「世界樹の迷宮」……それは、エトリアの町外れに発見された大地の裂け目だ。
どこまで続くか誰も知らないほどに奥深く続く、地下樹海の迷宮。そこには、およそ人間には推し量れないほどに莫大な『価値』が眠っていた。
あるものは富を、あるものは名声を、あるものは権威を求め、樹海を夢見るようになる。もちろん死と隣り合わせの冒険ではあるが、老いも若いもみな、迷宮に心躍らせたのだ。
さて。そんな世界樹の迷宮がある街エトリアに、ある少年もその身に溢れんばかりの冒険心と探究心を詰め込んでやってきた。少々小柄で黒髪を適当に切りそろえた、小ざっぱりした身なりの17歳。それが僕、キッドである。
愛用の剣を腰に、盾を背中に仕込んで、きれいな町並みに足を踏み入れる。装備でわかったかもしれないけれど、僕はパラディン。タンクの役割を持ち仲間の盾になる職である。ま、仲間なんて居ないけどねっ!
「あー、最初は冒険者ギルドに行って登録しないといけないのか……」
ベルダの広場とやらについてうろちょろしていると、ちょうど怖そうな眼帯のおじさんが目に付く。すごい早足で迷いなくある建物に入っていったが、あんな歴戦の強者みたいな風格がある人だ。たぶんあそこがギルドなんじゃないかな?
急いでついて行って建物に入ると、想像とは違う建物の内装が目に付いた。ギルドって、なんだか荒くれ者たちが酒を片手にわいわいやっているものだと勝手に想像していたけれど、調度の良さそうな棚だったり、上品な布張りの椅子だったりが目について、意外さに目を丸くする。
「あぁ?見かけねぇ顔だなガキ。迷子か?」
「わわっ!?」
ぼうっとしていると、先ほど見かけた怖そうな眼帯の人が、カウンターからこちらを見ていた。うーん、怪しい店だったんだろうか。勇気を出して、話しかけてみることにする。
「あの、僕ギルドを探してるんですけど……」
「あぁ、ならここで合ってるぜ。ようこそ、冒険者ギルドへ。……だが、まさかお前さんみたいな小僧が登録する気か?」
「えっと、一応僕17歳なんですけど……職はパラディンです」
「……12歳くらいかと思ったぜ」
え、えぇー。いやまあ確かに小柄だけどさ!
と、とりあえず気を取り直して、冒険者として登録をした。キッド、15歳、パラディン、特技は味方をかばうこと、っと。
台帳に記載しておじさんに渡すと、ぶっと吹き出した。何がおかしい。
「お前小柄なんだから、肉壁の需要あるのか?」
「耐久力には自信があります!」
「くっくっく、そうかそうか。まぁせいぜい頑張れ。死ぬなよ」
最後だけ真剣にそう言うおじさん。少し神妙な空気に首を傾げたくなるけど、寸前で堪えて僕も真剣にうなづいてみせた。満足げに鼻を鳴らしたおじさんは、建物の奥におーいと声をかける。
「お前みたいに世界樹の迷宮を求めてこの地にやってくる奴は多い。が、あまりにも危険すぎてな。一人じゃいくつ命があっても足りんから、ギルドっていう言わばグループを冒険者たちは作ってる」
「え?ギルドってここのことじゃないんですか?」
「便宜上そう呼んでるが、本来ギルドってのは冒険者の集まりを指す。だからここでは、台帳で数あるギルドの管理をしてるんだよ。もっとも、最近じゃ小金稼ぎの為に浅いとこでチマチマやって満足してるやつらばっかりだが、な」
そんな風に話していると、ひとりの女性が奥から歩み寄ってくるのを見た。剣を腰に下げていて、背中には斧を担いでいるから、たぶんソードマンの人なんじゃないかな?
僕とは違ってスラっとした身長の高い美人さん。煌く金髪をポニーテールにしていて、冷然とした顔立ちと相まってどこかの絵画のようだ。くっきりとした目鼻立ちと無表情が、割と威圧感を出している。身体は全体的に細身で、見るからにスピードを活かしたタイプの剣士なんだな、と感じた。
……が、でかい。何がって、身長が。奥から歩いてきたときは分からなかったけど、この人僕の頭一つ分は大きい!
「おう、マチルダ。こいつはキッド、お前の探してた新人第一号だ。こんなナリでパラディンだとよ」
「……そうか、私はマチルダ。ソードマンで、君と同じく今日この街に来たものだ。よろしくな」
淡々と述べ、握手を求めてくるマチルダさん。握った手は、ソードマンとは思えないほどに柔らかくて、細い指をしていた。慣れない感覚に思わず、頬を染めてしまうが、気を取り直しておじさんの方を向いた。
「坊主、このマチルダは新しくギルドを立ち上げるために仲間を探してるんだ。お前でちょうど3人目だったかな?」
「そうだな。もうひとり、メディックの娘が居るが、後々紹介しよう」
「ってことだ。この街にある古参のギルドは新人の受付をやってねぇ。それも、浅い層にしか潜らねぇ腰抜けばかりだ。だからお前らには期待してるんだぜ?」
な、なるほど。とりあえず、早くも仲間が2人できたことは分かった。ここから、僕の冒険が始まるわけだな!
「さて、キッドと言ったか?もう1人は今、薬の買い付けに行っている。君は私と共にこの街の執政院に行くぞ」
「あ、はい!」
サッサと冒険者ギルドから出て行ってしまうマチルダさんを追う前に、おじさんに向き直って礼をし、僕も建物を出て行った。
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「くくっ、有望そうなギルドができたじゃねぇか」
このエトリアの街のギルドマスターは、出て行った少年少女を思い、言葉を漏らす。マチルダが台帳に残していったギルドの名前。これが、今後迷宮の探索において多くの栄誉をもたらすことを願う。
まだまだ弱小のギルドでしかないが、すぐに力をつけていくだろう。高い戦闘力を持つソードマン。数年前に話題になった天才医師の娘。そして……。
「あの坊主、黒髪にパラディンってことはヤツの……」
ふと、懐かしさに目を細めたギルドマスターだったが、頭を振ってカウンターに向き直る。と、同時に扉が開け放たれた。外の空気が前髪を揺らすのを感じながら、ギルドマスターは口を開いた。
「よう、ここは冒険者ギルドだ。今日はどんな要件だ?」
はじめまして。
世界樹の迷宮の二次ないなぁと思って作りました。
完全にテンションに任せて書いたので、駄文注意ですすいません。
2話目も近いうちに投稿します。