悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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第百三十一話【救うべきもの】

「ジャンバード」

『いざという時に判断を鈍らせるような事は承服しかねます』

「お願いします」

 

エメラナがゼロの質問に対して答えるよう、ジャンバードへと哀願する。

対するジャンバードはしばし渋り、エメラナを説得しようとしたが、その決意は固かった。

ジャンバードが諦めざるを得ない程に。

 

『……分かりました』

 

真剣な眼差しでジッと静かに待ち続けるエメラナに根負けしたジャンバードは、

今までベリアル軍による破壊活動を映していたディスプレイを切り替え、とある文章を映し出す。

 

《私の心は、遥かに君達に近い》

 

そこに有ったのは飾り気の無い、あまりにも端的な一言であった。

だが、少なくともその文章から読み取れるであろう事実だけは、ゼロにも読み取れた。

 

「……奴は本当は、ベリアルに従いたくないのか?」

『少なくとも、良い出会いとは言えなかった筈だ』

「ベリアル軍がこの宇宙で侵略活動を開始した当初、パルデスはベリアル軍を忌避し、かの星……ニュークシアから遠ざけようとしていたようです」

「ニュークシア?」

 

突然、エメラナの口から出た聞き慣れない名称に、ゼロは疑問符を浮かべる。

その様子を察知したエメラナは、ゼロへと『かの星』について語る。

 

「現在のエスメラルダ王、つまり私の父から数世代前の王の時代に突如として現れたとされる伝説の星です」

 

エメラナの話によれば、ニュークシアという星は数百年前に突如として何も無かった筈の宙域に現れ、エスメラルダとは多少の揉め事は有ったものの、基本的には鎖国状態で特に交流も無かった。

それが何故か、エメラナが生まれたのとほぼ同時期に、ニュークシアはエスメラルダに正式な国交を結ぼうと交渉して来たのである。

 

「パルデスは自分の事を『平行宇宙からやって来た人類』と言っていたそうです、それもたった一人で」

「そして滅亡する母星に代わる星として、ニュークシアを手に入れたと」

「彼は故郷の星の生き残りをニュークシアへと招く予定のようです、いつになるかは本人も分からないと言っていたようですが」

 

パルデスはたった一人で旅をし、そして新天地たる惑星……ニュークシアを見つけ出したのだ。

だが、移住に向けて準備を進めていた所にやって来たのがベリアル軍である。

 

ジャンバードが再びスクリーンの映像を切り替える。

今度の映像では、ベリアルを先頭にした大艦隊と、青い星を背にした大艦隊が対峙していた。

おそらくは後者の艦隊がニュークシアの物なのだろう。

ベリアル軍に対して一歩も引かずに大規模な砲撃戦を繰り広げている。

 

『パルデスがベリアル軍に対して例の兵器……波動砲を撃つまでは目撃していたが、途中でエスメラルダへ緊急帰還した為に何が有ったのかは分からない』

「その後、ジャンバードが帰還して報告している最中に、ニュークシア側からベリアル軍の傘下に入るという一報が入った事を考えると、おそらくは……」

「ベリアルに負けて、そのまま支配下に入ったって事か」

 

ゼロはその事実に、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

奴が単純にベリアルに恭順しているだけならどれだけ良かっただろうか。

本当は脅されて無理矢理従わされているのだとしたら、本来なら悪に墜ちる筈の無かった者が、自らの手を血で汚しながらも故郷を守る決断をする羽目になったのだ。

 

「ゼロ、大丈夫ですか?」

 

そう言って、心配そうにゼロの手を握るエメラナ。

ふと気づけば力を入れ過ぎた握りこぶしが震えており、ゼロはランの肉体に傷を付けてはいけないと慌てて拳から力を抜く。

 

「悪い、エメラナ」

「いえ、無理を承知で頼み込んだのは私ですから」

 

ホッとした様に笑うエメラナを見て、ゼロの顔にも薄く笑みが浮かぶ。

 

「良いんだ、元はと言えば俺達光の国の住人に責任が有る、だからこそ、パルデスは絶対に救ってみせる」

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