悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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ようやくスランプから抜け出せた、かも?


第百三十四話【炎の別れ】

先程まで戦いに興じていたゼロとグレンファイヤーの二人だったが、ゼロが発した『バラージの盾』という言葉にグレンファイヤーの動きがピタリと止まった。

顔の形状から表情を窺い知る事は出来ないが、その態度からはゼロの事を怪訝に思っているという事は分かりやすく伝わって来る。

 

「どこに有るか教えてくれ、ベリアルを倒す為に!!」

 

それでもゼロは、グレンファイヤーの顔を見つめながら真剣に言葉を続ける。

今のところ、炎の海賊が持つ情報が唯一の手掛かりなのだ、ここで諦める訳にはいかない。

 

しかし、そんなゼロの必死な様子とは裏腹に、グレンファイヤーは興醒めだと言うが如く溜息を吐きながらゼロの言葉に答えた。

 

「バラージの盾はなぁ、封印を解く欠片が無きゃ意味がねぇ……在処を知ってても、夢も希望もねぇんだよ!!」

 

途中までは胡乱気に答えていたグレンファイヤーであったが、最後の一言だけは隠し切れない怒りと無念がにじみ出る。

 

グレンファイヤーも、これまで炎の海賊(仲間たち)と共にベリアル軍と何度も戦って来ていた。

輸送船を襲って資源を奪ったり、見つけた軍事拠点を攻撃したりと、何度も何度も。

 

だが、ベリアル軍はあまりに強大であった。

どれだけ妨害しようと無尽蔵に増える上、エスメラルダを超える程の高い技術力を持つ敵艦やロボット兵器、全宇宙に網目の如く張り巡らされた監視網、そして……星を死に至らしめる大砲(波動砲)

 

かつて炎の海賊の仲間らと守ろうとし、そして少なくない仲間が犠牲になった『とある惑星』の惨劇を思い出し、グレンファイヤーの拳に力が籠る。

事情を知らないゼロでも、その心中を察する事が出来るぐらいに、グレンファイヤーの心は嵐の如く乱れていた。

 

そしてゼロは悟った、出会いはどうあれ、これ程までにベリアルという悪への怒りに燃える存在なら信頼できると。

 

「その夢と希望は、あそこに有る!!」

 

だからこそ、グレンファイヤーを鼓舞するかのように、ゼロは高らかに言い放つと後方に待機するジャンバードを指さす。

ベリアルへと対抗する為の切り札、それに繋がる手がかり、本来なら見ず知らずの相手に伝えるような事ではない。

しかし、ゼロは惜しまない、相手の事を信頼に足ると確信したから。

 

「焼き鳥?」

 

俄かに灯った希望の光に、グレンファイヤーは半信半疑ではありながらもジャンバード(焼き鳥)へと視線を移す。

 

己の脳内でこの事実を反芻するグレンファイヤーと、瞳に宿した強い光でそれを見つめているゼロ。

僅かな沈黙が周囲を支配していたが、()()()()に気付いた二人はハッとした様子で後方を見上げる。

 

そしてほぼ同時に、ジャンバードのコックピットでけたたましくアラームが響いた。

何事かと戸惑うエメラナとナオへ、ジャンバードが慌てた様子で報告する。

 

「大変です、ベリアル軍です!!」

「えっ!?」

 

コックピットの映像が切り替わり、メタンの海の外縁部の映像が映し出された。

漆黒の宇宙の中で輝く星の瞬き……いや、違う、あれは宇宙戦艦のワープアウトだ。

 

宇宙空間に光が現れると共に、戦艦が増えていく。

鋼鉄の武骨な艦体に、ベリアルのウルトラサインが紋章の如く刻まれた艦首、ベリアル軍の主力戦艦であるブリガンテだ。

 

「見つけましたよ、炎の海賊」

 

そしてそのブリガンテの一隻、旗艦とも言えるその船の甲板の上に立つ巨人。

 

「私はベリアル帝国軍、暗黒参謀ダークゴーネ……我が軍に逆らうとは愚かな者達です」

 

その巨人――暗黒参謀ダークゴーネが鋭い鉤爪の付いた手を前方へと翳すと、ブリガンテから無数のロボット――レギオノイドが飛び立つ。

レギオノイド達はゼロや炎の海賊達の進行方向を塞ぐように展開し、徐々に包囲を狭めていく。

 

「よう船長、こりゃあ流石にやべぇんじゃないのか?」

「炎の海賊は!!」

「決して逃げん!!」

「受けて立つ!!」

「……だよなぁ」

 

敵に包囲されつつある緊迫した状況に、グレンファイヤーが船長らの意見を聞きに行くが、三人の船長はいずれも交戦を辞さないという態度だった。

まあグレンファイヤーにとってはこの回答も予想の範疇である。

 

――どんな強い敵にも物怖じせず、己が意思を貫き通す強さ――

 

それが有るからこそ、仲間として炎の海賊に付いて来ているのだから。

グレンファイヤーは不敵に笑うと、自らの頭の炎をかき上げて敵を見据える。

 

「んじゃあ、まずは俺が……」

「行く必要は無い!!」

「はぁ!?」

 

そのまま敵へと突っ込んで行こうとするグレンファイヤー。

露払いは俺の仕事だと言わんばかりに気合を入れていたのだが、ガルが引き留める。

 

理解できないとでも言うかのように、思わず間の抜けた声を漏らすグレンファイヤーだったが、

そんなグレンファイヤーを説き伏せるかのように、ガルは真剣な眼差しでグレンファイヤーを見つめる。

 

「お前の力を使うべき本当の時が、いつか必ず来ると、ずっと思っておった」

「なっ、何言ってるんだよ……」

 

今までずっと一緒に戦って来た、苦楽を共にしてきた仲間からの突然の告白。

あまりにも突然の事に戸惑うグレンファイヤーへ、今度はギルが語り掛ける。

 

「彼らと共に行け、そして、バラージの盾の在処を教えてやるんじゃ」

「ちょ、ちょっと待ってくれよ!!」

「元気での~」

「おいっ、船長っ、皆ぁぁぁっ!!」

 

そしてグルの、軽い調子とは裏腹の、最後の別れの挨拶とでも言うべき言葉と共に、アバンギャルド号がグレンファイヤーを宇宙空間に放り出して敵へと向かって行く。

取り残されたグレンファイヤーは、ただ茫然と宇宙空間に浮きながら、先程のガルの言葉を思い起こす。

 

「俺の力を使う、本当の時……」

 

突然の事態に、グレンファイヤーの理解が追いつかない。

だが、そんなグレンファイヤーを取り残し、事態は進展して行く。

 

「馬鹿野郎!!ボーっとしてんじゃねぇ!!」

「っ!?」

 

ゼロの言葉にようやく我に返れば、目の前には迫りくる多数のレギオノイド、取り囲まれるように包囲されていくアバンギャルド号の姿が有った。

考えるのは後だ、今は目の前の敵を倒さなければならない。

 

一足先に敵の大群へと向かって行くゼロの背を追い、グレンファイヤーも敵軍へと向かって行こうとした。

 

『実にお見事な戦いぶりだった、ウルトラマンゼロ、そしてグレンファイヤー』

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