『戦艦接近、このままでは危険です!!』
迫り来る危機を察知したジャンバードが、緊迫した声で乗員へと危険を知らせる。
一進一退を繰り返していたゼロ、ジャンバード、グレンファイヤー、アバンギャルド号。
ベリアル軍を相手に一騎当千の戦力を持って善戦していたものの、数で勝る相手に対して徐々に劣勢へと陥り始めていた。
「まだ敵の戦艦が残ってるってのに……」
胸の中央で赤く点滅を繰り返すカラータイマーに、ゼロは悔し気に眼前へと敵を睨みつける。
それに、敵の主戦力であろうダークゴーネとザウラーは、一切の負傷も無く健在だ。
――どうすれば良い?――
体力が限界に迫る中、ゼロは焦りを隠せずにいた。
エメラナとナオだけでも逃がすか?
いや、今この体はランの物でもある。
安易に己が身を投げ打つ訳にはいかない。
「クソッ」
己の力不足を自覚し、悔しさのあまりランスを握る手が引き締められ、ギリリと音を立てる。
一体どうすれば良い?どうすれば……
状況を打開しようと考えを巡らせるゼロだが、今この場で取れる手は無い。
しばしの後、ゼロは覚悟を決めて、右手に握ったランスを構える。
限界を迎えようが、戦うしかない、もうそれしか方法は残っていなかった。
が、ゼロのそんな悲壮とも言える覚悟は、実行される事無く霧散する事になる。
「こっから離れろ、ゼロ!!」
接近して来る敵からゼロを庇うように、背後から接近して来たグレンファイヤーが前に立つ。
そしてアバンギャルド号へと振り向くと、緊張した面持ちで声を張り上げる。
「船長達も急いで、ジャンプの準備を!!」
船長達にワープ、つまりは宙域からの避難を促すと、グレンファイヤーはマッチを擦るかのように、親指で胸のコアを一擦りする。
すると≪バチッ!≫という音と共にコアが燃えるように赤熱し、その炎はグレンファイヤーの体を覆って行く。
「ベリアル軍共、纏めて吹き飛ばしてやるぜ!!」
グレンファイヤーの体を覆う熱はどんどんと高まり、熱と共に眩い光に包まれていく。
その熱と光は、過酷な宇宙空間を身一つで飛行するゼロですら、思わず呻きながら一瞬目を背ける程に苛烈であった。
「ファイヤァァァァァァッ!!」
そして、宇宙中に響かんばかりのグレンファイヤーの雄叫び。
その響きは魂を燃やす音そのものに思え、思わず不安になったゼロがグレンファイヤーへ問いかける。
「何をする気だ?」
「ヘヘッ、来たキタァァァッ!!」
その問いにグレンファイヤーが答える事は無かった。
が、眼下のスペースニトロメタンの海へと視線を向けている様子から、ゼロはグレンファイヤーが何をやろうとしているのかを悟る。
『己の身の炎で、この莫大な量のガスを爆発させようとしているのだ』と。
「バラージの盾は“鏡の星”に有る」
「鏡の星?」
「ああ、“二次元の民”を探せ」
バラージの盾に関する手掛かりをゼロに伝えると、グレンファイヤーは笑みを零す。
表情こそ変わらないものの、ゼロは相手から発せられる雰囲気で、その満足気な様子を察する事が出来た。
戦士としての誉、仲間達への挺身、それに対する充足感を。
「奴に先にバラされちまったが、戦士の流儀として改めて名乗らせてもらうぜ、俺の名はグレンファイヤー」
「グレンファイヤー……」
その名を反芻するようにゼロが呼ぶと、グレンファイヤーは改めて正面の敵を見据える。
「仲間ってのは良いモンだよな、ヘヘッ、楽しかったぜ!!」
「よせっ!!」
ゼロの制止を無視して、グレンファイヤーは雄叫びと共に突っ込んでいく。
だが、向かった方向に有るのはスペースニトロメタンの海ではなかった。
「死んでいった仲間への手向けだ、テメェには地獄への道連れになってもらうぜ!!」
そう啖呵を切り、グレンファイヤーはロケットの如く炎を吹き出しながら、一直線に目標へと向かって行った。
仲間の
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「グレンファイヤーが燃え出したな」
『元カラ燃えてイルと思イますが』
「細かい事は良いだろう」
グレンファイヤーの全身が白熱し、まるで恒星の如く煌く。
その光り輝く姿は実に神々しくも思えるし、人外の生命の神秘を感じさせるに十分なものだ。
おそらく、この後にグレンファイヤーは仲間を逃がす為にスペースニトロメタンの海に突っ込んで、巨大なガス爆発を起こすはず。
そしてゼロ達は、グレンファイヤーから伝えられた手掛かりにより、鏡の星へと向かう筈だ。
「算段をつけねばな……」
俺は今後の事を考えながら、この宙域から離れる為にアナライザーへワープの指示を出そうとした。
だが、アナライザーの行動により、俺の言葉は遮られる事になる。
『グレンファイヤーが、ゴルバに接近して来マス』
「ハァ!?」