悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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第百三十話【それぞれの苦悩】

「ふぅ……」

 

寝台に腰を掛けたゼクダスは、食糧庫から持って来た非常食糧と水を補給して一息つく。

成り行きとはいえジャンバードへ乗り込む事になった訳だが、いつも喧噪に溢れたキャラバンとは違い、宇宙空間を突き進むちっぽけな宇宙船の船内は四人の連れを加味しても奇妙な孤独感を感じる。

 

だからだろうか?食事を終えたゼクダスは一人物思いに耽っていた。

 

「本当に、このままで良いのだろうか?」

 

パルデスから支給された通信機を手持無沙汰に片手で転がしながら、ゼクダスはボソリと呟く。

 

ジャンバード内の侍従の居室は一室の定員が二人だった事もあり、ゼロとナオに「兄弟で一室はどうか」と提案すれば、必然的にゼクダスは一人部屋となる事が出来た。

万が一、パルデスとの繋がりがバレてしまえば一大事なので、一人部屋の確保は好都合と言うべきだろう。

 

それ故に、考える時間がたっぷりと出来た事で疑問に思ってしまったのだ。『主人の行っている事が果たして正しいのだろうか?』という疑問を。

 

人の温もりを手に入れ、人の中で暮らしている内に、ゼクダスは主人が行っている救済が真に人々を救う事が出来るのかが分からなくなっていた。

限り有る命を持つからこそ、人々は今を必死に生きようとするし、他人へと手を差し伸べる事が出来る。

 

だが、パルデスの計画はそれを真っ向から否定する物だ。

確かにベリアルの侵略から“人々の命”を救うという意味では正しい事なのだろう。

しかし、本当にこのままで良いのだろうか?

 

「……」

 

無言のまま、答えを出す事も出来ずに、ゼクダスは寝台に横になる。

今は出ない答えも、一晩過ぎれば出て来るのだろうか?

まだ機械から人間に代わって日が浅いが故に、取り留めの無い思考が思い浮かんでしまう。

 

そんな都合の良い自らの思考に苦笑しつつ、ゼクダスは明日に向けて眠りにつくのであった。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

「パルデス・ヴィータですか……」

 

ゼロからの問いに、エメラナは思わず口をつぐんでしまう。

 

パルデス・ヴィータという存在は、エメラナにとってはよく分からない存在だった。

何せエメラナはまだ成人前で外交にまだ参加していなかった為、直接交流する機会はかなり限られていたからだ。

その上、エスメラルダを脱出する際に起こった出来事もまた、エメラナにとって答えを出す事が出来ない原因となっていた。

 

『パルデス・ヴィータはベリアル銀河帝国の幹部の一人だ』

 

口籠るエメラナの苦悩を察知したのだろう。

エメラナに代わり、ジャンバードがゼロの問いに答える。

自らが知るパルデスの情報を。

 

「奴は、そうか……」

 

薄々感じていた事とはいえ、現実を突きつけられたゼロはショックを受けた。

 

レイブラッドとの只ならぬ関係、バトルナイザーの開発者だという事実、そのどれもがベリアルとの関係を暗示している事は分かってはいた。

それでも信じたかったのだ。パルデスの理性を、そして良心を。

 

そんなゼロに追い打ちを掛けるかのように、ジャンバードはゼロへと更なる無常な事実を叩きつける。

 

『我々が手にした情報によれば、奴は銀河帝国の技術将校として軍の艦隊や機動兵器の製造、資源の管理、支配地域の統治を一手に担っている』

 

コックピットのスクリーンに、複数の銀河が映し出された星図が映し出される。

そして映し出された星図に被さるように、赤いフィルターが約半分を覆った。

 

『この赤い部分がベリアル銀河帝国の勢力下に有る場所だ、逆らう者は全て波動砲で惑星ごと葬り去られ、今現在で既に100億人を超える犠牲者が出ている』

「何だと!?」

 

凄まじい被害の数字を聞き、ゼロは怒りと後悔に顔を引き攣らせた。

既にそれ程の犠牲者が出てしまっているとは……

 

これも自分の不始末のせいだ、あの時きちんとベリアルを倒せていたならば、こんな事にはなっていなかっただろう。

所業を聞き、改めてゼロは決意した。

 

「……分かった、ベリアルも、そしてパルデスも絶対に倒す!!」

「待って下さい!!」

 

ゼロがベリアルと、そしてパルデスをも倒さんと決意を固めた所で、エメラナが叫んだ。

何事かとゼロが振り返れば、エメラナはゼロへと駆け寄り、その手を握って哀願する。

 

「パルデス・ヴィータを倒すのは、待っていただけないでしょうか」

『姫様!!あのメッセージを真に受けるつもりなのですか!?』

「私はそれでも信じたいのです、彼に一片でも良心が残っていると!!」

『しかし!!』

「待て!!」

 

哀願を続けるエメラナに対し、ジャンバードが思わず苦言を呈した事で口論が始まる。

そのまま熱を帯びて続きそうだと察知したゼロが未然に止めた事で二人は黙ったが、ジャンバードは何処か納得していないようだし、エメラナは悲し気に俯いてしまった。

そんなエメラナに対して、ゼロは先程の口論の内容の気になった部分を質問する。

 

「『あのメッセージ』って何だ?」

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