悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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第百三十三話【光と炎】

「仲良き事は良い事かな」

『明ラカに敵対してイルようにシカ見えないデスが』

「どうせ仲良くなるさ、どちらも似た者同士だからな」

 

ゆったりと椅子に腰を掛け、いつもと変わらず紅茶を嗜みながら、俺は宇宙空間で乳繰り合う(たたかう)ゼロとグレンファイヤーの様子を眺める。

正史通りなら戦いを通して相互理解を深めた二人は、絆を結んで共にベリアルへと立ち向かう戦友(とも)となるはずだ。

 

「それにしても、グレンファイヤーも少しぐらい話を聞いてやればいいのにな」

『話を聞かナイ理由の半分グライはパルデス様の造ったダークロプスだと分かった上デノ発言ですか?』

「……耳が痛いな」

 

グレンファイヤーの『戦って実力を認めた者としか話さない』という超絶面倒臭いスタンスを揶揄した俺に、アナライザーが耳の痛い返しを放ってくる。

まあ、確かにゼロが誤解された原因のいくらかは、俺が製造したダークロプスのせいだ。

 

だがそもそもベリアルの指示で作っただけで、俺に責任が有るかどうかは……いや、ごめんなさい、責任を感じております。

まあ、耳の痛い話はここまでにしよう、作ってしまった物はもうどうしようもない。

 

俺は諦め、いや、開き直ってゼロとグレンファイヤーの戦いの観戦に戻る。

 

「さて、ゼロもそろそろエンジンが掛かってきたかな?」

 

今までは穏便に対話しようと殴られても抵抗らしい抵抗をしていなかったゼロ。

しかし、このままでは話を聞いてもらえないと悟ったのだろう……いや、ゼロの事だから半分キレているという事も有るのだろうが。

 

得意気に頭部の炎をかき上げていたグレンファイヤーの背後で、ゆらりとゼロが立ち上がる。

 

「俺は認めた相手としか話はしねぇんだ……来な」

「チッ……やっぱこうなるか」

 

首をコキリと鳴らしながら、ゼロへと向けた指をクイッと曲げて挑発するグレンファイヤー、

対するゼロは、そんなグレンファイヤーの様子を見てグッと腰を低くして宇宙拳法の構えを取った。

 

睨み合う両者の様子は傍目から見ると敵対しているように見えるだろうが、その実、声色には隠し切れない高揚が滲み出ている。

両者の性格自体は違いが有るものの、強敵との手合わせに対しては思う事が同じなのだろう。

強者と拳を交える事の出来る喜び、それが敵意を完全に上回っている。

 

そして、ゼロの「行くぜ」の一声と共に、戦いは再開した。

 

「速っ!?今全く目で追えなかったぞ!?」

『スーパースローカメラの画像ヲ出しまショウか?』

「いや、そんなの後だ後!!やっぱりカッコいいわ、この映像は永久保存だ!!」

 

俺は思わずスポーツ観戦のノリで、椅子から立ち上がりその戦いへと熱視線を送る。

実に見応えタップリだ。

 

一瞬で間を詰めたゼロが、その勢いのままグレンファイヤーを殴り飛ばす。

モロにゼロの拳を受けたグレンファイヤーは吹き飛ばされ、凄まじい勢いで周囲に漂っていた小惑星に体を打ちつけられた。

 

衝撃と痛みに起き上がる事が出来ないグレンファイヤーに、ゼロは仕返しと言わんばかりに差し出した指をクイッと曲げる。

先程の自分の挑発をそのまま返された事でイラついたのであろう、グレンファイヤーは地面を拳で殴りつけた後、悪態を吐きながら立ち上がった。

 

「来な!!」

「舐めた真似しやがって……よっしゃあ、行くぜぇっ!!」

 

発奮するように炎を噴き上げながらゼロへと向かって行くグレンファイヤー。

接近した両者は、その勢いのままに拳と蹴りの応酬を続ける。

 

ウルトラマンレオという最高の使い手によって直々に叩きこまれたゼロの宇宙拳法、

長年戦い続けて来た経験と勘によって練り上げられたグレンファイヤーの武術、

 

それぞれの強みは両者の戦いをより一層アツい物にしている。

 

「よいしょぉっ!!」

「ぐあっ!?」

 

その中で、一瞬のゼロの隙を見出したグレンファイヤーが、上段蹴りを繰り出したゼロの片足を掴み上げて投げ飛ばす。

姿勢を崩されたゼロはどうにか起き上がろうとするが、それよりも早くグレンファイヤーが間を詰め、ゼロの腰を掴んで逆さに持ち上げた。

 

「行けっ!!そこだっ!!」

『パイルドライバーですネ』

 

興奮のあまり拳を振り上げ応援をする俺の横で、アナライザーが冷静に戦いを実況する。

さあ、戦いも佳境だ、ここでグレンファイヤーがパイルドライバーの要領でゼロの体を頭部から地面に振り落とした。

 

「コイツは効くぜぇっ!!」

 

《ズドォンッ!!》という轟音と共に、小惑星中を衝撃が走る。

凄まじい土煙と衝撃に吹き上がる炎が、周囲の視界を不明瞭な物にした。

 

しかし確かめるまでも無く、グレンファイヤーは自らの勝利を疑っていなかった。

この技を食らった者で、この後にマトモな戦闘を出来ていた者など居なかったからだ。

 

だが、次の瞬間、グレンファイヤーは自らの認識が誤っていた事を、身をもって知る事になる。

 

「ハッ!!」

「うわっ!?」

 

濛々と立ち昇る土煙の中、グレンファイヤーは突如として走った両足の痛みと、グルリと反転した風景に困惑する。

一瞬の後に、ゼロに足を掴まれてひっくり返されたという事実に気付くのだが、全ては後の祭りだった。

 

「おい、放せってんだよ!!」

 

今度はゼロが、グレンファイヤーの腰を掴んで逆さに持ち上げる。

そしてそのまま地面に叩きつけるかと思いきや、駒の如く回転させながらその体を上空へと投げ飛ばした。

 

「おわぁっ!?」

 

すかさずゼロも地面を蹴って上空へと飛び上がり、遥か彼方へと飛ばされて行くグレンファイヤーへ追いつくと、その腰を再び掴む。

 

「ありゃりゃりゃりゃ!?放せってんだよぉぉぉぉっ!!」

「おらぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

始まった急降下に、グレンファイヤーの絶叫とゼロの雄叫びが響き渡る。

そして、周囲に凄まじい衝撃と炎をまき散らしながら、ゼロは地面へとグレンファイヤーの体を叩きつけた。

 

「痛そう……普通なら延髄が砕けるぞ」

『人間じゃナイから大丈夫デス』

「そりゃあ分かってるけど……」

 

ゼロのエグイ技にドン引きしながら発した俺の言葉に、アナライザーがツッコミを入れて来る。

何だか今日のアナライザーは当たりが強いというか、辛辣というか……

 

なんて思っている内に地面に叩きつけられたグレンファイヤーが立ち上がった。

 

「あ゛~首痛ぇ」

 

というか、グレンファイヤーのタフさ凄いな。

あの凄まじい攻撃が「首痛い」程度で済むとは……

 

「てめぇ……何者だ?」

「やっと話を聞く気になったか」

 

おっと、どうやら二人の戦いも佳境のようだな。

俺は先程の興奮で乱れてしまった服装を直し、再び艦長席に腰を掛ける。

 

「俺達は、バラージの盾を探す者だ!!」

「ああ?バラージの盾だと?」

 

ゼロとグレンファイヤーの話し合い(たたかい)が、遂に核心へと迫ろうとしていた。

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