悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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第百三十五話【開戦!スペースニトロメタンの海】

擬音で表すなら《ピタリ》という言葉が相応しいぐらいに、ゼロとグレンファイヤーの動きが止まる。

戦いを続けるアバンギャルド号へ加勢しようとした所へ、突如として聞こえた声。

 

その声の主に、二人とも覚えが有った。

 

ゼロからすれば、異空間で共に困難へと立ち向かい、そして戦い抜いた仲間の声、

グレンファイヤーからすれば、ベリアルの尻馬に乗って星々を消し飛ばした悪魔のような男。

 

方や困惑、方や怒り、それぞれがそれぞれの想いを馳せながら、その名を呼ぶ。

 

「「パルデスっ!!」」

『久方ぶりの再会といったところかな?』

 

この鉄火場にそぐわぬ落ち着き払った飄々とした声。

何故か膜の向こう側から通したようなくぐもった声ではあったが、間違い無くベリアル軍の幹部であるパルデス・ヴィータその人の声であった。

 

迸る怒りに握られたグレンファイヤーの拳が、握力のあまり血管を立ててギチリと軋む。

 

そう、パルデスが行った惑星規模の粛清は、炎の海賊にとっても無関係ではなかった。

ベリアル軍の魔手から星を守ろうとして諸共消し飛ばされた者、突如として自らの故郷を亡き物にされた者、

炎の海賊のメンバーの中にも、パルデスの凶行の被害者が居るのである。

 

「高みの見物か?今度こそぶっ飛ばしてやる!!出て来やがれ!!」

 

激怒するグレンファイヤーの炎が、感情の高ぶりに合わせてノッキングするかのように瞬きながら、周囲に火の粉をまき散らす。

そのあまりのエネルギーの高ぶりと熱さに、ゼロの背筋に悪寒が走った。

 

『私は君達に会いに来たのだ、そう慌てずとも良いだろう、それに……もう既に、私はココに居るのだよ』

「何を言ってる?」

 

パルデスの、何らかの示唆を含むであろう言葉に困惑する二人。

隙だらけにも見えるそんな二人へ、ジャンバードが警告するかのように声を張り上げる。

 

「気を付けろ、奴は高度なステルス技術を保有している!!言葉から察するに、既にこの近くに潜伏しているはずだ!!」

『ふむ、やはりデータは共有しているか、エスメラルダ軍の練度も侮れないな』

 

エスメラルダの主力艦隊が全滅する前に、かろうじて残してくれた敵の情報。

しかし、自らの事を知られているという事実が露呈しても、パルデスは一切動じる事は無い。

 

『……まあ、そのエスメラルダ軍も、この自動惑星ゴルバの前には鋼の棺桶に過ぎなかったのだがね』

 

そして、嘲笑うようなパルデスの声が聞こえた次の瞬間、ゼロとグレンファイヤーの目の前の宇宙がグニャリと歪む。

呆気にとられる二人の目の前で徐々に宇宙は歪み、やがて空間の皮を剥いでいくかのようにゆっくりと巨大な宇宙要塞……自動惑星ゴルバが姿を現した。

その威容を初めて目の当たりにしたゼロ達や炎の海賊達、そしてデータでは既知だったジャンバードさえも言葉を失う。

 

これ程の巨大な要塞、それも一隻で文明圏最強の(エスメラルダ軍)艦隊を屠る程の強力な兵器が、誰にも知られずに至近にまでやって来る事が可能という事実。

それは言葉にするまでも無い程にベリアル軍の、いや、パルデス・ヴィータの技術力の高さを知らしめるものであった。

 

「さて、改めてご挨拶を、私は『ベリアル銀河帝国軍技術参謀 パルデス・ヴィータ』だ」

 

宇宙空間に悠然と浮かぶゴルバから、パルデスの声が響く。

その声の節々から感じ取れる余裕の笑みが、グレンファイヤーの怒りに火を注いだ。

 

「その下らねぇ減らず口、今すぐ止めてやる!!」

「ちょっ、待て!!」

 

怒りのあまり一瞬で火の玉のように燃え上がったグレンファイヤーが、ゼロの制止を無視してゴルバへの突進を開始する。

その体は熱の高まりで白光を放ち、凄まじい熱線を周囲に振りまく。

そして自らの得物であるファイヤースティックを取り出し、大きく振りかぶると勢いのままに先端を思い切り突き立てた。

 

≪バァンッ!!≫

 

だがファイヤースティックの先端がゴルバへと接触しそうになった瞬間、まるで膜のような層に阻まれる。

グレンファイヤーはその膜を渾身の力で突き破ろうとするが……

 

「おわぁぁぁっ!?」

 

暫く押し合いをした後、グレンファイヤーの体が弾き飛ばされた。

かなりの勢いで弾き飛ばされたが、どうにか姿勢を整えてゴルバを睨む。

 

『落ち着きたまえ、無駄な行為は体力を削ってしまうぞ?』

 

ゴルバの表面に水面のような波紋が広がり、しばらく後にまた平静を取り戻していく。

その表面には一切のダメージは見られなかった。

 

「マジかよ……」

 

流石のグレンファイヤーも、この状況に焦りを覚え始める。

前方には全く攻撃が通じない敵(自動惑星ゴルバ)、後方には数で圧倒して来る敵(ダークゴーネ)、どちらも一筋縄ではいかないだろう。

思わず後ずさった所へ、ゼロからの声がグレンファイヤーに突き刺さった。

 

「ハッ、ビビッてんのか?」

「あ゛あ゛っ!?」

 

突然の挑発に後ろを振り向けば、ゼロが不敵な笑みを浮かべている。

その瞳の光は爛々と黄金に光り輝き、一つの陰りも見えない。

 

自らの弱さを認めるようで不本意ではあったが、グレンファイヤーが心強さを感じるぐらいに、今のゼロの姿は猛々しかった。

 

「同じベリアルと戦う仲間なら、シャキッとしやがれ!!」

 

言いながら、ゼロは向かって来たレギオノイドを、取り出したウルトラゼロランスで切り裂く。

呆気にとられるグレンファイヤーを見据え、ゼロはランスの切っ先をグレンファイヤーへと向ける。

 

「ベリアルはそんな甘い相手じゃねぇ……テメェの炎はその生温さが限界か?気張りやがれっ!!」

「……好き勝手言うじゃねえかぁ!!」

 

ゼロの分かりやすい挑発にグレンファイヤーはその体の炎を再び燃え上がらせ、眼下に見えるアバンギャルド号へと突進して行く。

ブリガンテによるビーム砲の集中砲火に応戦していたアバンギャルド号だったが、その弾幕の間を掻い潜り、一体のレギオノイドが上部甲板に取り付いた。

そして、両腕のビーム砲を艦橋へと向ける。

 

「うぉっ!?」

 

ガル、ギル、グルが無駄だと分かりつつも思わず両手で顔を庇う。

しかし、レギオノイドのビームは発射される事無く、グレンファイヤーのファイヤースティックで貫かれた事により機能を停止した。

 

その光景を見ていたゼロは再びゼロランスを構えると、今度はゴルバ――パルデスの方へと鋭い眼光を向ける。

 

「後で話してもらうからな」

『私の口を開きたければ、その価値を証明したまえ』

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