眠い目を擦りながら書いていたので、確かめていた時に気付かなかったようで…
《ゴゴゴゴゴ……》
突如として揺れ出した地面に、ランとナオは共に地震かと困惑する。
ひょっとしたら、今の騒ぎで火山が噴火しそうなのか?と考えた時だった。
「うわぁぁぁっ!?」
「兄貴ぃぃっ!!」
突如として足元が爆発し、二人はその身一つで空高くへと打ち上げられる。
浮遊感に上下も分からなくなりそうな中で、一瞬だけ見えた地面からは、両手のドリルを回転させて地中から飛び出してきたレギオノイドの姿が有った。
『嘘だろ?溶岩に落ちて無事なのかよ……』
ここで、ランの脳裏にゼクダスからの忠告が過る。
【忠告だ、『レギオノイドを倒そう』だなんて蛮勇染みた事は考えるなよ】
だが、その事を後悔しても遅い。
地面に落下して行く中、咄嗟にナオの体を引き寄せ、自分の身を盾にするかのように強く抱きしめる。
そして次の瞬間、ランの体を激烈な衝撃が襲った。
「ガハッ!?」
地面の所々から飛び出した岩に体が叩きつけられ、まるで巨大な杭でも刺さったかのような激痛が走った。
普通なら気絶するであろう激痛ではあるものの、大切な家族を守りたいという一心でどうにか耐える。
そのまま斜面を転がり落ちて行く二人、火孔に落下してしまうと思ったランは己の手が傷つくことを厭わず、右腕でナオをよりしっかりと抱き寄せると、左手で地面を掴むようにして体を減速させようとした。
「ぐっ!!」
二人分の体重が左手に集中し、新たな激痛にランはうめき声を上げる。
確認する余裕は無いが、おそらくは砂利によって擦られ見るも無残な状態になっているだろう。
それでもランは力を緩めなかった。
「うわぁっ!?」
やがて崖淵まで滑り落ちた所でようやく二人の体は止まった。
だが、止まる直前にナオを抱えていた右腕を岩にぶつけてしまい、ランは思わずその体を離してしまう。
「ナオッ!!」
崖の外へと身を投げ出されてしまったナオに、ランは必死になって腕を伸ばし、ギリギリでその手を掴む事が出来た。
しかし、悪化している現況は変わらない。
宙ぶらりんになってしまったナオが下を見れば、そこには溶岩が煮えたぎる火孔が地獄の窯の口を開けていた。
《ガラガラッ!!》
二人の後を滑り落ちて来たハスキーが、数メートル横から火孔へと落下して行く。
ハスキーは溶岩にドプンと落ちた瞬間に燃料に引火して爆発し、その爆風と煙が二人をジリジリと炙った。
「兄貴っ!!」
まるで【次はお前がこうなる】と言わんばかりの光景を見てしまい、恐怖に怯えるナオを少しでも安心させるように、ランはその顔に笑みを浮かべる。
だが、自分を掴むランの腕を伝う様に流れて行く大量の血液を見て、ナオはその顔を強張らせた。
「兄貴、血が!!」
「心配するな、今引き上げてやるっ!!」
苦痛に呻き声を上げながらも、どうにかランはナオの体を引き上げようとした。
しかし、大量の出血だけでなく、先程から異様なまでの息苦しさがランの身を襲っていた。
肩でどうにか息をしながらも必死になって踏ん張るが、体に力が入らない。
そんな絶体絶命の状況の中でも、ランは
『せめてナオだけでも助ける!!』
大切な人を救いたいという思い、人類誰しもが持つ『愛』という感情。
ランがその思いを強くしたその時、ランの首元を飾る
―――――――――――――――
その瞬間、アヌーから遥か彼方を飛んでいた一人の戦士が、その目に閃光を捉える。
閃光は、まるで灯台のように明滅し、まるで誰かに見つけてもらいたいかのように、自らの存在を示した。
「呼んでいる……俺を?」
戦士は、まるで渇望するかのように、その閃光へと手を伸ばした。
―――――――――――――――
「全く、奴も無茶をするものだな」
新しくカップに注いだ紅茶を口にしながら、俺は目の前の壁一面を占める大型ディスプレイを眺める。
その画面は複数に分割され、それぞれが違う景色を映し出している。
そう、これはアヌーに派遣された全ロボット兵器の光学センサーからの画像である。
「まさか走ってる乗物からバイクで飛び降りるとかハリウッド映画かよ」
その中の一つを大型ディスプレイ中央へと拡大配置し、俺は溜息を吐く。
ゼクダスの乗った地表艇が煙幕でレギオノイドの視界を遮った時は何をするのかと思っていたが、まさかあんな離れ業を披露するとか予想してなかったわ。
走って行った方向からして、ランとナオを助けに行ったのだろうか?
本人は気づいていないかもしれないが、定期報告の際の様子を見る限り割と肩入れしていたみたいだし。
「さて、こっちは……」
俺はソファーに座り、リモコンを操作して別のモニター、ランとナオの元に居るレギオノイドの物を拡大表示する。
こっちはこっちで「ファイト一発!」な状態だ。
崖から投げ出されたナオの腕をランが掴み、辛うじて火孔への落下を食い止めてる状態だ。
「前世の記憶が正しいなら、この後ペンダントが光り出すはずだが……」
そんな事を呟いていたら、俺の言葉に反応したかのように、ランの首元がボヤリと光る。
おそらくはランの諦めない意思が、ノアの意思と共鳴したのだろう。
それにしても、光学センサーで見る限りは多少光っている程度なのに、数万キロは離れているであろうゼロにはあれだけ眩く見えているってどのような仕組みなのだろうか?
なんて疑問を考えていた俺に、案外早く答え合わせの時間がやって来た。
《ビーッ!!》
突如として部屋内に響く電子音。
アヌーに派遣した兵器のセンサーが何かを感知したのだろう。
タイミングから考えると、バラージの盾の物だろうか?
『アヌーへ派遣中ノ艦隊ガ、コスモウェーブを観測』
コスモウェーブ、脳に直接作用するエネルギー波だ。
宇宙戦艦ヤマトの世界では、肉体を捨てたテレザート人の集合知である精神生命体『テレサ』が使用しており、劇中では『受信者に近しい故人の幻影を通じ、光年単位の距離を跨いでメッセージを送る』というチート技を使っている。
おそらくは劇中でゼロが感じた自分を呼ぶ意思と、遥か彼方に見た閃光は、このコスモウェーブがゼロの脳に見せた幻影のような物なのだろう。
「それにしても、コスモウェーブか……」
アナライザーが読み上げた情報に、俺は手を目の前の机の上で組んで考えを巡らせる。
ウルトラ族はテレパシーを使用する一族であり、神とも言われるウルトラマンノア程の存在なら、そういった能力も使用する事は可能だろう。
だが、俺の中で何かが引っかかる。
そもそもコスモウェーブはヤマトの世界に存在した物であり、テレパシーとは似て非なる物だ。
それがウルトラマンの世界にも存在するとは、あり得ない話ではないが……
「何か忘れているような……」