私たちが登校してたら――」
シャルロットは同性且つ、双方ともに社交性のある人物なので、割といい関係を築いているようだった。親友と言ってもいいかもしれない。
一旦席を立ち、シャルロットとルミアさんの間から体を抜き、シャルロットが座ってた席に座る。ついでに自分のカバンを抱きかかえて。
システィーナさんがくどくど述べているのは、きっと今朝がた横目に見たあの事件の事だろう。記憶が正しければ、あれは原作開始の一幕だったはずだ。記憶が正しければ。
正直原作を乱しまくっている自信があるから、記憶の中のシナリオ通りに物事が進んでいくか分からない。けどまぁ、そこは歴史の修正力だとかを信じよう。この世界は『特異点理論』が主流になるくらいには平行世界の分岐が難しいみたいだし。
……ん? あれ? そういやそれってまさか……。
いや、深く考えないようにしよう。
頬杖をついて、システィーナさんとその話をいい笑顔で聞くシャルロットを眺める。ふと視線が合い、ルミアさんに微笑みかけられた時はあたふたして、咄嗟にそっけなく頭を下げた。きっと頬は朱に染まっていたことだろう。僕だって男なのだ。
頬の熱も冷めてくると、まだ始業の時間でないというのに教室の扉が開いた。主に教員が使う、黒板側の扉だ。
慌てて姿勢を正すが、入ってきたのは僕らの担任であるヒューイ先生では無く、しかしこの学院に通っているなら知らないものは居ないであろう有名人物――セリカ=アルフォネア教授だった。
神殺しとまで謳われ、彼女だけの為に特別に作られた階級まで持つ、正に『生ける伝説』な人物の突然の登場にどよめきが巻き起こる。その騒々しさは台風の如く、伝播は津波の様に。うるさく感じるほどの動揺が教室を満たした。
パン、パン。
単に手を打っただけのその動作は、行ったものの地位の重さに由縁してか、いっそ神聖さすら伴って心に染み入る。精神干渉の魔術でも使われたかのようにどよめきが鎮まるが、魔術の痕跡は欠片たりとも残留していなかった。
凄い。これが、セリカ=アルフォネアか。
度肝を抜かれたとはまさにこのことで、その息を呑むほどの立ち振る舞いに教室中の視線が引き寄せられる。カリスマとはこういう物なのだろう。そう考えながら、僕らは彼女の言葉を待った。
「今日はこのクラスに、ヒューイ先生の後任を務める非常勤講師がやってくる」
短い一言。その言葉ではっと思いだした者もいるくらい、ヒューイ先生の失踪は突然の事だった。
明確な理由の判明しない退職。一説には通り魔に刺されたとさえ噂されるそれは、このクラスに大きな禍根を残した。主に授業の遅れという形で。
だが、何と中止となっていた授業が本日めでたく再開となるらしい。これには喜びを抑えきれず、教室中が一気に騒がしくなる。
「先生先生、その非常勤講師ってどんな人なんですか?」
「女の人ですか? 美人ですか!?」
「かっこいいですか? 彼女いますかぁ!?」
それらの怒号染みた質問に、アルフォネア教授はふっと微笑み、ただ一言。
「まぁ、中々優秀な奴さ」
と、そう告げて去った。
なんかもう、質問に応えるのがめんどくさくなったように見えたのは僕だけだろう。現に、他のクラスメイトは教授のスタイリッシュな退場と言葉に興奮している最中だからだ。
とりあえず、今日もまともな授業が行われないと知っている僕は鞄から教科書を取り出し、それを流し呼んだ。
この世界、ラノベとかないのだ。教科書読むレベルの暇潰ししか無いんだよ。
***
「あー、悪ぃ悪ぃ、遅れたわー」
始業数十分経って地雷を踏み抜きに現れたのが、今朝空を舞ってずぶぬれになった男――グレン=レーダスだ。
この短い時間の間に着替えることはしなかったのか、まだぐちょぐちょの服で教壇の前に立つ。システィーナは噛み付く勢いでキレ始め、対するグレン先生は欠伸交じりにそれを受け流す。これを大人の余裕と取るか、ダメ人間の風格とみるかでその者の鑑定眼は決まるだろう。
「って言うか貴方、なんでこんな派手に遅刻してるの!? あの状況からどうやったら遅刻できるっていうの?」
「そんなの……遅刻だと思って切羽詰まってた矢先、時間にはまだ余裕があることが分かってホッとして、ちょっと公園で休んでたら本格的な居眠りになったからに決まってるだろう?」
「想像以上に駄目な理由だった!?」
公園で寝てたのか……あの服で……。
普通は風邪を引きそうなものだけれど、まぁ、『馬鹿は風邪を引かない』って言うし。
頭をぼりぼり掻きながらチョークを手に取り、黒板に文字を走らせる。
彼は黒板の中央に自身の名前を綴って、生徒たちのざわめきを無視しながら自己紹介を始めた。まるで聞いてほしいと思っていない態度に、彼の名前すら頭に入らなかった生徒は居る筈だ。
「えー、グレン=レーダスです。本日から約一か月間、生徒諸君の勉学の手伝いをさせていただく予定です。短い間ですが、これから頑張っていきま……」
「挨拶は良いから、早く授業始めてくれませんか?」
「それもそうだな」
面倒になったのか、まるで人物把握に役立たない冗長な自己紹介が切り上げられ、システィーナの要望道理に授業が始まる。
ぶつぶつと手元を見下ろしているが、恐らく時間割を確認しているのだろう。前列に居るせいとなら聞こえているだろうが、比較的上の段――後ろに居る僕らの耳には届かない。
自身の名前を消し、チョークを持ち直すと、グレン先生は黒板の中央に筆先を置いた。
「「「……」」」
教室中の視線が集まる静寂の中、彼はでかでかと、こう書いた。
“自習”
「は? ……え、は? じゅ、じしゅう? え? ……?」
へぇ。人間、突然の事態でフリーズするとああなるみたいだ。酸欠の金魚みたいに口をパクパクさせ、何を考えているのか『自習』の意味を読み解こうとしている。『自習』には自習以外の意味などあるまいに。
「えー本日の一限目の授業は自習にしまーす」
知ってた。
周囲は理解が追いついていないとばかりに騒めいている。もうこれだけ時間が過ぎているのだから、授業に入るだけ無駄なのだとでも考えたのか、という憶測が耳に入る折、本人から答えが告げられる。
「……眠いから」
そのまま教卓に突っ伏すと、彼は実に気持ちよさそうに寝始めた。寝息は聞こえないが、きっともう寝ついてるだろう。授業時間の残りを考えれば、これは二限目の実施も怪しい。
予想通りだ、という意味の欠伸をかみ殺して僕は机に顔を伏せる。さて、僕も寝るか。
「マ ス タ ー ?」
「冗談冗談。だからその声止めて。どうやって出してんのかも気に成るけど兎に角止めて」
「はい。じゃあ『魔術基礎詠唱Ⅱ』の本日やる予定の範囲に目を通しましょうか」
さっきは予習邪魔してたくせに、と呟くと、彼女はそれを聞きつけ、ん? と小首を傾げた。良い笑顔で。
細かいことは気にしてはいけないらしい。僕はきっと、結婚したとするなら尻に敷かれるタイプなのだろう。
なんでもないです、と言って僕らは自習を始めた。前の方で起こる騒動を気にも留めずに。
だってグレン先生もそう簡単に死なないだろうし、幾ら教科書が分厚くっても広辞苑ほどじゃないし、止めてる人もいるし、問題はないでしょ。
「マスター、マスター。ここの文なんですけど……」
「ああ、此処は……」
舌打ちが聞こえた気がした。
***
昼休み。尚、錬金術の授業で女子更衣室に迷い込みかけていたグレン先生は、僕がシャルロットを送るついでに正しい道に導いておいた。
おかげでグレン先生は傷一つなく授業を始められたわけだが。そのお陰か、授業の内容もそこそこ面白い――小学生が喜びそうな感じの、ふざけた実験――ものになった。案の定、ギイブルとシスティーナさんは切れた。
昼ご飯の為に僕らは学食へ向かっている。学食が安上がりだというのもあるが、社交性の少ない僕にわざわざ話しかけてくる友人たちに合わせた結果でもある。それに学食の料理には割とレパートリーがあるので楽しいのだ。
シャルロットのご飯も嫌いじゃないし、自炊もできなくないが、それはそれとして外食の喜びはまた別物なのだ。
特に原作にもある様にこの時期のキルア豆は……っと、もう着いた。
「あ、ギイブル」
「アダムか。お前は真面目に自習してたようだな」
「まぁ、ね」
「マスターの
「……ふむ」
「まて。毎度のことだがシャルロットが僕の事を『マスター』と呼ぶたびに距離を取ろうとするな。おい」
「冗談だ」
「本当か?」
すたすたと歩き去っていく童顔の眼鏡……ギイブル=ウィズダンの背を追って、列に並ぶ。歩いている間にメニューの内容を考え、手早く注文して手早く横にズレる。直ぐに注文された食品がトレーに乗せられて出てくるので、それを取るといつもの席に向かった。
食堂の隅、日当たりが良いというわけでもなく、入口から見て柱の陰にあるのであまり人気のない一角。そこには三人の先客が居た。
「おっ、来たか」
そう言ったのはカッシュ。カッシュ=ウィンガーだ。お調子者で元気よく、クラスに一人はいるだろう『男子の』人気者。『男子の』と強調したのは他でもなく、彼は余り女子にモテていないのだ。
思春期の衝動に振り切れんばかりにしたがっているからだということは理解されていて、元気のいい男の子を見る目で見られてはいる。だが、恋愛対象というくくりからしてみれば遠慮させていただきたいような印象らしい。この前シャルロットから聞いた。
『男の子』として見られて、『男』として見られていない、ということだという。
「こっち空いてるよ、アダム君」
そう言って二人分の席が空いている側を示すのが、セシル=クレイトンだ。女顔で小柄で、ともすれば女子に見間違いかねない少年で、このように気の利く人物だ。
此処等は柱の陰になっているせいで、席の空きが良く分からない。場合によっては周囲から椅子を貰ってくる必要も出てくる。だが、見ると既にセシルが席取りをしていてくれたようで、その心配は必要なかった。
「ありがとう、セシル」
「ありがとうございます。セシルくん」
「う、うん。……えへへ」
礼を言って、席に着く。内側から詰めて、僕がセシルの隣の席に座ることとなった。
多分あの反応からしてシャルロットの事が好きなんだろうから、隣同士にさせてあげたい気持ちもあったが……本人は気にしてないようだし、これでもいいかと考えた。
「じゃ、いただきます」
「いただきまーす」
手を合わせて食べ始めた。家の中ではほとんどしないが、僕の格好つけ気質から来るものだろうか、外ではいつもこうやって手を合わせる。気持ちも何も籠ってない言葉だが、こんなことをしているというところが、『しっかりと礼儀ができててカッコイイ』ように思えるのだ。
食事が始まると、最近の学食事情とか、昔の学院事情とか、誰それが玉砕しただの、あれこれが破損しただの、この科目の要点はああで、あの論文の疑問点はこうで、なんて関連性も纏まりもない話題がポンポン飛び交う。
それはカッシュが話題を提供し、セシルが話を膨らませ、僕らがヤジを飛ばし、ギイブルがそれに針を突き刺し、そしてまた新しい話題を放り込む会話だ。何の意味も生産性もないだろうこの駄弁りの中で、一番人気があって長く続いたのはグレン先生に対する愚痴だった。
「――にしても、あの講師すげぇよなぁ。俺、あんなに目の腐ってるやつ見てことねぇぞ」
「全くだ。仮にもアルザーノ帝国が誇る魔術学院の講師なのだから、自覚をもって業務に取り組んで欲しいものだな。なんだあの体たらくは。アレならまだそこらの餓鬼を連れてきた方が幾分かましだろう。授業を行わないどころか学習意欲を削る。腐ったミカンではないか。屑という評価すら相応しくない。そもそも――」
「お、おおう……」
ギイブルが珍しく意見に賛同し、その流れる様な話しぶりにカッシュが聊か引いた。
そもそも、この話題が長く続いたのは話を冗長にさせないギイブルの毒舌あってのもので、彼の矛先もグレン先生の批判に向いたものだから中々この話は終わらなかったのだ。
驚きも冷めた後は二人してギイブルの希少な長文に聞き入る。悪口というものは癖になる。珍味の様に時折口が欲しくなるのだ。それの矛先が無関係な第三者であるならば猶更。無関係の人物に向けたものであろうと嫌悪するものは居るが、そんなムカつきでさえ美酒のえぐみとしてスパイスになり得る。
それを打ち切ったのは、珍しくシャルロットであった。
「はい、そこまでですよ。もうすぐお昼休みが終わっちゃいますから、此処までです」
「――汚泥というもので、そもそも死んだ……おっと、そうだな。早く残りを食べきらないと、授業に間に合わなくなるか。あの教師が担当するなら欠席したところで聊かの痛痒も感じないが、やはりそうはいくまい」
よろしい、とばかりにシャルロットは頷く。滅多に話を逸らしたり、打ち切ったりしない実直な性格の彼女だが、こういう時にはちゃんと自己主張する。もう少し遅ければセシル辺りが口を挿んだだろうが、本人は肝が小さいので話を打ち切ることがあまり得意じゃない。自分が口を挿まずに終えられたことにそっと胸を撫で下ろしているのを横目に、僕はギイブルを揶揄った。珍しく、彼が食事を食べ終えるのが遅かったから。
それも当然のことだが、後日同じようにグレン先生の授業に不満を述べながら、しかし今日ほど長続きしなかったのはこれが原因だろう。男子というのは、食事の早さとか、ペン回しの上手さとか、そんなどうでも良いことにムキになるような生き物なのだ。
事が動くのは数日後、左手の手袋を胸に投げつけ、システィーナさんがグレン先生に決闘を申し込んでからだ。
聖晶片×1 獲得!
【material】
アダム=リュクス
キャラクター詳細:
アダム・リュクスとは革命裁判においてシャルロット・コルデーと同じ処刑台で死ぬことを望んだだけの、彼女の熱烈な
本来は無名の犯罪者として名を刻まれることもなくギロチンの露と消える首は、しかしその熱烈な信奉によって「暗殺の天使」に添えるように歴史に名を残した。
パラメーター:サーヴァント化した場合
筋力 ■ E* 耐久 ■ E+
敏捷 ■ E+ 魔力 ■■ D++
幸運 ■■■■■ EX 宝具 ■■■■■ EX
プロフィール1:
身長/体重:176cm/71.2kg
出典:「現代社会」
地域:「日本国関東圏」
属性:中立・善 性別:男性
今世においてアダム・リュクスの名を名乗った■■■■という男。元は名も無きFGOユーザーで、大多数の一部に過ぎないという捻くれから、何処にでもいそうな人名をユーザーネームとしていた。
本来の属性は「中立・中庸」の凡人である。
明日 の 投稿は 17:39 です。