悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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第百十四話【機械と肉体と】

通信機の通話ボタンを押した俺は、それをポイと前方へ放る。

放物線を描いて2メートルほど飛んで行った通信機は、そのまま床へと接触するかと思われたものの、物理法則に逆らう様に空中でピタリと停止する。

そして数度、瞬くように輝いた後、その光は空中で像を結び、一人の人物を形作った。

 

「壮健かな?ダークロプスゼロ、いや、今はゼクダス・ロプローと呼んだ方が良いかな?」

『ええ、体調に変わりはありません、それと呼び方はそちらのお好きに、マスター』

 

俺は空中に浮かぶホログラフィックディスプレイに表示されているゼクダス――人間の体を手に入れたダークロプスゼロへと向かって語り掛ける。

 

かつて己が身を犠牲にして俺達を助ける代わりに、ダークロプスゼロと約束した【命の保証】

その結果が、今俺と通信している『ゼクダス・ロプロ―』という一人の人間(生命体)だ。

 

作戦を全うして消える間際、コスモリバースシステムを作動して保護したダークロプスゼロ。

 

助けた理由は外野からの「助けろ」コールが煩かったという理由も有るのだが、

限り有る命の尊さや素晴らしさを知り、死の恐怖を抱えながらも任務を全うしてくれた恩に報いる為に、俺自身も一つの決断をした。

 

彼に人の温もりを与えよう、と。

 

帰還後、ベリアル様を完全復活させた後に、残ったベリアル様のデータを基に造り上げた肉体。

そこに復元したダークロプスゼロの意識をインストールし、誕生したのがゼクダスという訳だ。

 

「まあ、少々誤算は有ったがな……」

『何か有ったのですか?』

「すまない、独り言だ」

 

おっと、思わず独り言を口走ってしまったな。

口をつぐんだ俺は、改めて目の前に表示されたゼクダスの顔を見た。

その顔は、紛れも無く俳優の濱田○臣そのものである。

 

何故こんな事になったのか、考えるまでも無い。

ゼクダスの肉体は、ベリアル様のデータを基に造った『ウルトラマンベリアルのクローン』であり、つまりは『ウルトラマンジードとほぼ同じ存在』なのである。

同じ遺伝子の存在なのだから、同じ顔になるのは当たり前の事だ。

 

そのせいでアヌーへと送り出す際、ナオ(子役時代の濱○龍臣)との邂逅に関して懸念が有ったのも事実ではあるが、

年齢が離れていた事も有り、その心配は杞憂に終わった。

 

むしろ今ではナオやランとは兄弟同然の仲になってるし、キャラバン隊の中では年齢的にもかなり若手な事も有り、コミュニティ内で割と可愛がられている。

学習させた機械関連の知識も、かなり役立てているようだ。

『ぶっちゃけ、俺よりもコミュ力が高いのでは?』と思ったのは内緒である。

 

「どちらでも構わないというのなら、ゼクダス呼びで行こうかな?今の姿でダークロプスと言っても無理が有るだろうしね」

 

俺がそう返すと、心なしかゼクダスの表情が変わったように見えた。

どこか悲しそうで、どこか嬉しくも思える、何とも言えない複雑な感情を内包した表情。

 

一体どうしたのだろうか?そんな俺の疑問に答えるように、ゼクダスが口を開く。

 

『今の俺は機械の体じゃない、だから新しい存在として生きていきたいと思っています』

「過去との決別、という訳か?」

『いや、機械の体だった過去の俺も俺である事には変わりは有りません、でも今は機械には無い痛みと死が身近に有る肉体です』

「つまりは過去を受け入れた上で、ゼクダス・ロプローという存在としても受け入れて欲しいと」

 

ふむ、何だか実にナイーブというか何というか……これも機械から人間の体になったせいなのか?

ある意味、銀河鉄道999の機械化人と反対のパターンだな。

 

まあ良い傾向ではあると思う、ギルバリスへ対抗する為のサンプルとして、AIの感情の進化は俺が望んでいた事だ。

今では人間になってしまったとはいえ、ゼクダスの成長は貴重なサンプルになる。

 

「分かった。ゼクダスという存在を受け入れた上で、ダークロプスゼロという歴史も忘れないでおこう」

『ありがとうございます』

「なに、君は我が息子も同然だ。気にする事は無いよ」

 

口元を薄らと綻ばせ、礼を述べるゼクダス。

その口調は僅かにだが、明るくなったように思う。

ふむ、良い傾向良い傾向。

 

「引き続き、バラージの盾の調査を頼む」

 

原作の記憶が有る俺にはゼロのアヌー来訪の事も事も分かるが、普通ならそんな予測は不可能だ。

馬鹿正直に「いつか分からないけどウルトラマンゼロが来るからそれまで待機」なんて言えない。

 

なのでゼクダスをアヌーへ派遣させる為の表向きの理由として『バラージの盾の伝説を追え』という命令を与えたのだ。

別に完全な出鱈目ではないから良いだろう、実際に原作ではランが手掛かりとなるペンダントを持っているのだから。

 

『了解』

「それと、本次元へのウルトラマンゼロの来訪を観測した」

 

まあそれはそれとして、ゼロがこの次元に来たという事は伝えておく事にする。

偽物として作られた自分のオリジナルだ、やはり思うところが有るんだろう。

若干ではあるが、ゼクダスの顔が強張ったように見える。

 

「ひょっとしたらバラージの盾へ接触するかもしれない、留意しておいてくれ」

『了解』

「それ以外はまあ、自由にしていたまえ、別に行動の制限をしようとは思わない」

『待って下さい!!』

 

そう言い残して通信を切ろうとした俺を、少し慌てた様子のゼクダスが止める。

一体何なんだ?まだ何か有るというのか?

 

「何か有ったかね?」

 

終了ボタンを押そうとした指を引っ込めた俺は、ゼクダスの目を見据える。

どこか戸惑うような、何かを堪えるようなモジモジとした様子を見せるゼクダス。

本当に一体何なんだ?

 

『もしも、もしもの話ですが……』

「うん?」

『バラージの盾の手掛かりを持っていると思われる人物が居た場合、どうすれば良いですか?』

 

なるほど、ランのペンダントの存在に気付いたようだな。

ゼクダスの言葉からその事を悟った俺は、しばし考える。

このまま監視を続けるという選択肢が一番無難だが、さて……

 

「まさか誰かが手掛かりを持っていると?」

『いえ、そういう訳では……』

 

まだ情緒が発展途上だからなのか、ウソを吐くのが下手だな。

いつもの冷静さは何処へやら、左右へと揺れるゼクダスの瞳を見て、俺は再び考える。

 

感情の揺らぎもまた、成長に必要な要素ではある。

ここはより成長を促すような命令を与えるべきか……

 

「ふうむ……」

 

少々意地悪な選択肢ではあるが、こうするか。

コレもゼクダスの成長の為、心を鬼にしよう。

 

俺はゼクダスへ向けて、ある指示を出す。

 

「手掛かりを見つけた場合は、多少手荒な事をしても構わない」

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