漆黒の宇宙に、複数の閃光が走る。
その一つ一つが気高き戦士の末路であり、その命の灯だ。
《グルゥァァァァァッ!!》
成すすべなく沈み、瓦礫と化して行く宇宙戦艦達。
周囲で繰り広げられる悲惨な光景を、雄叫びと共に嘲る一体の怪獣が、今再び一隻の戦艦を口から吐きだす業火に包み込んだ。
「レジスタンスの制圧は予定通り、か」
数十光年先の宇宙で凄惨なる悲劇を繰り広げる怪獣――ザウラーの様子を、安全地帯に有るニュークシアの研究所でモニター越しに眺めつつ、俺はゆったりと寛ぎながら手元にあるウランガラス製のティーカップに注がれたウバ茶を堪能した。
仄かな薔薇のような芳香と、春風のような爽やかさを感じさせる芳香が、ハーモニーを奏でて鼻孔を擽る。
「ザウラーの方も銀河帝国の幹部としてベリアル様付きになったし、これでやっと肩の荷が下りたって感じだな」
本来なら、エスメラルダ主力艦隊殲滅後、本星攻略に一役買って貰う事でベリアル様にアピールし、そこから幹部へと就任させる事を狙ったが、
主力艦隊は俺自身が処断するハメになったせいで活躍は限定的に終わったし、本星攻略の方もゴルバでワープした際に酔ってグロッキーな状態となってしまい、それも叶わなかった。
そこで俺は、ザウラーにレジスタンスの殲滅を積極的にやらせる事で、ベリアル様から『ザウラーの帝国幹部就任』の許しを得る作戦にシフトしたのである。
そして積極的にちょこちょこザウラーに任務を振った結果、ようやくザウラーの幹部就任が認められたのだ。
「後はウルトラマンゼロがいつやって来るかだな」
ザウラーの一件が片付き、心に余裕が出来た俺は、最重要案件であるウルトラマンゼロの動向に思いを馳せる。
ダークロプスによる光の国襲撃イベントが起きた以上、もう間も無く此方の宇宙へとやって来るはずだが。
『ご主人様、緊急の要件デス』
「何だ?アナライザー」
考えていた俺の元に、アナライザーがやって来る。
【緊急の要件】という事は、まさか……
『センサーが次元境界面の揺ラギを検知、何者カガこの次元に侵入シタ模様です』
「とうとう来たか!!」
『……ご主人様?』
待ちに待った来客――ウルトラマンゼロの到来に、俺は思わず座っていた椅子から身を乗り出し、背後で椅子が倒れる音を無視して喜色満面で立ち上がる。
そんな俺の様子を、アナライザーはどこか怪訝な様子で見ているが、そんな事は知ったこっちゃない。
本当に、これ程の歓喜を感じたのは何年ぶりの事だろうか?
これで俺の計画も最終段階に入ったという事だ。
「で?その侵入者の動向は掴んでいるのか?」
『今現在、ブレインスキャン装置で検索中デスが、脳波の波形ヲ照合シタ結果、侵入者はウルトラマンゼロの可能性が高いカト思われマス』
「よし、そのまま動向を逐一把握して、俺に伝え……」
≪ドォォンッ!!≫
そのまま、アナライザーにゼロを追うよう指示を出そうとした時だった。
突如として基地内に爆発音が響く。
俺は驚いて尻餅を突きそうになるが、幸いにもメイドロボットが椅子を直していてくれた事により、ドサリと座る形で落ち着く。
「なっ、何事だ!?」
―――――――――――――――
「チッ」と舌打ちをしながら、ゼロはブンブンと頭を横に振る。
目的地である平行宇宙を見つけて突入し、無数の銀河が散らばる光景を目の当たりにしたゼロを真っ先に襲ったのは、頭に走った疼痛であった。
ズキズキと、まるで頭を圧迫されているかのような不快感に、ゼロは平行宇宙特有の自然現象か何かだと思ったのだが、
しばらくしてこの疼痛に周期がある事に気付き、どうやら人工的に発信された何らかのエネルギーによるものだと当たりを付けた。そして……
「デリャッ!!」
掛け声と共に、そのエネルギーを発していると思われる方向へ最大出力の念力を放つ。
そしてそれから数秒の後、まるでスイッチを切るかの如く、先程までの不快感がプツリと途切れる。
「どうやら、この宇宙に『何か』がある事は確からしいな」
謎のエネルギーが止んだことを確認したゼロは不敵な笑みを浮かべ、光の国を襲撃した敵の正体を探るべく平行宇宙での行動を開始した。
―――――――――――――――
「あ~クソッ」
俺は開け放たれた扉からとある部屋の内部を見て、思わず口から毒を漏らす。
中に有るのはあちこちから火花を散らし、配線はむき出しになり、白煙を上げる【機械だったモノ】――ブレインスキャン装置の無惨な残骸だった。
『辛うジテ残っテイたログによレバ、装置に対しテ瞬時に高負荷が掛かっタ為に破損シタ模様』
アナライザーからの報告を聞いた俺は、改めて自分の考えの甘さに臍を噛んだ。
ウルトラ族はテレパシーを使用する分、こういった装置のエネルギーには敏感な筈だ。
その上、ウルトラマンゼロはウルトラセブンの息子であり、二枚のスラッガーを己が身の如く自由自在に飛ばせる程の強力なウルトラ念力の使い手だ。
感応能力もずば抜けて高いだろう事は予想が付く。
少し考えればブレインスキャン装置との相性は最悪だという事が分かったはずだ。
『修理ニハかなりの時間が掛かりマスが……』
「いや、もう良い、ブレインスキャン装置は廃棄する」
『ヨロシイのですカ?レジスタンスの動向ヲ知る事が出来なくナリますよ?』
破損したブレインスキャン装置を修理する事無く廃棄する指示を出すと、アナライザーが戸惑ったように俺へと指示の再確認をして来る。
まあそうなるだろうな、アナライザーの言う事は最もだ。
これまではこの装置によってレジスタンスの様々な動きを把握、時には妨害し、時には利用する事によって都合よく合理的に事を進める事が出来たのだ。
そういった事実を勘案すれば、普通だったらかなりの痛手だ。
普通だったら、な。
だが、俺にはベリアル銀河帝国本編の記憶が有り、すでにシナリオは動き出している事を把握している。
その上、俺が介入した事により多少の改変は有ったものの、全体のおおまかな流れは変わっていない。
そう考えると、この後はおおむね本編軸のシナリオで事は進むだろうと推測していた。
「ひとまず、ゼロの動向を探るのは『奴』に任せる事としよう」
こんな事もあろうかと、実は既に『ある人物』を先回りして送り込んであるのだ。
懐から小型の通信機器を取り出した俺は、その画面を操作して『ある人物』の名前を表示させる。
そして意気揚々と発信ボタンを押すのであった。