悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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更新のペースが開いてしまい、申し訳ありません。
ちょっと先週は仕事で出張していたもので……
これからは元通り週一ペースに戻したいと思います。


第百十七話【若気の至り】

「早く、こっちへ!!」

 

ベリアル軍による突然の襲撃という事態に、開拓キャラバンは混乱状態へと陥っていたが、年長者らの尽力により避難民達にも秩序が戻り始めていた。

未だに危険から脱する事は出来ていないものの、右往左往とバラバラに逃げ纏っていた人々に流れが出来、その流れを避難場所となっている洞窟へと誘導する。

 

「こっちだ!!ポンコツども!!」

 

その間にキャラバンの中でも特に勇敢な男達が、掠める様に飛んで来るビームを避けつつ、地表艇で場所を転々と移動しながら、手持ちの護身用武器や発破用の爆薬でレギオノイドを陽動する。

幸いにも陽動は効果を成し、徐々にではあるがレギオノイドらは避難民から離れ、地表艇を追ってキャラバン隊の拠点から脱しつつあった。

 

「もう少しだ、充分に引き付けたら予定した坑道へと逃げ込むんだ」

 

陽動を行うのは、ハスキーよりも一回り大型の地表艇であるハウンドだ。

ハスキーよりも装甲は厚く、その分速力では劣るものの、レギオノイドから逃げきれる程度には速力も有る。

 

「でもレギオノイドはドリルで地中を移動出来るんじゃ……」

「あの鉱山の岩盤は固い、レギオノイドを地中へと引き付けて、その隙に反対側の出口から出れば逃げ切れるはずだ」

 

その地表艇の中で、開拓キャラバンの男達に囲まれながら、ゼクダスはこの場を脱する為に指示を出していた。

周囲のメンバーには知る由も無い事だが、ゼクダスはその生い立ちから、ベリアル軍の軍事用ロボット、つまりはパルデスの創り出した兵器に関して言えば、その能力まで把握している。

一人で逃げ切るだけなら、造作もない事だろう。

 

「ゼクダスさん、本当に良かったのか?」

「アンタだけなら宇宙船で逃げる事も出来ただろうに……」

 

とはいえ、本来ならゼクダスにはそこまでする義理は無い筈だ。

例えキャラバンに世話になったとはいえ、ここまで命知らずの事をしでかしてまで助けるというのは、実に不合理極まりない行為である。

おそらく、過去の自分(ダークロプスゼロ)なら切り捨てていただろう。

 

『本当に、心という物はままならないものだ』

 

自らに生まれた『情』という物に振り回されている現状に自嘲しつつも、ゼクダスはこの現状に何処か心地良さを感じているのを自覚する。

捨てられない感情、切れない絆、そういった物に引っ張られるまま、この場に居続ける。

生温いかもしれないが、今の日常も悪くはなかった。

 

だからこそ、その日常を守る為に戦うのだ。

 

マスター(パルデス)には悪いが、バラージの盾は二の次にさせて貰う。

この襲撃もマスターの上司であるベリアルが勝手に命令した物で、直接的には関わっていないだろうが、(もしも関わっているなら、通信の時に伝達されるだろうし)どの道こうなった以上はマスターにも責任の一端は有る。

間接的ではあるものの、自分で命じておきながら自分で邪魔をしているのだから、バラージの盾の方はお預けにしておいて貰おう。

 

「俺は一宿一飯の恩を忘れはしない、この中の誰一人ロストさせない」

「ゼクダスさん……」

 

ゼクダスの言葉を聞いた周囲の男達が、感極まったような表情でその瞳を潤ませる。

そしてその潤みが外に出る前に乱暴に袖で拭うと、キリリと表情を引き締めた。

 

「アンタはもう客人じゃねぇ、仲間だ!!」

 

それぞれの持ち場で、男たちは素早く手元の機器を操作し、自らの仕事を遂行していく。

目立つ行動をしていた為かレギオノイド(追手)の数は三体に増えていたものの、紙一重で躱しながら坑道の入口へと向かって行く。

 

そして、後僅かで坑道へと辿り着くという時だった。

 

「おい、あいつら何をやっているんだ!?」

「……確認したい、少し移動してくれ」

 

装甲板によって狭められ、スリット状になった窓から外を見ていた男が声を上げる。

嫌な予感がしたゼクダスは窓の外を見ていた男に頼んで場所を移動してもらい、外を覗いた瞬間に舌打ちをした。

 

「少々無線を使わせて欲しい」

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

「でもゼクダスさんからは『倒そうとは考えるな』って言われただろ?」

「大丈夫だって!!それにアイツのせいで全部メチャクチャになったし、一体ぐらいブチのめしてやりたいんだ!!」

「そりゃあそうだけど……」

 

言葉で応酬を続けるランとナオ、

 

ゼクダスの警告を覚えていたランはナオを止めようと窘めるも、内心ではナオと同じく一矢報いたいという気持ちもあり、その言葉には精彩を欠く。

そんな兄の気持ちを知ってか知らずか、口籠るランを押し切るように、ナオは手元のスロットルを操作して出力を上げた。

 

「……分かった、だけど無茶はするなよ」

「もう充分に無茶やってるけどね」

「それは言うな」

 

しばしの逡巡の末、ランは溜息を一つ吐いた後、了承の言葉を口にして吹っ切れたような笑顔をランへと向ける。

それに対してナオはじゃれつくように皮肉交じりの言葉を言い返した後、同じく笑顔を浮かべた。

 

そして、地表艇が山の斜面を登り始めた時だった。

 

『こちら地表艇ハウンド、聞こえるか』

 

突如として通信機から発せられた、あまりにも聞き覚えの有る声に、二人は肩をビクリと震わせた。

どうしようか、と思うも、無視するのはマズいという事だけは分かる。

仕方なく、銃座にいたランが備え付けられた通信機のマイクを手に取って会話を始める。

 

「こちら地表艇ハスキー、どうぞ」

『……ラン、君は有機生命体であり、機械よりも記憶能力で劣る部分がある事は重々承知している』

「ゼクダスさん、これは……」

『言い訳という非効率な事に時間を割くつもりはない、今すぐ最寄りの三番坑道へ逃げ込め、そうすれば振り切る事が可能《ブツッ!!》』

「は?ゼクダスさん?ゼクダスさんっ!?」

 

突如として切れた通信に、ランは慌てた様に何度も呼びかけるが、通信機は多少のノイズ以外に何の声も返す事は無かった。

通信機の故障だろうか?まさかこんな時に……

 

「どうやらビームが機体を掠めた拍子に、アンテナを破壊されたみたいだね」

「本当か!?クソッ、どうすれば……」

「こうなったらこのまま行くしかないと思う」

 

あまりにも突然の事態に動揺していたランだったが、ナオの言葉に我に返ると、しばしマイクを見つめた後に投げ捨てるように手放す。

壊れてしまった物は仕方ない、もう行くしか無いか。

 

「分かった、行くぞナオ!!」

 

もうどうとでもなれと言わんばかりに、やけっぱちになったランは再び銃座へと戻る。

それを確認したナオは、手に握っていた()()()()()()()()()を放ると、両手でしっかりと操縦桿を握った。

 

「あのポンコツをぶっ飛ばしてやろうぜ、兄貴!!」

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