エメラナはゼロ、ナオ、ゼクダスへ自らの境遇を語る。
故郷と共に、自らの家族や愛すべき国民達がベリアル軍に囚われてしまった事。
そんな中で一人だけジャンバードに転送されて、ずっとその身を隠していた事。
「もう、私の大切な人々は誰も……」
そう言って悲し気に俯くエメラナ。
おそらくは自分だけ逃げてしまった罪悪感も有るのだろう。
何と声を掛けていいか分からず、ゼクダスは押し黙り、ゼロは険しい表情で目を伏せる。
重苦しい空気の中で全員が言葉を無くしていた。
「じゃあさ!!」
そんな中で、場違いにも思える明るい声に、その場の全員の視線が一点を見つめる。
その視線の先――ゼロの傍らからナオがエメラナへと駆け寄って行く。
突然の事に虚を突かれたゼロは、そんなナオの様子をただ眺めているしか出来なかった。
「僕ら友達になろうよ!!」
「友達?」
予想だにしない言葉に、エメラナは先程までの悲し気な表情が一変して驚いたような表情でナオと視線を合わせる。
ナオはその表情を見て悪戯が成功した時のように得意気に笑うと、右手をエメラナへと差し出した。
「そうすれば一人じゃなくなるよ」
「……本当に、お友達になってもらえますか?」
「勿論!!」
エメラナは快活に笑うナオの手を恐る恐る握る。
そんなエメラナの手を、ナオはがっしりと掴んだ。
まだ少年と言うべき年代のナオ。
しかしその手は普段の仕事も相まって、大人と変わらない武骨で暖かな手だ。
その優しい温かさに、エメラナの顔からは失って久しかった笑みが零れた。
「兄貴も」
「おう!!」
笑みの戻ったエメラナを見て釣られるように笑顔が戻ったゼロが、ナオとエメラナの握手の上に手を重ねる。
温もりを分かち合うその様子を少し離れた場所で眺めつつ、ゼクダスは薄く笑みを浮かべた。
やはり強いな、ナオは。
この状況でも光を失わないその心。
実に眩しく思う。
「ゼクダスさん」
そんな事を考えていたゼクダスの耳に自分の名を呼ぶナオの声が耳に入ってくる。
どうしたのかとナオの顔を見てみれば、何処か不満げにこちらを見るナオの姿が目に入った。
一体何なのだろうか?と疑問に思っているゼクダスに、ゼロが視線を向ける。
「ゼクダスも一緒にやって欲しいってさ」
「俺も?」
まるで意外だとでも言いたげなゼクダスのリアクションに、ゼロは思わず苦笑した。
「アンタも仲間だろ?俺とナオ、そしてエメラナの」
「仲間……」
その言葉を聞いたゼクダスの胸に、熱い物が込み上げる。
思い返してみれば、ダークロプス・ゼロだった時は物としてしか見られていなかった。
この肉の体を得た後は、パルデスからも“人”として目を掛けてもらっている自覚はあったが、それでも“自らの被造物”という範疇からは出ていないように思えた。
こうしてハッキリとした言葉で言われるのは初めてだ。
ああ、そうかコレが……
短い間ではあるが、ランとナオと過ごす中で何度か感じた感情が有った。
これまでは分からなかった、いや
だって、この感情を持てばパルデスを裏切る事になってしまうかもしれない。
しかし、それでも……
ゼクダスは三人へと歩み寄り、ゼロの手の上へと自らの手を重ねる。
しっかりと手を握れば、暖かな体温が掌へと浸透する。
『いよいよ処分されてしまうかもしれないな』と思いつつも、ゼクダスは自らの中に芽生えた『絆』という感情を噛み締め、尊重する事にした。
《カッ!!》
そしてその選択を祝福するかのように、ナオの首から下げられたバラージの盾の欠片が、木漏れ日のような暖かな光を灯すのであった。