悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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第百二十八話【武人の決断】

漆黒の宇宙の中、冷たい真空の中に浮かぶのは戦士の成れの果てか、はたまた悪党の末路か、見渡す限り広がる宇宙船の残骸の中をジャンバードは巡航する。

ジャンバードの内部は宇宙空間とは打って変わって、人間が快適に生存出来る空間が保たれていたが、四人はゆったりと寛ぐ……という事も無く、

その視線は、操縦室の奥に鎮座する大型スクリーンへと注がれていた。

 

スクリーンに映るのは、燃え盛る炎を背景に悠々と闊歩する巨人達の姿。

その巨人たちの先頭を堂々と進む深紅のマントを羽織った漆黒の巨人を見て、ゼロは苦々し気にその名を口にする。

 

「間違いない、コイツはあのベリアルだ……」

 

全てを嘲笑うかのように、引き攣るような笑みの形を作る橙色の瞳。

その正体は、かつて光の国を襲撃したウルトラマンベリアルその人であった。

 

「燃えてるのはエスメラルダ?」

 

ナオの視線の先には、スクリーンの中で薙ぎ倒され燃え盛る建物の残骸。

所々に装飾が施されている、かつては秀麗な建物であったであろうそれを見て、ナオは顔を青ざめさせる。

一体、どれ程の犠牲が出たのだろうか?故郷をベリアル軍に襲撃された今となっては、全く他人事ではない。

 

「惑星エスメラルダは、全てが純度の高いエメラル鉱石で出来ています」

「カイザーベリアルの目的は、そのエネルギー資源という事か」

 

エメラナが語ったカイザーベリアルの暴虐。

鉱石の戦略物資としての重要性を知るゼクダスは、その光景を見てカイザーベリアルの目的を悟った……という風に会話を交える。

 

そもそもパルデスの下に居たので、ゼクダスにとっては今更と言うべき事実だ。

まあそれをこの場で言うつもりは無いのだが。

 

ゼクダスがそんな事を考えている間に、スクリーンに映し出される映像は切り替わっていた。

 

『ベリアル帝国軍は宇宙全土で殺戮と略奪を続けている』

 

スクリーン上に今度は宇宙を悠々と飛ぶ漆黒の宇宙艦隊の姿が映し出される。

ベリアルのウルトラサインが艦首に彫り込まれた漆黒の戦艦達。

 

だがその艦隊の中に、数隻ほど他の戦艦とは異なる形状の物が有った。

艦首に巨大な二つの砲口が搭載された、灰色と紺色の宇宙戦艦。

その戦艦に、ゼロは見覚えが有った。

 

「アンドロメダ……」

 

かつて異空間にて自分を助けてくれた艦、そして、異空間で出会った科学者であるパルデスの座乗艦。

 

動画の中でアンドロメダの艦首方向に光が集まって行き、それが臨界に達した直後、一気に膨大なエネルギーの奔流が解き放たれ、宇宙を裂くように真っ直ぐ伸びて行く。

そしてエネルギーの奔流は惑星へと直撃した瞬間、一瞬にして木っ端みじんに吹き飛ばした。

そう、かつてサロメ星人の策略により異空間に閉じ込めらたゼロ達が、異空間から脱出する為の切り札として使用した兵器、波動砲だ。

 

あまりにも衝撃的で無慈悲な光景。

一瞬にして数十億もの命が失われる瞬間を見て、ゼロは湧き上がって来る憤怒に顔を歪ませた。

 

こんな……こんな事が有ってたまるか!!

 

「ベリアルは何処に居る!?今から行って倒して来る!!」

「何やってるんだよ兄貴!!」

 

居ても立っても居られず、ゼロはコックピットから出る為に扉へと駆け寄るが、反応は無い。

ナオが止めようとするのを尻目に「開けろ!!」と叫びながら扉を叩くが、それでもジャンバードが扉の先へと通す事は無かった。

 

『奴の居場所を知る事は、我々には出来ない』

 

無機質ながらも、何処か落胆の滲むジャンバードの声がコックピットに響く。

それでも一頻り扉をこじ開けようと奮闘していたゼロだったが、やがて無理だと分かったのか扉へと手を突いて項垂れた。

 

「ゼロ、あなたは一体……」

「……ベリアルは、俺と同じ別の宇宙から来たんだ」

 

エメラナの問いに、ゼロは憔悴したような掠れた声で答える。

 

自分が別の宇宙から来たという事。

カイザーベリアルが元々は自分と同じ種族だった事。

ナオの兄の体を借りているが、本当の自分は光の国のウルトラ戦士だという事。

 

全てを話したゼロは、計り知れない罪悪感に沈痛な表情で俯く。

あの時、キチンとベリアルに止めを刺していれば、そうすれば此方の世界の住人の命は失われなかった筈だ。

 

俺がどうにかしないと……とゼロは思っていたが、その思考を遮るようにナオがゼロを叱咤する。

 

「兄貴、僕達はバラージの盾を探す者だろ?一人で戦いに行くなんて言うなよ!!」

「ナオ……」

「相手はベリアルだけじゃないんだ、もの凄い数の手下が居るんだ、それを一人で倒しに行くなんて言うなよ!!バラージの盾を見つけなきゃ……」

 

必死に自分を引き留めようとするナオにゼロはようやく顔を上げ、その瞳を真っ直ぐ見つめる。

光の戦士もかくやと言わんばかりに光を宿したナオの目、それを見てゼロもようやく冷静さを取り戻し、ナオと、そして自らにも言い聞かせるように一回頷いた。

 

「バラージの盾……先程おっしゃっていた伝説ですね?」

『そのような不確かな物で、本当にこの宇宙を守る事が出来るのか?ベリアルを倒せるのか?』

 

バラージの盾の事を口にしたエメラナに対して、ジャンバードは即座に懐疑的である事を隠そうともしない回答を返す。

 

「出来る、絶対出来るよ、父さんがそう言っていたんだ!!」

『だが確証は無い』

「嘘だっていうのか!?」

 

自らの案を冷たく否定されたナオはジャンバードに食って掛かるが、あくまで否定的な姿勢を崩さないジャンバードの態度にナオがどんどんヒートアップしていく。

その様子を見ていたゼロはナオへと駆け寄り、落ち着かせるように背中を撫でながら毅然とした態度でジャンバードへと意見した。

 

「俺はナオを信じる、バラージの盾を探そう」

「そうだよ」

「私も一緒に参りましょう」

『同意できません、姫様の身を守るのが私の使命』

「お願い、私はお友達の力になりたい」

 

ゼロとナオに同調してバラージの盾を探そうとするエメラナに対し、ジャンバードは自らの使命を全うする為に止めようとする。

しかしエメラナも譲らない、一筋の希望が有るなら、きっと……

何故かはエメラナ自身にも分からなかったが、ゼロとナオの様子を見て信じられると思った。

 

「……ジャンバードと言ったな」

『何だ?』

 

哀願するエメラナを見て、ゼクダスは一つ溜息を吐きジャンバードへと問いかける。

 

「エメラナを守りたいというお前の使命は分かった、だが、この後どうするつもりだ?」

『どう、とは?』

 

ゼクダスの問いの趣旨が分からず、ジャンバードは問い返す。

対するゼクダスはそんな事も分からないのかと若干呆れたような視線を向けて言葉を続けた。

 

「エメラナを守って永遠にベリアルから逃げ続ける気か?」

『今後はレジスタンスに合流して……』

「レジスタンス程度の戦力で銀河帝国(ベリアル)を倒せると?」

『それは……』

 

ジャンバードは思わず口籠る。

分かっていた、このまま逃げ続けてもどうにもならない事も。

かと言って、もう既存の勢力ではベリアル率いる銀河帝国に歯が立たない事も。

ジャンバードの高性能なAIは、どの道を選んでも同じ答えを弾き出していた。

 

『敗北』の二文字を。

 

「どの道、俺達はもう袋小路にハマっているんだ、それなら冒険してみても良いと思うが?」

『……』

 

ジャンバードは押し黙り、しばし考え込む。

そして弾き出された答えは……

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