荒野が広がる地表。
何一つ生物が存在せず、風の音のみが響くその大地に大きな亀裂が走る。
その亀裂は徐々に大きくなっていき、やがて下から突き破られるようにして崩壊した。
《ゴバァァァァッ……》
突如として地面から顔を出した巨大な物体、宇宙船アーク号はそのまま空高く上昇していく。
やがて高度8000メートルに達しようとしたところで、複数の影がアーク号へと迫った。
それはクシア軍で使われていた無人戦闘機。
かつては惑星の人々を守る為に使用されていたそれらは、今やギルバリスの手足として生命を刈り取る無慈悲な機械と化してしまっていた。
《ブォォォォン!!》
無人戦闘機が猛烈な轟音と硝煙を上げながら機関砲を発砲し、無数の砲弾がアーク号の船体へと向かう。
その砲弾は、あわや船体に当たるかという所でエネルギーシールドによって防がれた。
徐々に上昇していくアーク号を、八方から集まる無人戦闘機隊が包囲しようとしていた。
―――――――――――――――
『後方よりミサイル接近』
『下方、並びに上方に敵機確認』
『10度、25度、45度の方向に敵機確認』
「ほぼ全方位じゃねぇか!!」
電子音声が接近する敵の情報を読み上げる。
敵のあまりのしつこさに舌打ちをして、俺は情報を整理しつつ矢継ぎ早に支持を飛ばしていく。
「対空防御!!30センチ砲、並びに40センチ砲エネルギー充填!!」
『了解』
後方から迫るミサイルを対空パルスレーザー砲により撃ち落す。
息つく間もなく、今度は無人戦闘機が船体へと迫る。
『30センチ砲、並びに40センチ砲、エネルギー充填完了』
「よし、全方位一斉射で弾幕を張る、
射撃の指示を出した瞬間、船体の周囲が青や赤の閃光で包まれた。
砲から発射されたレーザーは真っ直ぐに敵へと向かい、その機体を焼き尽くす。
だが、敵の物量は凄まじく、次から次へと現れる。
「このままじゃシールドが持たない、ミサイル発射、集束型弾頭を指定」
『収束型弾頭指定、ミサイル発射します』
敵が接近して機関砲を撃とうとしたところで、ミサイルが発射された。
ミサイルは無人戦闘機の編隊へと近づいたところで爆発、広範囲にフレシェット弾をばら撒き、編隊をまとめて行動不能にしていく。
それでも全く敵の数は減らず、このまま対処していてもらちが明かない。
「メインエンジン最大出力、第二宇宙速度まで加速して敵の追撃を振り切る」
『メインエンジン最大出力、第二宇宙速度まで加速します』
指示を出した瞬間、俺の体はキャプテンシートへと強く押し付けられた。
後部のエンジンノズルから轟音と共に炎の柱が吹き上げ、船体が加速していく。
流石の戦闘機も、ロケットに勝る加速の宇宙船には敵わない。
見る見るうちに敵を引き離し、あともう少しで大気圏を突破できるという所まで到達した。
だが、俺はギルバリスを甘く見過ぎていた。
そうやすやすと、奴がターゲットを簡単に逃がす事は無いという事を、身をもって知る事になる。
『正面に高エネルギー体を検知』
「解析しろ」
突然の高エネルギー体検知の報に、俺はコンピュータへ解析するよう指示を出す。
もしも敵の兵器であったら、回避するか、それともリスク覚悟で突っ込むか……
そう考えていた俺に、解析完了の文字が飛び込んで来る。
『クシア外気圏に高エネルギーフィールドの形成を確認』
「なっ!?」
高エネルギーフィールド、つまりはバリアだ。
確か劇場版ジードで、ギルバリスは外部からの干渉をシャットアウトする為に惑星をバリアで覆っていた。
まさか今それを発動するとは……
「緊急降下!」
この船の装備ではあのバリアを破る事は不可能だ。
せめて衝突を回避する為に降下しようとするが、第二宇宙速度まで加速した巨大な船体が、そう簡単に方向を変えられる訳がない。
『高エネルギーフィールドとの衝突回避は不可能です』
「衝突予想部位にシールドを集中、他の部分が薄くなっても構わん!!」
そう指示を出した瞬間だった。
船体に凄まじい衝撃が走り、俺の体は艦長席から投げ出された。
雷鳴のような轟音、船体のシールドとギルバリスのバリアが接触しているという事だろう。
船体のあちこちから破壊音が響き、いくつかの計器が火花を散らした。
『後方からミサイルを検知』
「っ、クソッ!!」
敵の追手が迫るが、今衝突部位のシールド出力を低下させれば船体がバリアへと接触してしまう。
そうなれば今自分が指揮を執る船体上部の艦橋はペシャンコに潰れるだろう。
もう、成すすべが無かった。
《ドォォォォン!!》
薄くなった部分のシールドを破り、船体後方にミサイルが着弾した。
先ほどとは比較にならない衝撃が船体に走り、機器がアラームを鳴らす。
強かに体を打ち付けた俺は床に倒れ、意識が遠のいて行った。
『メインエンジン損傷、出力低下』
『空間跳躍装置損傷、ワープ不能』
『異次元ゲートジェネレーター損傷、異次元ゲート形成不能』
無情な宣告をする電子音声の声を聞きながら、俺はついに意識を失うのだった。