悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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一応、当小説はウルトラシリーズを未視聴の人にも楽しんでいただけるように、

【オリキャラ&オリジナル展開を含めて執筆したノベライズ版ベリアル銀河帝国】

として執筆しております。

なので原作通りの展開の部分も手を抜かずに情景を描き、
時にはオリジナルの台詞や、「この場面ではこうだったであろう」という登場人物の心情も含めて、分かりやすく読めるように書いていく予定です。


第百十一話【未踏の旅路へ】

光の国の襲撃事件から数日後。

 

「いよいよ今日か……」

 

プラズマスパークタワーの袂から晴れ渡る空を見上げ、ウルトラマンゼロはこれからの遠大な旅路を思う。

思えば一年も経っていないのに、いつも心の中で孤独と退屈を孕んでいた日々が遠い昔の事のように感じる。

プラズマスパークの強奪未遂、ウルトラマンベリアルとの死闘、そして……

 

「ゼロ」

 

呼びかけて来る声に顔を向ければ、そこには鋭くも温かみの有る視線を向けて来る父――ウルトラセブンの姿が有った。

自分が【ウルトラセブンの息子】という事実を知ったのも、ベリアルとの戦いの中での事だったなと思いながら、ゼロはセブンと視線を合わせる。

 

「親父」

「これを持って行け」

 

ぶっきら棒だが、気遣うような優しい声音で、セブンはブラザーズマントの中から【ある物】を取り出してゼロに渡す。

それは棒状の武器のようであったが、ゼロが手首にソッと翳した瞬間、眩い光と共に溶けるようにゼロの腕を一周し、光が収まった頃には大粒の宝石が三つ嵌め込まれた立派なブレスレットとなっていた。

 

一見、華美にも見えるブレスレットだが、単なる装飾品ではないのだろう。

現にゼロは、その宝石の一粒一粒から溢れ出す光エネルギーを肌で感じ取っていた。

 

「そのブレスレットには、特別なプラズマスパークエネルギーが込められている、帰る時の道しるべとなるだろう、予備エネルギーとして使う事も出来る」

「フフッ……親父は心配性だな」

 

何事も無く装着されたのを確認し、セブンは道具――【ウルトラゼロブレスレット】の事を、簡潔にだがゼロへと説明する。

それに対してゼロは茶化すかのように返すが、セブンは至って真剣だ。

『黙って聞け』とでも言いたげな無言の圧力に、ゼロは思わず押し黙った。

 

「……だが、使えるのは三回だけだ」

「三回か……充分だぜ」

「ブレスレットを使った事は、あのプラズマシンクロ装置を通じて我々も知る事が出来る」

 

背後のタワーを見上げるセブンの視線を追い、ゼロも視線を上へと向ける。

その視線の先には、建物入り口の真上に有る(ひさし)部分に嵌め込まれた、ウルトラゼロブレスレットと同じ意匠の三つの宝石が輝いていた。

 

「忘れるな、私も皆も、いつでもお前の事を思っている……お前は、一人じゃない」

「ああ!!」

 

セブンの言葉を聞き、ゼロの胸に言葉にならない温もりがこみ上げるのを感じる。

 

きっと先程までは無意識に不安を感じていたのだろう。何せ前人未到の任務、帰って来れるかも分からない。

それでも、セブンからの言葉には温かみと共に、自分への絶対の信頼を感じる事が出来た。

充分だ、それだけで充分なのだ。それだけで自分は、無数の敵を屠り、無限の旅からも帰る事が出来る。

 

「じゃあ行って来る!!」

 

ゼロの快活な言葉に、セブンは一つ頷く。

そして数秒、名残惜し気に見つめ合った後に、ゼロは空へと飛び立った。

 

「シェアッ!!」

 

カプセルに包み込まれたダークロプスのパーツを抱え上げると、ゼロは空中で静止してその時を待つ。

全ての準備が完了したのを確認し、ウルトラの父が声を張り上げた。

 

「ウルトラマンゼロに、我らの光を!!」

 

号令と同時に、その場に居たウルトラ戦士達がウルトラマンゼロへと手を翳す。

いや、それだけではない。光の国の全国民が、空へと、ウルトラマンゼロへと手を翳す。

すると一人一人の掌から、暖かな光が溢れ出した。

その光は黄金の大河となって、空中でホバリングを続けるウルトラマンゼロの身へと収束していく。

 

「っ!!」

 

収束した光が、赤い光球となってゼロの身を包んだ直後、

ゼロの体は猛烈な勢いで打ち上げられるかのように、あっという間に光の国の地表から離れて行った。

 

宇宙空間へと飛び出したゼロは、音速を超え、光速を超え、ただひたすらに直進して行く。

星を越え、銀河を越え、銀河群を越え、銀河団を越え、銀河フィラメントを越え、ボイドを縫うように。

やがて、その体は宇宙の膨張速度すら凌駕する超速度へと到達した。だが……

 

「!?」

 

一直線に飛行していたゼロの体に、突如として凄まじい抵抗が圧し掛かる。

まるで、水の中へと飛び込んだ時のような。

しかしそれでも、ゼロは抵抗に逆らうように、自分の体を前へ前へと飛行させていった。

 

そして……

 

≪ドォンッ!!≫

 

ゼロの体に衝撃が走ると共に、体に掛かっていた抵抗が嘘のように軽くなった。

そこで一旦、ゼロは進むのを止めて周囲を見渡す。

 

広大な、果ての無い超空間に、泡の如く浮かぶ物体。

その物体の一つ一つの中に、無数の銀河が内包されているのが見える。

ゼロはその光景を見て、出発前に受けたウルトラマンヒカリからの説明を思い出した。

 

「これが、平行宇宙(マルチバース)なのか」

 

光の戦士は、遍く生命の救済の為に広大な宇宙を駆け巡る。

宇宙警備隊の一員として日々の任務に従事する中で、ゼロ自身もウルトラ族の強靭な肉体を持ってしても弄ばれるような、宇宙の広大さを身をもって思い知らされた。

灼熱の星に極寒の星、極光に包まれた銀河に暗黒に染まった超空洞、光や時さえも飲み込まれる超重力の惑星も有った。

 

しかしそれでも、今ゼロ自身が目にしている圧倒的な光景からしてみれば、自分の宇宙で起こった激しい自然現象ですら、遥か小さい事のように思えた。

 

≪ピカッ!!≫

 

呆然とその光景を眺めていたゼロの視界の端で、ウルトラゼロブレスレットが光を放つ。

その異変にハッとしたゼロが、ブレスレットを嵌めた腕を見える位置にまで持ち上げた瞬間、ブレスレットから光が放たれた。

光は一直線に伸びて行き、やがてゼロが元居た宇宙を指す。

 

――帰る時の道しるべとなるだろう――

 

「全てが終わったら絶対に光の国へ帰る。だから待っててくれ、親父」

 

セブンの言葉を思い出しながら一人呟いたゼロは、今度はダークロプスのパーツへと視線を移す。

すると特殊なカプセルにより可視化されたマイナスエネルギーが、別の宇宙へと突き刺さっているのが見えた。

 

「あれだな」

 

行先を確認したゼロは、再び猛然と宇宙を飛び始めた。

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