悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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第百二十三話【迫る大敵】

「あれ?こんな事、初めてだ」

 

突如として発せられた赤い光、その出所を辿って行くとナオの胸元に行きつく。

気を失う寸前にランがナオに託したペンダント、それが眩い光を放っているのだ。

 

「これは……」

「バラージの盾の欠片だよ」

「バラージの盾?」

 

聞き慣れない単語にゼロが訊き返すと、ゼクダスが代わりに答える。

 

「この惑星アヌーに伝わる古い伝説だ、確か『宇宙を守る伝説の神器』だったか……」

 

説明を口にしながら、ゼクダスが自らの顎に手を当てて、光り輝くバラージの盾の欠片を見つめ考え込む。

何故光ったのかは分からないが、ひょっとして光の戦士に反応したのか?

主人(パルデス)からの指示で調査をしていたが、やはりベリアル軍にとっては障害となる物なのだろうか?

 

まあ、受けた指示は『調査』のみ、ココで手出しはせずに後でデータを纏めて報告すれば良い。

そもそも主人はベリアル様に忠誠を誓っているとは思えない節があるし、あまり問題にはならないだろう。

 

そんな打算をしつつ、ゼクダスはゼロとナオの会話に耳を傾ける。

 

「僕と兄貴はそれを探しに行こうとしててさ」

「そうだったのか」

「バラージの盾が有れば、きっと守ってくれる筈なんだ……」

 

バラージの盾の光が段々と収まっていく。

まるで、暗い表情になってしまったナオに引きずられたかのように。

その様子を見てゼロがどうしたのかを聞こうとした時、ナオの口から《ある名前》が発せられた。

 

「あの恐怖の皇帝、カイザーベリアルから」

「カイザー……ベリアル?」

 

聞き覚えの有るその名に、ゼロの表情がみるみる険しくなる。

 

光の国唯一の大罪人にして反逆者、ウルトラマンベリアル。

かつて光の国からプラズマスパークを奪い、一時はウルトラの星を壊滅状態にまで追い込んだ破壊者。

だが、ベリアルは怪獣墓場で倒したはず……

 

《ズゥゥン……ズゥゥン……》

 

「チッ、来やがったか……」

 

考え込んでいたゼロだったが、此方へと近づいて来る地響きに思考を中断した。

どうやって感知しているのかは分からないが、レギオノイドは着実にコチラへと向かって来ている。

 

そう考えているのはゼクダスも同じだったようで、眉間に皺を寄せながら洞窟の奥へと指をさす。

 

「ここも危険か……奥へ行くぞ」

「ああ」

「分かった」

 

三人は顔を見合わせて頷くと、更に洞窟の奥へと走って行く。

時折濡れた地面や起伏に足を取られながらも奥へ奥へと突き進むと、不意に広い空間へと行き当たった。

先程までの人一人がようやく通れるような狭い通路とは打って変わり、縦も横も数十メートルは有りそうな空洞だ。

 

思わず全員が立ち止まり周囲を見渡す中で、ナオが天井を見上げてポツリと呟いた。

 

「うわぁ、凄ぇ……」

 

先程まで通って来た通路と同様の黄土色の岩肌が一面に広がる中で、一カ所だけ緑色に光る箇所が見えている。

明かりで照らしてみれば、そこには明らかに岩肌とは異なる緑色の結晶体が、巨大な氷柱のように聳え立っていた。

見た事も無いようなその光景に、ゼロは思わず目を丸くしてしまう。

 

「これは……」

「エメラル鉱石だよ、ゼクダスさんが持ってるのもそうだよ」

 

ゼロはゼクダスの手元へと視線を移す。

ナオが手を加えた事により懐中電灯替わりとなった緑色の鉱石――エメラル鉱石は、先程とは変わらず光を発し続けている。

 

「僕たちみんな、この鉱石からエネルギーを取り出して使ってるんだよ」

「星間文明圏を支える重要なエネルギー資源だ、家庭の照明から宇宙船のエンジンにまで多用途で使用されている」

 

二人からエメラル鉱石の簡単な説明を受けたゼロは、ゆっくりと歩み寄ると鉱石の表面に触れる。

まだ原石の状態であるエメラル鉱石は、掌に冷たい感触を伝えて来る。

ここでゼロは、ようやく抱いていた一つの疑問が氷解していくのを感じた。

 

「なるほど、ダークロプスの中に有ったのはこれか……」

 

突如として光の国を襲撃し、混乱に陥れたダークロプス、

その体内に埋め込まれ、ゼロをアナザースペースへと導いた緑色の鉱石の正体、

それがこのエメラル鉱石だったのだ。

 

「こんなにデカいの中々ないよ」

「できればキャラバン隊のメンバーにも伝えたいところだが……」

 

横でゼロと同じく巨大なエメラル鉱石を見上げていたナオとゼクダスが感嘆したように呟く。

開拓キャラバン隊にとってエメラル鉱石の採掘は重要な収入源だ。

平時なら喜び勇んでキャラバン隊のメンバーらに伝えるところだが、敵に追われている今はそれも出来そうにない。

 

残念がる二人を見ていたゼロだったが、不意にもう一つの疑問が浮かび、二人に問いかけた。

 

「なあ、パルデス・ヴィータって奴を知らねぇか?」

 

ゼロがその名前を出した途端に、ナオとゼクダスはピシリと固まる。

二人の様子を見て、何らかの情報を持っていると悟ったゼロが、更に詳しく聞こうと口を開いた。

 

《ドォォォォォォンッ!!》

 

だが、その質問は洞窟内に響いた轟音によって中断させられる。

揺れる地面によろけたナオをゼロが支え、何事かと周囲を見渡せば、天井の一部が崩落して回転するドリルが姿を現していた。

 

「やべっ、見つかった」

 

回転するドリルの向こうに、レギオノイドの赤く光るカメラアイが見える。

どうにか奥へと逃げようと走り出そうとした瞬間、天井から降って来た瓦礫で道が塞がれた。

戻ろうにもそちらには既にレギオノイドのドリルが突き刺さっており、通るのは無理だろう。

 

「どうすれば……」

 

せめて落ちて来る瓦礫からは守ろうと、ゼロとゼクダスは庇う様にナオを抱き寄せる。

どうにかこの事態を挽回しようと思考を巡らせるが、解決策は全く浮かばない。

 

「クソッ!!」

 

万事休すかと思った瞬間だった。

突如として足元が光り、三人を囲むように赤い輪が現れる。

そして何が起こったのかと考える間も無く、不意に地面が消えた。

 

「っ!?」

「なっ!?」

「うわぁぁっ!?」

 

それぞれの悲鳴を残し、三人は成すすべなく下へと落ちて行った。

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