悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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第百十話【緊急会議】

光の国の中枢、宇宙警備隊本部。

普段なら一般市民を含め大勢の人々が飛び交っているのだが、現在は周辺が閉鎖されて隊員らが目を光らせている。

外観からは分からないが、本部内は常に無い喧噪に包まれ、多くの隊員が浮足立っていた。

 

「状況は?」

『敵落下時、並びに戦闘の余波で数棟のビルに被害!!』

『現在は銀十字軍部隊が、現場で軽傷者の治療に当たっています!!』

『重傷者はウルトラクリニック78へと運ばれ治療を受けています!!』

『今のところ、死亡者は確認されていません!!』

「ふむ……」

 

本部最上階に位置する執務室で、ゾフィーは複数の隊員から届く通信へと耳を傾ける。

その顔は、普段の穏やかさが嘘かのように、険しい物だ。

 

「報告は承知した、私はこれからウルトラの父主催の緊急会議に参加し、今後の方針を決める。それまでは各現場責任者に指揮権限を付与する」

『了解!!』

「判断は現場に任せる、責任は私が持つから最適と思う行動を取ってくれ」

『了解!!』

 

通信を切ると、ゾフィーは重々しく溜息を吐く。

現場からの報告によれば、襲撃して来たのは宇宙船一隻、そしてその内部から現れた三体のロボット、それも……

 

「ウルトラマンゼロに酷似したロボット、か……」

 

ゾフィーの脳裏に過るのは、ゼロから報告された異世界での事件の事だ。

報告に有ったゼロに酷似したロボット――ダークロプスゼロと、今回光の国を襲撃したロボットは特徴が一致している。

という事はつまり……

 

「ゾフィー」

「うおっ!?」

 

自分しかいなかった筈の執務室内に突如として聞こえた他者の声に、ゾフィーは思わず驚き、間の抜けた声を出す。

顔を上げれば、そこには自分の友人にして、光の国有数の天才科学者でもある青い男の姿が有った。

 

「ノックぐらいして欲しいな、ヒカリ」

「ノックはしたさ、返事をしなかったお前が悪い」

 

「急ぎの用だと言ったのはお前だぞ」と言って不機嫌そうにタブレットを渡して来る青い男――ウルトラマンヒカリに、ゾフィーは「すまない」と謝罪し、同時にここまで他者の接近に気付かなかった自分の鈍感さを反省する。

ヒカリ率いる科学技術局の精鋭達に、早急な敵の残骸解析を依頼したのはゾフィー自身だった。

一つでも、敵の正体に迫れる物が有れば、と考えていたのだが……

 

「今、私達の技術で分かるのはこれぐらいだ」

「ありがとう、急な仕事を任せてしまってすまない」

「緊急事態だ、私にやれる事なら何でもやるさ」

 

データに一通り目を通したゾフィーはヒカリに礼を言い、会議に参加するべく執務室を後にするのであった。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

「遅れてしまってすまない」

 

ゾフィーが会議室に到着した頃には、ウルトラの父を筆頭とした宇宙警備隊の精鋭や、銀十字軍の筆頭であるウルトラの母、王室の代表として来たであろうユリアンといった、主要な人物は既に集まっていた。

その為に、一番最後に入室したゾフィーはこの場に居た一同に一言謝罪をするが、ウルトラの父は「こちらこそ、忙しいところをすまない」と謝罪を返す。

しかし、その目はゾフィーに向けられておらず、会議室の中央に鎮座するカプセルへと注がれていた。

 

「ウルトラマンヒカリの解析によると、この緑の鉱石は我々の宇宙には存在しない物質だ……途轍もないエネルギーを感じる」

 

ウルトラの父と、そしてこの場に居る一同と同様に、ヒカリからの調査報告を伝えるゾフィーの視線も、カプセルの中へと注がれる。

 

カプセルの中に有るのは、金属製の台座のような装置の中央に、緑色に光る鉱石が嵌め込まれた物体。

この物体は、先程ウルトラマンゼロとウルトラセブンが撃破したロボット――ダークロプスの残骸から取り出されたパーツだった。

ゾフィーが直接見るのは初めてだったが、漏れ出す強烈なエネルギーのせいか、全身の神経を逆撫でするかのような不快感を感じていた。

 

「この鉱石に取り付けられた台座のような装置は、それをマイナスエネルギーへと変換し、何処かへと送信している」

 

一歩前に出たウルトラマン80が、そう解説しながらカプセル内の物質へと手を翳す。

しばし集中した80が手をどけるとマイナスエネルギーが可視化され、それが赤黒い線として何処かへと伸びている事が分かった。

その線は遥か彼方まで伸びており、先端を肉眼で見る事は叶わない。

 

だが、その行先もまた、ヒカリの解析によって、すでに大まかな事は分かっている。

 

「このマイナスエネルギーは『別の宇宙へと向かって送信されている』という事が判明した」

 

ゾフィーの一言に、会議室が俄かに騒めく。

 

『平行宇宙』 

 

その存在はいまだに解明出来ていない謎に包まれている。

他星の文明の中には「実際に観測した」という話も噂程度で流れてきたりもするが、大抵は曖昧な立場で濁すばかりだ。

何せ、一つの宇宙に存在する資源に限りがある以上、別宇宙に転移する技術は惑星間関係のゲームチェンジャーとなる可能性が高い。

その為に多くの文明が、強力なカードとして隠し持つという状態が、長年に渡って続いていた。

 

「別の宇宙?」

「誰の仕業だ?」

「何故光の国を?」

 

困惑するウルトラマン、ウルトラマンジャック、ウルトラマンエース、いや、この三人だけではない、周囲に集まった面々は誰もが困惑していた。

予想だにしない別宇宙からの敵対的来訪者、そして、ウルトラマンゼロとソックリのロボット兵器。

 

誰がこんな事をしたのか?誰がこんな物を作ったのか?

 

何もかもが不明で、困惑と共に騒めきが伝搬していく……数少ない例外を除いて。

 

「俺に心当たりがある」

 

良く通る声が響くと共に、その場に居た全員が沈黙し、その声を発した主を凝視する。

モーセの如く割れる人波の間を、一人のウルトラ戦士が通り、前へと出て来た。

 

「ゼロ……」

 

その場に居たウルトラ兄弟の一人、ウルトラセブンが、無意識に出たのであろう固く掠れた声で、そのウルトラ戦士の名を呼ぶ。

隠してはいるものの、どこか不安気にも見えるその視線を受けて、ウルトラマンゼロはその不安を払しょくするかのように、セブンと視線を合わせて不敵な笑みを浮かべる。

 

「俺が行く、いや、俺が行かなきゃならねぇと思う、その『別の宇宙』へ」

 

ゼロの発言に、その場が再び沈黙に包まれる。

確かにゼロはウルトラマンベリアルを倒した実績を持ち、実力に関しては折り紙付きだ。

 

が、まだ年齢的には未成年なのである。

未来有る若者に、このような高リスクの任務を任せて良いのだろうか。

 

それに、平行宇宙への旅には、それ自体に高いハードルが有る。

 

「別の宇宙への旅となると……」

「光の国の全エネルギーを集めても、送り込めるのはおそらく一人」

 

そう、宇宙間の壁を超えるには、莫大なエネルギーが必要なのだ。

宇宙でも最高峰の技術を誇る、今の光の国の技術をもってしても、一人を送り出すのが限界なのである。

その為に、今まで調査は見送られて来たのだが、今は光の国の緊急事態である。

別宇宙の侵略者が、この国を狙っているのかもしれないのだ。

 

「この調査はゼロに任せよう、それが運命かもしれん」

 

しばし悩んだ末、ウルトラの父が重々しい声で決断を伝える。

今ここに、光の国史上初の平行宇宙探索任務が始まろうとしていた。

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