悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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第百二十二話【宿りし魂】

山の麓に大きく口を開けた鍾乳洞。

惑星アヌーでは開拓民が採掘した坑道がかなりの広範囲に渡って広がっているのだが、ここは自然に出来た洞窟である。

 

その入り口から少し入った所で、三人は外の様子を窺っていた。

 

「まだ見つかってはいないようだが、俺達を探しているようだな」

 

入り口の岩に半身を隠すようにしてゼクダスが外を確認し、徘徊するように行き来しているレギオノイドを確認して苦々しく呟く。

背後では額に汗を浮かべたランとナオが、少しでも見つかりにくくなるように姿勢を低くし、緊張した面持ちでゼクダスを見ていた。

 

「どうやら、奥へ行くしか方法は無いみたいだ」

「けど、この洞窟はまだ調査が済んでないから迷うかも」

 

そう言いながら、ナオが洞窟の奥へと不安気に視線を向ける。

ポッカリと口を開けた鍾乳洞の内部は、燦燦と陽光が射している外と比べると薄暗く、湿気の混ざった不快な空気が肌を舐めるように奥から手前へと吹き抜けていく。

 

「大丈夫だって、俺が付いてるからな」

「兄貴……」

 

その不気味さにナオは思わず体をブルリと震わせるが、すかさずランが抱き寄せて、不安が少しでも無くなるようにその背を撫でた。

温かい手に撫でられた事で徐々に落ち着きを取り戻したナオに、元の快活な笑顔が戻る。

 

「……見つかる前に行くぞ」

「ああ、ほらナオ」

「うんっ!!」

 

先を歩いて行くナオの後ろを、薄らと優しい笑みを浮かべたランが追って行く。

その後ろを追う様に歩き始めたゼクダスが、ランに鋭い視線を向けていた事には気づかずに。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

数百メートルは奥へと歩いただろうか?

入り口付近では天井の所々に穴が開いており、そこから漏れる日光が内部を照らしてくれていたが、奥まで来るに従ってそういった光源も少なくなってくる。

 

「有った!!」

 

先が見にくくなり進むのが危険だと立ち止まった所で、ナオが徐に周囲の地面を手で軽く掘り起こし、一握りの結晶状の鉱石を拾い上げた。

鉱石を周辺の岩の上に置き、懐から取り出した光線銃のダイヤルを回して調整した後に発砲すれば、か細いレーザーが発射された。

そのレーザーが当たった瞬間、ぼんやりと鉱石が発光し始め、やがて周囲の様子を確認出来るほどに明るくなっていった。

 

「ありがとう、ナオ」

 

その鉱石をゼクダスが手に取り、ナオに対して礼を言った後に、周囲を照らしていく。

いくつかの穴は有るが風の動きはか細く、まともな出口が有るかは分からないような状況だ。

 

「行くぞ、こっちだ」

 

そんな中で、ランだけは積極的に奥へと進もうとしていた。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()から発せられる明かりを頼りに。

 

「ねえ兄貴、それ何?」

「……」

 

それを疑問に思ったナオが質問するが、ランは返事を返す事無く先へと歩いて行く。

不安を感じたのか、ナオは矢継ぎ早に話しかけるが、ランはそれに答える事は無い。

見かねたゼクダスが、ランの後ろへとやって来て話しかける。

 

「おい」

「っ!?」

「ゼクダスさん!?」

 

突如としてゼクダスがランへと殴り掛かる。

殺気にも似た不穏な気配を感じたのか、ランは素早く振り返り、その掌で拳を防いだ。

目の前でギチギチと力比べをするかのように押し合う二人を見て、ナオは戸惑った表情でオロオロとするばかりだ。

 

しばしその状態が続いた後、ゼクダスは無表情のままランに問いかけた。

 

「お前、ランじゃないな?」

「え?」

 

ゼクダスが力を抜き拳を収めると、ランは先程まで力を入れていた手をプラプラとさせる。

そしてばつが悪そうな顔で、自分を見つめる二人に告白した。

 

「俺はランだけどランじゃねぇんだ……俺は光の国のウルトラ戦士、ウルトラマンゼロだ」

「ウルトラマンゼロ?」

「さっき見た巨人、あれが俺だ」

「……やはりか」

 

苦々しげな表情で、ゼクダスは吐き捨てるように呟く。

 

ウルトラマンに関して言えば、ゼクダスはダークロプス・ゼロの頃に情報をインプットしていた為に、ある程度は把握していた。

その情報の中に『他の生命体と同化する』という事例が存在した事も。

 

ウルトラ族は現実世界に肉体を持ちつつもエネルギー生命体としての一面も持っている。

光の巨人としての強大な生命エネルギーは、死の淵に立つ者をも癒す程の奇跡の力を持っているとされている。

ごく稀にウルトラ族に気に入られた者が、その奇跡の力によって蘇生したという話も、数少ないながらもデータとして存在していた。

 

「ランはどうした?」

「そっ、そうだよ、ランは……僕の兄貴はどうなったの?」

「今はココで眠ってる」

 

ゼクダスとナオの詰問に、ラン――ウルトラマンゼロは己の胸に手を当てて答える。

だが、この答えだけでは肝心のランが本当に無事なのかどうかは分からない。

納得しなかったナオが、更にゼロに食い下がる。

 

「ラン兄貴は死んだの!?」

 

泣きそうな顔で発せられたナオの言葉に、ゼロはしばらく逡巡するかのように視線を彷徨わせた後、ランの前へと歩み寄り、膝をついて視線を合わせる。

 

「大丈夫、生きてる」

 

ランとナオがお互いを守り合う姿を見たゼロは、ただ目の前の二人を助けたかったのだ。

だからこそ、高いリスクを背負ってまで同化という手段を選んだ。

その事を真摯にナオへと語り、ゼロは約束した。

 

「ナオの兄貴は、いずれ時が来たら元に戻る」

「……」

「俺は君を守る、兄貴と約束した、信じてくれ」

 

無言でゼロに背を向け、ナオはしばし無言で俯く。

その背をゼクダスは気遣うように優しく撫でて、顔を覗き込む。

 

「ナオ、大丈夫か?」

「……分かった」

 

ナオが顔を上げて、真っすぐゼロを見据える。

その目の中に先程のまでの戸惑いの色は無く、代わりに強い意志に輝いていた。

 

「信じるよ、ラン兄貴が信じたんだ、僕も信じる」

「おう!!」

 

ナオが差し出した手を、ゼロが握りしめ握手を交わす。

互いの顔に笑みが浮かび、ここに一つの絆が結ばれた。

 

その瞬間、洞窟内を赤い光が照らした。

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