悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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第百二十九話【目的地は炎】

艦をワープアウトさせると、目の前には派手に燃え盛る数隻の戦艦が宇宙空間を漂っていた。

ある艦は数十メートルもの亀裂をその身に刻み、ある艦は中央部から真っ二つになり……

破損状態は千差万別だが、その艦達が最早航行不能であるという事だけは一致していた。

 

「さて、奴は何処に居る?」

『ココから50宇宙キロ先デ交戦する艦影ヲ確認』

「すぐにそちらへ向かわせろ」

 

瓦礫を避ける事もせず、ゴルバは目的の宙域へと進んで行く。

外部の分厚い装甲板は接触して来る瓦礫をものともしない。

 

やがて目的の宙域に辿り着いた時、モニターに映し出されたその景色は正に“蹂躙”と言うに相応しい物であった。

 

『フハハハハハッ!!』

 

五月雨の如く弾幕を絶やさない数隻の宇宙戦艦達。

音叉のような形状をしたU字型の艦首、艦尾に近い場所で横に張り出した短い両翼と、その両翼の中間部分に設置された艦橋。

既に何度も交戦した、レジスタンスの標準的な戦艦だ。

 

そんな戦艦が、今はまな板の上に乗せられた鯉とでも言うべき存在になり下がっている。

 

『そらそらどうした?その程度かぁ!?』

 

必死に交戦しているレジスタンスの艦隊を嘲笑うかのように、流星の如く近づく一体の怪獣。

そう、俺の差し金により怪獣として進化し、ベリアル軍最強クラスの戦士となったザウラーだ。

 

まるで水を得た魚の如く宇宙を飛び回る様は、流石は元宇宙海賊と言ったところか。

強靭な腕力は戦艦の装甲を引き裂き、岩の如く強固な肌で体当たりをすれば艦体に大穴が開く。

そして口から放つ炎は、ある程度は恒星の熱に耐える事の出来る特殊装甲を一瞬にして溶解させる。

 

正に鬼神の如き強さだ。

 

『ザウラー、仕事だ』

『チッ、何の用だ?パルデス』

 

近づいた所でテレパシーを飛ばせば、ザウラーはチラリと此方を横目で見た後に目の前の戦艦を破壊した。

どうやらそれで最後だったようで、戦艦が爆散すると共に宙域に静寂が戻る。

 

『次の殲滅任務を知らせに来た』

『またかよ、もうご自慢の無人艦隊に任せりゃ良いだろ……』

 

俺が任務を伝えると共に、ザウラーはうんざりした様に半目で此方を見て来る。

まあ最近はかなり仕事を任せていたからな、無理も無いか。

でもまだまだ働いてくれなきゃ困る、特に次の任務では。

 

『貴様が望んだ通り、炎の海賊とのマッチメイクを組んでやったのだがね』

『っ!?それを早く言え!!』

『ゴルバの格納庫を開ける、中に乗り込め』

 

俄然やる気になったザウラーを誘導すれば、ザウラーは開いたハッチの中から意気揚々とゴルバへ乗り込んで行く。

やがてその姿が完全に見えなくなり、ハッチを閉じた所で俺はアナライザーへと指示を出した。

 

「コスモリバース搭載艦をニュークシアへ帰投させろ」

『了解』

 

俺が指示を出すと共に、宙域の一角の風景が歪むようにして一隻の小型艦艇が現れる。

その小型艦艇は素早く加速すると、あっという間にワープして宙域から去っていった。

 

『コスモリバース搭載艦カラのデータを受信、≪収集完了≫トノ事』

「よし、そのまま“サンクテル”へ移送しろ」

 

指示を出した俺は、ワープの前にふと窓の外を眺める。

宇宙空間に浮かぶ、先程まで動いていた戦艦だったモノ、俺も一つ間違えればこうなるのだろう。

そう考えると、今更ながらに背筋を悪寒が駆け巡る。

 

もしも俺が死んだら、クシアの復興はどうするんだ?

 

折角見つけた移住に適した星も、俺が死んでしまえばクシアの住人を連れて来る事は出来なくなる。

そうなれば、民族全体の念願である新たな故郷への移住も、誰に知られる事も無く霧散してしまうだろう。

 

もしもの時の為に考えなければならない、俺に何かが有った時でもクシア人を移住させる事が出来るプランBを。

 

突如として脳裏を過った一抹の不安を抱えつつ、俺は艦をワープさせた。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

昼夜の分からない宇宙空間では、放っておけば体内時計も段々と狂ってしまう。

長年、王室に仕えて来たジャンバードは、航行だけでなく乗員乗客の体調管理も行っている。

 

『姫様、エスメラルダ標準時では既に就寝時間です、そろそろ寝室へ』

「ありがとう、ジャンバード」

 

エメラナやゼロ達の説得により、半信半疑ながらもジャンバードは重い腰を上げ、バラージの盾の情報を持っているという炎の海賊の根城へと舵を切っていた。

しかし道程は長く、ワープを加味しても目的地までは丸一日は掛かる。

 

既にゼロ、ナオ、ゼクダスはジャンバード内に設けられた居室へと移動していた。

元々は王家に仕える侍従用の部屋ではあるものの、エメラナ一人で脱出した今となっては誰も使用する者は居ない空き部屋だ。

浴室は共同であるものの、上等な寝台も備え付けられた部屋は非常に快適で、部屋に入ったナオは笑顔でベッドの上を飛び跳ねていたぐらいだ。

 

その様子を思い出し笑みを浮かべたエメラナは、自室へと向かうべく席を立ち、コックピットの扉へと歩いて行く。

だがその扉はエメラナが開けようとする前に、向こう側から開けられた。

 

驚き、思わず静止したエメラナは、入室して来た人物の名を思わず口にする。

 

「ゼロ……」

「悪ぃ、部屋に戻る所だったか?」

 

こちらも扉の向こうに立っていたエメラナに驚いたのか、ゼロは少し瞠目した後、バツが悪そうに軽く頭を掻きながらコックピットへ入室した。

 

「何か有りましたか?」

「実は一つ聞きたい事が有ったんだ」

『ゼロ、姫様はもう就寝の時間だ、要件なら明日にしてくれ』

「私は大丈夫です、聞きたい事が有るなら何でも聞いて下さい」

『姫様……分かりました』

 

ジャンバードはエメラナの体調を気遣って多少渋ったものの、引く様子の無いエメラナを見てゼロの申し出を了承する。

ゼロとエメラナが操縦席を兼ねたソファに腰を掛けると、ジャンバードはゼロへと問いかけた。

 

『それで、聞きたい事というのは?』

「パルデス・ヴィータって名前に聞き覚えは無いか?」

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