シャルロット・コルデーに聖杯を貢ぎたい……お淑やかな服の下でははちきれんばかりになってる才能を丸出しにしたい……そう思ったとき、既に行動は完了していた(理性蒸発) 作:夢見る人・夢描く人
我が昂とこそ冥府の怒り。
――出でよ、発熱神殿。
反省するのだわッ!
拝啓、セシリア先生へ。フェジテを離れ長旅の末に学会に着き、いかがお過ごしでしょうか。馬車旅の中で大量吐血から失血死してないか大変心配です。何かあれば持たせた宝石は遠慮なく使ってくださいね。あ、今は蒸気機関が生まれてるから汽車があるのか……。
こちらはですが、テロリストが湧く季節となりました。とうとう我が校にもテロリストがおいでになられましたよ。ええ。
遠くの方で鳴った雷鳴にも似た破裂音と微かに混じる破砕音を聞きながら、心中で現実逃避を始める。静かだともいえるその一撃は、透明度の高い綺麗な硝子越しに上空を横切っていた。
あー、ちょうちょだー。いや違うな。蝶々はもっと、こう、ひらひら動くもんな。はは。
そう言えば前世の記憶からすればこの世界はラノベ舞台らしいし、こんなこともあり得るんだろうな。
うん。
やっべ、忘れてた。どうしよ。
隣でエレちゃんが凄い目で見て来る。なんか、「どうするのだわっ?」とかそんなことを言いそうな目で。
あわあわする彼女に少し胸が痛むが、実際僕にも解決手段が無い。そりゃあ、宝石魔術を応用した奥の手が使えば一人ぐらいは完封できるだろうが、相手は複数人。拳銃を乱射してるようなやばい人と、フィクションの剣士を大真面目にやってるやばい人。校門で並んで歩いてきた時点で、教室に警告すればよかったかなぁ。
僕の手持ちでは一人ぐらいにしか対処できないし、そのあともう一人の方に叩きのめされるのは目に見えている。今から生徒たちの居る教室に向かっても、人質が増えるだけだ。
ああ、どちらを封殺するべきか。
片方を抑えれば、もう片方で被害が確実に出る。かといって両方抑えきれるほど、宝石の数に自信はない。
医者の給料でそこまで多く宝石が買えるわけないだろうが。
……。
僕はエレちゃんに微笑みかけて言ってやった。
「どうしようエレちゃん。詰んだ」
「なのだわっ!?」
あはは、変な驚き方。
***
これは避難訓練ではなく、またポーズ機能も持たない現実だ。状況は馬鹿し合っている間にも刻一刻と進行する。
具体的には、もうテロリストがルミアちゃ……ルミアを指名してきている。まだ数十秒余裕はあるだろうが、直ぐに動き出さないと事態を完全に収めるのは難しくなる。
せめて片方づつで来てくれるのならば捕縛できる。だが、それだとルミアが犠牲になってしまう。下拵えした宝石の無い僕なんて、役立たずも良い所だ。魔術礼装を作ることに長けていれば、まだいろいろと搦め手を打てていただろうに。
最悪の場合、エレちゃんの宝具を開帳すれば全部解決するだろうと考えているのは間違っているだろうか。
あ、いや、エレちゃんといえばあれだ。ガルラ霊がいるじゃん。此処バビロニアどころか地球ですらない気がするけど、宝具を偽装開帳すればちょうどいい塩梅でバビロニアの冥界を招来できるんじゃない?
その旨をエレちゃんに小声で伝えると、エレちゃんは涙目でこう返してきた。
「そんな器用さ、私には無いのだわっ!?」
というか前に一度見た特務分室さんたちが怖いらしい。一歩間違えればフェジテが冥界に沈むような手を、エレちゃんは取れなかった。主にストレスによる手の震えで、失敗しそうな気がするらしい。
まじかー。エレちゃん意外と肝小さいなー。胸も小さいのに。
「胸は関係ないと思うのだけれど……」
まぁ、依り代があれだから仕方な……あっ、オリジナルもノー脂肪(というか皮すらなく肋骨丸見え)でしたね。
っと。危ない。煽っているとエレちゃんの拳が飛んできた。主にこんな時に何をふざけているのかという怒りと、揶揄われる恥ずかしさによって、顔が赤く染まっていた。
「この中にルミアって奴はいるか?」
教室の中からテロリストの声が聞こえた。因みに僕らは今、医務室から出て空き教室の中に入ってます。流石に何も動かないと
ふーむ。だんだんと思いだしてきた。なんかルミアちゃんが原作のキーキャラ何だっけ。もう転生してはや十数年、一生懸命生きすぎて内容を殆ど覚えてない。ぶっちゃけ、主人公が強いってこと以外覚えてない。
いや、別に強くはなかったっけ……? 不味いな、そこもうろ覚えだ。
これがマリオ的展開ならルミアちゃんは囚われのピーチ姫になるだろうし、鬱展開なら生徒は虐殺されたり強姦される可能性もある。更に言えば、態々キーキャラを誘拐しているところから、彼女がなんかの実験の素体になることも考え得る。
例えばほら、体を改造されて悪の科学者の物にされてしまったヒロインをむせび泣きながら殺すとか、割と人気でそうな内容じゃん?
「出ないと思うわ。むしろドン引きするわ、マスターのその発想には」
えー? 鬱展開いいじゃん。ご都合主義もいいけど、甘すぎるのは嫌いなんだよね。やっぱ世界は適度に厳しくなくちゃ。
にしてもホントどうしよう。ルミアがどっかに連れ去られちゃったし……あ、もしかして今、テロリストってばらけてる?
――殺れるッ!
きらりと目が光るようなエフェクトを挟み、僕は廊下に踏み出――
「はなっ、離しなさいよッ! 私が誰だと思ってるの!」
「はっ、活きが良いねぇ。やっぱ餓鬼ってのはこうでなくっちゃぁなぁ」
――音より早くしゃがみ伏せて身を隠す。幸い、扉を開けていなかったのが功を為した。
おいおい、おいおいおいおい。ちょっと手を付けるのが早すぎやしませんかね、テロリストさん。
鬱展開は嫌いじゃないけど、流石の僕でも現実と小説をごっちゃにはしないぞ。何処まで
……うん、遊んでる場合じゃあ、ないね。分かってる。
曲がりなりにも(年齢偽装をして)医務室の助法医師として雇われたのだ。身分としては成人相応。生徒を見捨てて逃げだせば、首が飛ぶどころか悪評が回ってフェジテから逃げ出さなくてはならないかもしれない。
ああ、それは何と、取り返しのつかない話だろうか。そんな目に合うくらいなら、五分五分で勝算の有る戦闘を仕掛けた方が良い。
仕掛け時はあのテロリストがどこかの部屋に入った時。逃げ場のない空間内で、一気に終わらせる。
だから僕は、鼻歌を交えて生徒の一人を抱え歩くテロリストの背後を追った。懐に抱えた宝石に触れ、苦い顔をしながら。
横を見れば、エレちゃんも心配そうな顔をしている。今更だけどさ、エレちゃんなら素手で殴りかかっても勝てるよね?
「……その、私、力加減はあまり得意ではないのだわ」
あー、長年死者ばっか相手にしてたボッチだからねぇ。
いったい。殴らないでよ。
緩んだ顔で、テロリストの男がある教室に入っていく。プレートから判断するに、何かの特殊教室の準備室のようだ。
部屋が狭いのは都合がいいが、うっかり生徒を巻き込みそうで怖いな。
あーあ、これが適当な廃村とかで、生徒もいなかったらよかったのに。辺り一帯に疫病をばらまいて、放置。それだけで勝手に死んでくれるだろう。
現実にそれをしたら、まず間違いなく捕まるだろうけど。そもそも、生徒を巻き込むから使えないけど。
「儘ならないもんだ」
胸元を握りしめ、そう呟く。如何に力があっても、それを振るえる状況は限定されていく。
エレちゃんの宝具は殲滅戦でもない限り使用できず、単体での戦闘技術はそれほど期待できない為、人質を巻き込むことを恐れている。何より、サーヴァントの火力は高すぎる。
令呪でブーストすれば、猶更。
胸元――更に言うなら、心臓の真上。そこには、三画の令印が刻まれている。
僕とエレちゃんの契約の証であるそれが。
あの夜の誓いの証であるそれは、今、疼く様に震えている。
ただでさえ一騎当千なサーヴァントの力に上乗せすれば、それこそ世界を獲るのも不可能ではない力。
それが、しかしこんな些細な場面では全くの役立たずであることを否定できない。
ただ奮い立たせるだけの力もない。退かない楔になるしかない。
「カッコつかないなぁ……」
「そんなこと無いのだわ」
ぼそりと呟けば、エレちゃんは小声でフォローしてくれる。本当にいい子だ。
エレちゃんに笑みを向け、解れた緊張のまま勢いよく準備室の戸を開け放つ。気分はイケイケDKで、テンションもそんな感じだ。
扉を開けて直ぐ、バンダナの……ジンと呼ばれていた男が床ドンの姿勢でシスティーナを押し倒しているのが見えた。
拘束された状態、首筋に粘液の跡。もしかすれば、男性恐怖症でも患うかもしれない。精神面は専門外なんだけど。
後々のメンタルケアの手間を減らす為に、僕は情報量でシスティーナを混乱させようと行動を起こす。やることは簡単で、ただ懐に納めた宝石を節分よろしく室内にバラまいただけだ。回収しやすいように机の下や機材の隙間に入らないようにだけ気を付けて、どの宝石が何処に落ちたのかだけを把握する。
「な、んだぁ……ッ!?」
「やっほー。トリックオアトリート。投降してくれないと悪戯しちゃうぞ♪」
……我ながらこのテンションきついな。楽しいけど。
「ね、ネルガル先生っ!? なんで……っ」
「いやさ、医務室で昼寝してたらなんとなく虫の知らせってゆーの? そんな感じのを感じ取ってね」
「働いてください!」
「仕事ないから仕方ないじゃん」
因みに、エレちゃんには扉の脇に隠れててもらっている。いざというときは……うん。最終手段としてこいつに対処してもらうことになるだろうな。
足下に散らばった宝石を踏みつけながら、どんどん暗い室内へ踏み入る。トラップを仕掛けるような時間はなかったし、そこらへんは警戒してない。大体、設置式のトラップがあったら、ばら撒いた宝石に反応して作動したはずだ。それが振動式でも感圧式でも、生命感知式でも。
「だいじょーぶ。もう助けは呼んであるし、僕もそこまで弱くは無いからさ」
おちゃらけた語り口調に反するように、意図的に威圧的な笑みを浮かべる。抗すると、不思議とアドレナリンが湧いて恐怖が麻痺する。成程、確かに笑顔は攻撃的だ。浮かべるだけで、戦闘態勢が整う。
「おーいおい。保健のせんせーですかー? ちょーどいいじゃねーの。ちょっと今から保険の実技を始めたいんですよ手伝ってくれませんかぁ?」
「良いですよ。仮にも講師ですから、お手伝いしましょう。題材は……テロリストの解剖とかはどうでしょう?」
言いながら、足元の宝石の待機状態を解除する。
限界まで引っ張ったゴムが千切れるように、貯め込まれた呪いが一直線に打ち出された。
部屋の暗闇に同化するような黒靄の弾丸――それを、ジンは紙一重で避けて見せた。
「うおっ、とぉ……へっ、あぶねぇなぁ。体罰ですかぁ? せんせぇ」
「いやいや、麻酔を掛けないと暴れちゃうでしょ? それとも、麻酔なしでやられたかったんですか?」
「んー、どっちかっていうとオンナノコの服の解剖をしたかったカナ♪」
「ははっ、僕もしてみたいですねぇ、貴方の解体」
ははっ、ははははは。
「――死ね」
「《ズドン》」
視認。敵の攻撃は、黒魔【ライトニング・ピアス】。詠唱速度は秒以下。出の早さは勝ったが、攻撃速度は向こうの方が上。先程避けられたのは、見てから回避だったのか?
警戒されていた可能性を考えて、もう一つ試してみよう。
「物騒ですねぇ。
よくよく考えれば、見知った人物がテロリストと和やかに会話してる時点でトラウマものじゃなかろうか。
横目に確認する暇もないが、ドン引かれているだけならまだしも、気を疑われると厳しい。下手したら男性恐怖症の代わりに人間不信を患わせてしまいそうだ。
それは兎も角として、折角飛び退いておくに行ってくれたのだから、僕はこれ幸いとばかりにシスティーナの壁になる様に仁王立ちする。着てきた白衣が丁度良く壁となって、視線を遮ってくれることを期待しよう。これ以上のストレスは、出来ればない方が良い。
「人の生徒に手ぇ出しといて、のこのこ帰れると思うなよ……!」
そんな、カッコいいこと言ってみたりして。
――なんだ。
――
***
ジンに生みの親の記憶はない。一番最初に知った大人は、皴だらけの老人――『爺さん』だった。
枯れ木のような体には無数の傷跡があって、狼の鬣のような銀髪は生気を毛先まで湛え、四六時中変わらない仏頂面は見るだけで恐怖に似た不安を抱かせる。
後に『戦争を呑んだ』とまで形容した老人の立ち姿は、記憶の限り、堂々としていた。育児に疎かろうと不安を一切感じさせない手つきで育ててくれた彼から、一番最初に学んだのが『臆さない強さ』であった。
“爺さんは強かった。魔術が使えなくとも、俺じゃあ敵わないぐらいにな”
物心ついたころには、ジンの育った山小屋に人を殺すための武器は無かった。解体用のナイフ、調理用の包丁、鹿撃ち用の猟銃。明確に人を殺せそうなのは、それぐらいだっただろうか。
爺さんは物心の付いたジンに、様々なことを教えた。
植物の見分け方を教え、使い方を教え、加工法を教え。動物の種類を教え、足跡を教え、狩り方を教え。罠を、銃を、ナイフを、気配の殺し方を――山歩きを教えてくれた。
笠を編んだり、薬を調合したり。美味くできれば一言二言褒めてくれて、その日の食卓に脂の乗った肉が並ぶ。
時折不器用に頭を撫でてくれて、誕生日にはナイフや鞘なんかを自作して送ってくれる。
ジンは、そんな爺さんが大好きだった。
ジンはお人好しな輩が大嫌いだった。
きれいごとを述べて殺すのを躊躇うなど、馬鹿のすることだ。襲われたら殺す気で反撃する。それが当然だと思ったし、実際にそうして生き延びてきた。
時折下りた町で迷い込んだスラム街。治安の悪いそこで襲われたときは、爺さんの造ってくれたナイフが唯一の相棒となる。乞食を殺し、チンピラを殺し、浮浪児を殺し、ヤクザを殺した。
いけなかったのは、勢いで殺してしまったヤクザ者。ジンは経験的に、服装が良くてガタイの良い奴ほど徒党を組んでいると理解していた。
だが、すぐさま仇討ちが来るわけでもない。暫くぶらついても、更なる襲撃は無かった。
だから安心して、ジンは帰路に就いた。
そんな生活を繰り返し、ジンも大きく育った。
気も大きくなり、体もまたそう。良く町に降り、交友を築いていたためだろう。
魔術を習い始めて、また純粋に強かったジンはスラムで育った孤児らの大将を受け継いだ。スラムの大人を一掃できる実力は、偏に爺さんが山で教えてくれた狩りの技術――言葉を濁してはいたが、紛れも無いゲリラ用の戦術――のお陰だった。
子供らのヒーローで、世界で二番目に強くて、自分にできないものはない。
そんな幼少期の、ある日。
「なぁ、ジン。今日は妙にオトナがすくねぇよな」
「ん? ……ああ、ほんとだな。何してんかねぇ」
スラム街の一角、廃材置き場。下手に踏み入れば服の裾を引っかけ、転倒し、錆びた金属で傷口を作ってそのまま破風傷で死にそうな場所。けれど子供の体には丁度良く、入り組んだ迷路のような此処は子供ら公然の秘密基地となっていた。
「またなんか企んでんのか?」
「そんときゃあ、俺がぶっ叩いて追い返してやるよ!」
腕まくりしてジンが意気込む。実際、ジンは過去に三度此処に踏み込んだ大人等を撃退した実績を持っていた。
それは頼もしい、とばかりに子供らは沸き立つ。ガリガリにやせ細るものもいれば、上のあまり歪に超えた者もいる。間抜けに涎や鼻水を垂らすような彼らの王様としてふんぞり返るのは、悪くはない気分だった。
人の上に立つのが好きなのではなく、人に慕われるのが好きなのだろう。
この日も日暮れまでじゃれ合い、家の有る奴は家に、そうでない奴は自身の寝床に戻っていく。じゃあな、またな、と行儀のよい挨拶を交わして人気が捌けていく。
全員を見送り最後の一人となったジンは、そこでようやく帰路に着いた。一番初めに此処に着き、一番最後にここを出る、それもきっと王様の役目なんだと暗黙の裡に決まっていた。
「あー、楽しかった」
夕日に向けて背伸びして、ふと物足りなさを覚えている自分に気付く。
そう言えば、今日は一度も大人が寄ってこなかった。普段ならば騒ぐなり襲ってくるなりして、一日に一度はオトナ達が訪れるのに対し、今日はそれが無い。時折来る大人の差し入れは、滅多にないことだから残念には思わないが。
「……」
何か引っかかる。
怪訝な顔をして山を登っていると、土と木々の臭いの中に嗅ぎなれない臭いが混じっていることに気付いた。僅かに残る熱と血、スラム独特の異臭、生まれてから一度も洗ってないんじゃないかという臭いは、オトナ達のそれに違いなかった。
「……っ」
嫌な予感がする。
山道を外れ、木の根の上を跳ねるように駆け、低木の枝に手をかけて木々の上を飛び回るように移動する。風が梢を揺らすような音が後に続き、その他は何も残らない。魔術の補助による体術だ。
大人が走るよりも早く、太陽が山の向こうに隠れるよりも早く、ジンは小屋の前に付いた。山道の続く先など、このほかに無い。スラムのオトナが道を態と逸れる様な能もないだろう。例外として、道を認識する能すらない場合を除いて、だが。
「爺さん……っ」
予感は焦燥にとって代わり、不安は確信にすり替わる。
考えてみれば簡単な論理だ。自力で狩れない獲物が居れば、その住処に仕掛けをする。
餓鬼でも考えつく、単純な話だ。
果たして、そこには汚物が居た。
「ひゃ、ひゃ、ひゃ……アニキぃ、ほんとにいいんですかい? 殺しちまって」
「良いんだよ。この糞爺はあの糞餓鬼を匿ったんだぜ?」
「あはははは! 潰れたぞこいつ! べちゃって、べちゃって!!」
鉄臭い。
小屋の前に立つそいつらを視界に居れた後――後の事は、あまり鮮明には覚えてない。
気付けば口元は血だらけで、奥歯が罅割れてて、息するたびに喉が痛くて。胸の中に心臓があるのが分かるぐらいに体が熱くて。
初めての罪悪感も、虚脱感も、高揚も、何もなく。ただ頭の半分潰れた爺さんの体に縋りついていた。
到底、立てそうにないほどに力が抜けていた。
疲れたのだろうか。
「爺さんっ、なんで……っ!」
おかしい。ジンにも殺せる程度の奴らなんて、爺さんの敵ではない筈だ。
爺さんは言ってないけど、ジンは気付いてる。小屋に置いてあるあの猟銃は、『ライフル』っていう軍の備品何だって。押し入れの奥の不思議なにおいの服は、『グンプク』っていうんだって。
爺さんなら、あの程度の奴らに殺されるわけがない。なんだ? 疲れてたのか? 毒を盛られた? 何で殺された?
これは夢だ。爺さんがサプライズで、死んだふりをしてるだけだ。
だってそうじゃないか。あんなにきれいに鹿を狩れる爺さんが、たかがオトナに殺されるわけがない!
だが、ジンの『優れた』思考は感情如きで停滞しない。命令しようが、既に集めきった情報から真実を推測――補足した。
――致命となる傷を負ったものが一人も居らず
――硝煙の臭いも初めは薄かった
――それに、爺さんの獲物には血が――
「――ッ」
じゃあ、なんだ。
「馬鹿な。馬鹿な。んな馬鹿な話が……」
その後に及んで、ようやく気付いたのだ。
自身の慕っていた爺さんが、その実争いなどまるでできないのだと。
爺さんは老兵ですらなく、ただの逃亡兵だったのだと。
脳裏でいつかの声が木霊する。
『この正義の魔法使いに、儂は成りたいんじゃよ……叶わない夢と知りながらもな』
将来の夢について尋ねられ、逆に困らせようと聞き返してやったある日の。
本棚から絵本を引っ張り出した、月のきれいな夜の話し。
ああ、ああ……っ。
兵士として、戦士として、魔術師として――致命的な欠陥。
人殺しを躊躇う良心。人を慮る善性。それらに気を取られて足踏みする欠陥。
何度も思ったじゃあないか。ジンが何度も。
お人よしだなぁ、と。
「爺さん……爺さん……っ!!」
でも、なら、なんで。
「なんで……逃げなかったんだよ」
逃げればよかったのに。
そう言いだすことはできなかった。此処に立ち続けた爺さんの、大切できれいな何かを汚してしまいそうだったから。
その代わりに、ジンは空を仰ぐ。
「畜生……畜生……なんで、死んじゃうんだよ……っ!」
この日からジンは、お人好しな輩が大ッ嫌いになった。
***
「はっはっはぁ、命を掛けてでも生徒を守るってことか? いいねぇ、カッコい――《ズド》ッとぉ!?」
台詞の途中に奇襲気味に《ライトニング・ピアス》を放とうとして、それを中断させられる。
また先程のような
今度ははっきり見えた。
ガンドが放たれたのがネルガルの足元であることをしっかりと視認したジンは、にやりと笑って推測が確かであると確信した。
――奴は恐らく、宝石に発動済みの魔術を込めているんだろう。戦場でも似たような道具を使ってるやつは見たことがある。
――だが、それにしても……
――……これ、一体いくら使ってんのかねぇ。
その日暮らしの自分では到底拝めないだろう金額と、堪え性の無い自分では作り上げることのできないだろう数の魔導器にジンは僅かな賞賛を胸の内でつぶやいた。
とんだ馬鹿野郎だ。
その一言が聞こえた訳でもあるまいに、ネルガルは笑みを深め、怒りの中に少しの愉悦を含めた色を見せた。想う女と両想いになれたような興奮を感じながら、ジンは高らかに笑う。
「はぁーっはぁ! いいねいいねいいねぇ! 平和ボケしたお坊ちゃんお嬢ちゃんばかりだと思ってたが、中々
「――。そうか? じゃあもう少し楽しませてやるよ。《
撒き散らした宝石の並列起動。
並行処理された術式が宝石内を満たし、魔力光を放射する。
過負荷で軋みを上げる触媒は過剰なエネルギーで溶け始め、込められた魔力と反応してエーテル化現象を起こす。流動する力、連結する魔力。空間そのものを法陣の画板にした魔術が、蒸発するよりも早く渦を巻く――!
流石のジンも、これには目を剥いた。大方先の魔術を連射する程度しか手は無いだろうと見くびっていたために、得体の知れない術式が起動したことに混乱を覚えたのだ。これはまずい。それの起動が完了するより先に、ジンはネルガルを撃ち殺そうと指を伸ばした。
出遅れた早打ち勝負。
だが、遅れることもない。
何故なら、雷は呪いよりも早く空を駆けるのだから。
「グッ!」
着弾と同時、銃弾に似た衝撃が胸を突いた。
だがその直後にまた、ジンの体に『とっておき』が――
「甘ぇ!」
直前、つまり【ライトニング・ピアス】の着弾と同時に、ジンが視界から消える。
単純なステップで避けたのだろう。それも人の視界から消え失せるほどの速さで。
なるほど。テロなどを引き起こすだけあり、危険を冒すだけの武力はあるのだろう。
そして。
「ガ……ッ」
――突き刺さった。
「ホーミングくらい付けるさ、たった一つの鎮圧用魔術なんだから」
着弾の衝撃に咳きこみそうになりながらも立ち上がり、膝から倒れるジンにそう吐き捨てる。確かに術の原理はガンドと同じだ。だが、ただ威力を上げるだけが魔術の肝ではない。様々な効果を付与し、小さな術で最大の効果を引き出す。それこそが魔術師の戦い方なのだ。
――あれ、そんな事、誰に教わったんだっけ。
「なん、で……」
「何故立ち上がれるのか、何故死んでないのか、か?」
簡単な話だ。衝撃は走れど、【ライトニング・ピアス】の殺傷力の大半はその電撃に寄ったものだ。
例えば絶縁体を挟んだり、避雷針を脇に建てたり、或いはそれその物を地面に逃がしたりすれば体は焼かれない。
それと同じだ。
「炎熱、冷気、電撃……そんなものに対策を持つことが、そんなに不思議か?」
何なら物理に毒、病、呪い、催眠、洗脳、昏睡にも備えている。それぞれが別々の宝石を触媒としているから、いつも嵩張るのが玉に瑕だけど。
それでも、たったそれだけで安心できるなら安いものだ。一番の備えはエレちゃんだけど、女の子になにもかも任せるのは格好悪いじゃないか。
それに、たった一人に防衛を依存したら、その一人が居なくなった時が怖いしね。
「んな、偏執な……」
掻き消えるような声を最後に、ジンは倒れ込む。床に打ち付けた頭の音の後、背後から跳ねるような音が聞こえた。
「僕からすれば、皆が無防備に過ぎるんだよ」
何せ、そこらの人が拳銃を隠し持っているかもしれないような世界だ。日本でのうのうと過ごしていた日本人が、突如ヨハネスブルグに放り込まれても平和ボケしていられるかっていう話だよ。
備えよ、常に。
優雅でなくとも、泥臭くとも良い。
死にたくないなら、備えるしかないのだ。
「大丈夫ですか? システィーナさん」
柔らかい声を心掛けて、背後の少女に語り掛ける。
何がスイッチかは知らないが、茶番で濁した恐怖はまたぶり返しているようだ。
トラウマにならないと良いが。
目線を合わせ、微笑みかけてもう大丈夫だと語り掛ける。安心したように体から力を抜いた彼女に、今なら大丈夫だろうと判断して彼女の後ろに回った。
勿論拘束を解くためだ。
手に縄をかけ、それを解こうとした。
その時だった。
「――ここかっ! って、あれ?」
振り返ると、そこに居たのは最近臨時講師として教鞭を振るい始めたグレン先生が立っていた。
彼は扉脇のエレちゃんに気付き事情を問いかける。僕が代わりに簡単な事情を説明すると、頷きを返してジンを縛り上げ始めた。
……あの、その縛り方はどうなんでしょうか。
「えー? なんのことかボクわからなーい」
「イラっと来ますね、その口調。てかどこで習ったんですかそんな縛り方。
ここには二人も女性がいることを忘れないでくださいね?」
「分かってる分かってるって。ところで……えーっと」
「ネルガル=リルです。ネルガルとでも呼んでください」
分かってない奴の返事じゃないか、それは。
「ああ。んじゃネルガル先輩……先輩? 先輩、医務室勤務何だし自白剤とか持ち合わせてないスか?」
そこで、調子を取り戻してきたシスティーナが虚勢交じりに突っ込んでくれた。
「あるわけないでしょ! 此処は学院ですよ!?
というか医務室にそんな物騒なものがあるわけないじゃないですかッ!」
「まぁ、それもそうだ――」
「ありますよ」
「――あるってさ(白目)」
「「なんでっ!?」」
いや、正確には材料だけど。
流石にジョークのつもりだったのだろうグレン先生が、ぼりぼりと頭を掻いて反応に困ってる。
だから僕は揶揄うような口調で冗談を言った。
「ただし改良された寄生虫を生きたまま飲ませるという形になりますが、よろしいですか?」
「よろしいわけねぇだろこいつらより先に俺らが盗っ捕まるわっ!?」
「冗談ですよ、冗談。自白剤の材料はあるので、調合するなら20分はいただきたいですね」
「ああ、何だ冗談か……ってなるかボケェ! 物騒すぎるわっ!
……それはそれとして自白剤の調合もできるんすね、先輩。以前はどちらに?」
「スラムでちょっと闇医者を……おっと」
「(冗談であってくれ……頼む、それも冗談であってくれ……!)」
いやぁ、他人を揶揄うのって楽しいなぁ!
「ま、此処じゃなんです。医務室まで連れて行きましょう。エレちゃん、宝石の回収よろしく」
「分かったわ。それじゃ、マスターは先に――」
そう言って腰を落とし、亀〇縛りされたジンの体を抱えて立ち上がろうと――
「――マスターッ!?」
――刹那。
サーヴァント由来の霊的直感能力が警鐘を発し、パスを通じてその騒めきが流入してくる。
鉛よりも重い時の中、臓腑に氷水を駆けられたように思考が冷え込み、体に先んじで意識が立ち上がる。
首根っこをひっ捕まえられるように急に立ち上がり、ジンの体を放り投げ、狭い準備室を飛び出して辺りを見回す。
“敵襲だ”
目を左右に走らせる。敵影確認。白――いや、灰色。骨? スケルトン――ではない。死霊ではない。魂が無い。死んでもない。無機物――ゴーレムだ。輪郭、頭蓋骨がトカゲに似ている。竜種に似ているというべきか。神秘の臭いが濃い。恐らく竜牙兵。数は多数。概算三十以上。奥の法陣より召喚されている。構成式に見覚えはある。たしか神代の未改良魔術。
脳裏に引っかかるそれを今は関係ないと切り捨てながら、彼我の戦力差を確認する。その一体一体が、確実に今現在の僕を上回っている兵士。当然、三流魔術師のグレン先生とただの優等生のシスティーナでは対抗しようがない――逃げるか?
無理だ、そんな体力と身体能力が僕には無い。研究ばかりではなく、フィールドワークもするべきだったか。
医者のフィールドワークってなんだよ。風土病収集?
混乱している。
突然の襲撃に無意識に胸を掴んだ。心臓の真上にある令呪が脈に合わせて鼓動するように熱を持つ……ような錯覚を起こす。
手持ちの宝石を確認するまでもなく、非生物相手の勝算など僕には無い。
強いて言うなら伝染病をばら撒いての殺戮ぐらいしかできない僕では、命の無い敵に対する抵抗手段を持ち合わせていないのだ。
そもそも医者がそんな事態に陥ること自体があり得ないことなので、寧ろある程度の武力がある方が可笑しかったりもするはずだ。
だがまぁ、僕は色々と心配症なのだ。特に、この世界は法整備が甘く、小市民でも名前を知る様なテロリストが未だに息づいている国だ。備えるに越したことは無く、寧ろ今回は備えが足りなかった。
詰みだ。僕の手ではどうしようもない。
――ああ、しくったなぁ。
溜息を吐いた僕の肩に、だが細くか弱げな手が乗せられた。
「大丈夫、私がいるわ」
ああ。
「そっか。それじゃあ、安心だ」
冷たく、嫋やかで、でも頼もしいその手を握り。こんなところで
廊下の端から端、奥の奥に至るまでを埋める骨の軍勢を前に安堵の息をついた。
「――任せた、エレちゃん」
「任されたのだわ、マスター」
蹂躙は一瞬のことだった。
「――行くのだわ」
鼓膜を震わせるのは、鉄のように冷たい鐘の音。
呼応するように腹の底まで震える竜の咆哮が続いく。
呼び出されたのは死者の国の権威、女主人の忠実な下僕。嘗て星を制した種族の亡骸。
それが、波のように竜牙兵を流し砕いた。
押し込まれた彼らは押し合い、圧し合い、時には互いの自重で互いを砕いて散っていく。
後にはただ、凶つ骨片と虚ろに冷めた空気のみ。
「おいおい、あの
悲鳴の様な叫び声に答えるものは唯一人。
だがそれは、校庭などではない。
「知らないのだわ。彼らの生前がどうであれ、死んだらみんな一緒だもの」
冥府の女主人は平等である。
神であろうと、人であろうと、虫であろうと、竜であろうと。
極めて平等に、公平に、職務を進める。
刮目せよ。遍く国の、あらゆる死者の帰る国の主を――!
とまぁ、澄ました風にエレちゃんは言ったが、その実少し自慢げなのがパスを通じて理解できた。
当然、気付いていることにも気づかれていて、だからパスを通じてそれを秘密にして欲しい、という声が聞こえた。
バラすつもりはないよ。
そう返すと、安堵したように体の強張りを緩めた。
威厳って大事だよね。うんうん。どうでもいいけど、僕もノリは良い方なんだ。
「それで、どうするのかしら? こんな事態なのだし、あれで終わりだとも思えないわよ」
「あれは確か、竜の因子を材料に竜牙兵を大量召喚する魔術の筈だ。なら、少なくとも相手は竜の因子を手に入れられるだけの力がある。そんな相手がこれ以上の備えをしていないというのは考えにくい。
……それで、どうしましょうか、グレン先生」
「って、俺に丸投げかよ!?」
危機感を煽るだけ煽ってグレン先生に話を振ってみると、理不尽な話でも振られたような形相で突っ込みを入れられた。いや、確かに丸投げするつもりだったけど、別にいいじゃないですか。
僕、医師ですよ? 何要求してんですか。
「あぁ、そういやそうだったな。
因みに、あいつ鎮圧した奴は……」
「もう使えないですねぇ。
いや、フェジテごと滅んでいいなら手段は山ほどありますけど」
「物騒すぎるわ!?」
もともと持ってたガンドの残弾は四発。牽制で二発、大技の触媒として一発と、それの増強にもう一発分。あれで仕留めきれなかったらエレちゃんに頼るしかなかったが、エレちゃんの攻撃の余波でシスティーナが大怪我負いかねなかった。
実は割とぎりぎりだったことは、僕の胸の内にだけとどめておこう。
「――ほぅ、ならば貴様を殺すのは後回しにしてやろう」
あ、新手だ。
「わぁ、なんかフラグ立てちゃってたかな?」
「マスター、マスター。なんか凄く強そうな人が居るのだけれど援軍かしら?」
「だとよかったんだけどね。どう見ても敵だね……ごめんエレちゃんッ!」
「――ッ、いきなり何をするのだわ。戦士というのは、まず名乗りを上げてから殺し合うと聞いたのだけれど」
「それはすまない、レディ。生憎とこちらはテロリスト。犯罪者なのだから」
……理性的、予想外の事態にも柔軟に対処する、敵対している女性をレディ呼び。
うわぁ、強キャラ臭がプンプンする。
グレン先生グレン先生。なんか秘策とかおありで?
「んなもんあったらもう使ってるわ!
奥の手は無くもないが、この状況じゃあどれも使えねぇしなぁ……そっちはどうなんだ」
生憎と、自分、戦闘はからきしなんで。
「そういや医師だったな、あんた。
……ん? それにしては若過ぎないか?」
やだなぁ、グレン先生が言えたことじゃないでしょ?
「それもそうか」
……ふぅ。
冷ややかに睨み付けてくるテロリストは、傍らにその五つの剣を滞空させながら何かを呟き終えた。
「……?」
どうしたのだろう。様子からして、魔術の詠唱でもしたのか。後から気づいた違和感によって、その体で魔力の蠢動が行われたことが確認できた。だが、変化は見られない。
世界が書き換えられた様子も、捻じ曲げられた様子も、置き換えられた様子もない。
不発か?
「……やっちゃえ、エレちゃん!」
「分かったのだわ!」
冥府から槍檻を引き出し、テロリストの男に向けて打ち出す。雪崩か、
「あれ、魔術じゃねぇのかよ……」
「何か言いました?」
「いんや、なにも」
焦りを見せた男に一気に畳みかけ、四方に槍檻を突き立てて拘束。魔導器であろう五本の剣は、いずれもエレちゃんの猛攻によって砕け散っている。
グレン先生がロープを持ってきて縛り上げるが……。
「先生、【スペル・シール】は要らないんですか?」
「要らねぇな。今は誰も魔術を使えない」
「それはどういう……」
「俺の
へー。
……へぇっ!?
「
「いや、こんな切り札があるなんて想像が至る方が可笑しいと思いますよ?」
「ふっ。それもそうか……
……いや、まて。そういえば風の噂で聞いたことがある。一年まがふっ」
「――っと、それで、今どうなってんだ? 生徒は無事なのか?」
「流れるように気絶させましたねぇ……」
なんか後ろ暗い過去でも抱えてるんだろうな。きっと。
お互い様なので詮索はしないけど。
その後は全てグレン先生に放り投げ、僕は生徒たちへの事情説明の後に医務室へ戻った。単純にできることがなくなったのだ。
最後のテロリストがいるであろう『白亜の塔』付近のゴーレムはエレちゃんに一蹴してもらったが、その奥の魔法陣は僕らではどうしようもない。けども解呪の時間も有り余っていたために、全ては消化試合の様相を見せていた。
システィーナやルミアを今の教室に戻すのは、少し時間を置いてからにした方が良いだろう。そういう判断から僕らは衛兵が駆け付けるまで雑談を交わした。
流石は優等生か、グレン先生と一緒になって僕の使った魔術について根掘り葉掘り聞いてきた。はぐらかしたけど。好奇心旺盛だね。
ていうかせめて宝石回収ぐらいは手伝えよグレン先生。グレン先生の歯邪魔でしかなかったぞ。
隙あらば懐に隠そうとするんだからもー。
事情聴取さえ終われば自由なので、いっそグレン先生に授業でもと促してみたが、まぁ当然そんなことができる体調でもない。
今教室に居る彼らにとっては、せっかく休暇返上の補講日に、しかし何一つ授業が進まなかったのだ。これは学園長に医薬の差し入れをするべきかな。
なんて。
斯くして僕の医務室勤務史上最大の事件は幕を閉じた。事情聴取が鬱陶しく、また事情を知ったセシリア先生が吐血しまくって失血死しかけたが、何も問題はなかった。
ないったらない。少なくとも指名手配やら冤罪やらは無いので問題なしだ。
うん、
――最悪アルザーノを冥界に落として逃げ延びれば全部解決だし、ね。
聖晶石×1 獲得!
【material】
ネルガル=リル
キャラクター詳細:
ネルガルとはメソポタミア神話においてエレシュキガルの夫とされた神格の名で在り、戦争や死、疫病、冥界を司る神として見られていた。
一方、メソポタミアの人々にとって、夏の盛りは死をもたらす季節であったために、太陽神の一面も持つ。そこからギルガメッシュを愛したというシャマシュと同一視されることも……うぇ。
パラメーター:
筋力 ■■ D 耐久 ■■ D
敏捷 ■ E 魔力 ■■ D
幸運 ■■■ B 宝具 ■■■■ A+
プロフィール1:
身長/体重:174cm/68.7kg
出典:「現代社会」
地域:「日本国関東圏」
属性:秩序・中庸 性別:男性
今世においてネルガル=リルの名を名乗った■■■■という男。
「リル」は神話におけるネルガルの父と母、「エンリル」と「ニンリル」からとった。
その戦い方は実にえげつなく、対単体においては取れる手段がガンドしかないが、「殲滅」或いは「虐殺」戦の場合、宝石魔術で宝石に込めた疫病熱病伝染病等々をばらまき始める。
被害妄想が凄く、エレシュキガルがいないときに闇討ちされるとスカンクみたいに疫病を撒き散らし始めるので取り扱いには注意を。
尚、「疫病」と「熱病」を司る神の名を自称するだけあり、病に対する理解が人一倍深い。その為、普通の医師では手の付けられない患者も、前世の知識(ウイルスに対する理解・細胞の働きetc)などというチートを駆使しながら何とかすることができる。
町医者の助手をすることで生計を立てている。
藪医者であり闇医者。セシリア先生は大恩人。
魔術回路の起動:
サーヴァントがシャルロットであるときとの違い。
・必要が無かったので、礼装作成技能が低い。
使える魔術はガンドと医療用の自作が幾つか。ただし宝石が無いと『解析』しかできない。
『ガンド』『解析』『封印』『記録』『結界』『流動』
・生計を立てるために身分を偽装して医師を営んでいる。
基礎的な魔術が使えない為、精々が町医者扱い。藪医者程度。内臓の弱いセシリア先生に変わって、病気の診察をするために雇われた。内科専門。
・身分偽装できる伝手がある。
エレシュキガルが時折うっかりして後ろ暗い所に迷い込むたびに伝手を作っていた。
因みに、エレシュキガルの戦闘能力は令呪の補助が無い状態でも割と高い。
次回 の 更新は 00:00 です。
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