という訳で、記念と言ってはなんですが、次回の更新では今後の本作がどうなるのかをおおまかに示す予告編を載せたいと思っております。
お楽しみに。
『通信を終了します』
「ああ、良い情報を期待しているよ」
通信を切るとホログラムが揺らぎ、心なしか険しい表情となったゼクダスの姿が消える。
まるで巻き戻るかのように、此方へと向かって放物線を描きながら戻って来た通信機を手に取った。
と、背後から感じるジトっとした視線。
『少々、趣味ガ悪いのデハ?』
「お前も言うようになったな、アナライザー」
アナライザーから発せられた軽口を流しつつ、通信機をポケットへとしまう。
きっと今の俺の顔を鏡で見たら、ニヤついた嫌らしい表情をしている事だろう。
「全てはゼクダスの選択次第だ、俺の言う通りバラージの盾の欠片を奪うか、それとも嘘を吐いて彼らを庇うか」
『AIを成長サセる実験の一環という訳デスか』
「それも有るが、単純にどんな結果になるかも気になっている」
『……愛や情という非合理な感情を観察出来るト?』
非合理な感情、か。
まあAIからすれば、人間なんて非合理の塊にしか見えないんだろうな。
見返りを求めぬ無償の愛、瞬きのように鮮烈な歓喜、己が破滅を厭わぬ憎悪……
人間の感情というのはままならない物である。
しかし、そこから生まれるエネルギーは莫大だ。
時には死をも覆し、時には絶対の破滅を生む事も有るぐらいに。
だからこそ……
「その非合理な感情が、ギルバリスへ対抗する一助となるだろう」
『奴に対抗スルには感情が必要ダトお考えで?』
「そうだ、奴は高度なAIを持つとはいえ所詮は旧型、人の感情を学び反映する事が出来るお前達とは何もかも違う」
ギルバリスの対抗手段はいくつか考えてはいた。
勿論、無難な案は原作通りにジードのウルティメイトファイナルによる殲滅なのだが、自分が介入している以上、原作改変の余波がそこにまで及びかねない。
既に原作ではアイルしか生き残っていなかった所を、数千人の単位で生存者を救い出したのだ。今後もバタフライエフェクトが起こる可能性も十分に有る。
考えたくも無いが、場合によっては『ウルトラマンジードが敗北する未来』もあり得るのだ。
「奴のハッキングを防ぐにはココロで対抗するしかない、意思の無い機械はギルバリスの操り人形になるだけだ」
背後を振り返ると、今まで会話をしていたアナライザーの横に、大き目のピッチャーとオーシャンブルーの江戸切子のタンブラーグラスを乗せたワゴンを押したメイドロボが立っていた。
そういえば、そろそろお茶の時間にしようと頼んでいたんだったな。
表面に結露が滴るピッチャーの中には並々と満たされた黄金色の液体が……そう、たまには冷たい物を飲みたい気分という事で、今日はアイスティーである。
茶葉はセイロンティーの一種であるティンブラで、淹れ方は一時期ネットでも話題になった『フランス人マダム式』である。
「ああ、ありがとう」
礼を言って立ち上がり、俺はピッチャーに満たされたアイスティーをタンブラーグラスに注いでいく。
液体を入れていく毎にグラスは冷えていき、薄らと結露が現れる。
「よく冷えているな」
アイスティーを口に含むと、冷たい液体が食堂へと流れて行き、鼻腔を爽やかな香りが抜け、口内を程良い渋みが広がる。
遅れてやって来る脳内を柔らかく射すような冷たい刺激を楽しみつつ、俺はアイスティーの味を楽しむ。
が、冷却されたせいなのか、脳が冴えた事である疑念が脳裏を過った。
“何か”を忘れているような……
《ピピッ》
そんな疑念を感じながらもアイスティーの味を楽しんでいると、電子音と共にアナライザーが首をグルリと回す。
何かの情報がアナライザーへと届いたのだろうか?
通信をしている様子のアナライザーへと視線をやりながら、また紅茶を口に運ぶ。
そんな俺へ、アナライザーは不意に“ある報告”をしてきた。
『銀河帝国軍ノ小隊が、惑星アヌーへの侵攻を開始しまシタ』
《ブーッ!!》
俺は思わず紅茶を吹き出し、思い切り「ゲホゲホ」と噎せてしまった。
ヤバい、すっかり忘れてたわ。
―――――――――――――――
あちこちで響く爆発音
空を埋める
降下して来る
今、惑星アヌーに悪魔の毒牙が突き刺さろうとしていた。
「全員避難しろ!!」
「走れ!!こっちだ!!」
「機材は捨てろ!!命あっての物種だ!!」
開拓キャラバンの主要メンバーらが、住人の避難誘導を試みる。
しかし、露天掘り鉱山内では50メートルを優に超えるレギオノイドに有効な遮蔽物は無く、ただ必死に走り回るしかない。
通信で救助を呼ぼうにも、ベリアル軍による電波妨害で通信不良が起きており、その叫びは全く外部へと届かなかった。
「婆ちゃん、急いで逃げるんだ」
自分の育ての親である祖母へ、ランは一刻も早く非難するように促す。
このままでは開拓キャラバンは全滅してしまう。
そうなる前に、対処する必要が有る。
「アヌー警備隊出動だね」
「よぉしっ!!」
気合を入れるようにクロスタッチをし、ランとナオは駆け出した。
目的地は重機の格納庫、その奥に有る一角である。
「待て!!」
一層大きなショベルカーの横を抜けた瞬間、一人の人物が立ちはだかった。
咄嗟に足を止めたランとナオは、不満げに自分達を止めた人物を睨む。
「どいてくれ!!このままじゃキャラバンの皆が……」
「だからと言って無茶して良い理由にはならない、今お前達がやろうとしているのは自殺行為だ」
ランとナオの前に立ちはだかる人物――ゼクダスは、ランの言葉に反論して首を横に振る。
「でも、俺達がやらないと!!」
「こんなポンコツで、何が出来るというんだ」
ナオの言葉にも反論しつつ、ゼクダスは背後に鎮座する砂埃で薄汚れた地表艇を顎で指す。
【ホバー式地表艇ハスキー】それがこの乗り物の名前である。
道路等が整備されていないアヌーの移動は、主にこういう地表艇が担っていた。
その地表艇に360度旋回可能な砲塔と連射可能なビーム砲を取り付けたのがコレだ。
素早く移動は可能なものの、装甲は無に等しい上にレギオノイドに対抗するにはビーム砲の威力が弱く、牽制にすらならない。
更に旧式である為か、かなりのオンボロだ。宇宙を駆ける戦艦とは比べ物にならない。
「それでも、俺達がやらなきゃならないんだ!!」
「少しでも皆を助ける為に、だからお願い!!」
必死な様子を見たゼクダスは、しばし二人の顔を見て黙り込む。
そして……