「さて、感動するのもここまでだな」
ゼロとグレンファイヤーの胸熱シーンを一頻り楽しんだ後、アナライザーが用意したレースのハンカチーフで涙をぬぐう。
このレースのハンカチーフは良い手触りだな……ふむ、支配惑星B-054産の手工業品か、なるべく破壊されないようにしておこう。
「なるべくなら戦力を温存しておきたかったが仕方ない、近隣の支配惑星から援護を呼んでくれ」
『コノ近くだと、支配惑星B-066に駐留シテいる第28統治艦隊が最も早ク駆け付ける事が可能デス』
「第28統治艦隊か」
【統治艦隊】というのは、ベリアル軍の侵略が成功した星に配置される、いわゆる抑止力である。
最低でも5隻程の波動砲搭載艦を擁し、レジスタンスによる武装蜂起や惑星開放の阻止、そしていざという時は波動砲の斉射により反乱惑星の抹消を行う。
[第28統治艦隊]
・ドレッドノート級:5隻
・プレアデス級:10隻
・ブリガンテ級:30隻
「アナライザー、『承認』だ」
『了解、現宙域へノ到着予想、約15分』
俺は画面に表示された第28統治艦隊の全容を確認し、アナライザーへ承認の指示を出す。
これで第28統治艦隊は此方へとやって来てくれるだろう。
後はゼロの説得に応じてグレンファイヤーが諦めるだけ……と、思っていたのだが。
≪ドォンッ!!≫
「っ!?」
突如として、衝撃と共にゴルバが激しく揺れる。
一体今度は何なんだと思い、動揺しながらも外を見れば、アバンギャルド号が全砲門を此方へと向けていた。
奴ら、イカれているのか?
「馬鹿な、グレンファイヤーごと葬るつもりか?」
呆然とした俺の言葉を、グレンファイヤーが鼻で笑い飛ばす。
「ハッ、船長らはなぁ、テメェの愉快なお仲間と違って仲間を見捨てるなんてしねぇよ!!」
グレンファイヤーの得意げな声、そしてそれに重なるように、アバンギャルド号の船長らが猛々しく叫ぶ。
「その通り!!」
「我らが仲間を見捨てる事は無い!!」
「絶対にな!!」
一切の悲壮感無く笑顔を浮かべるその様子に、俺は悟った。
奴らはグレンファイヤーを見捨てるのではなく、仲間が絶望的な状況を切り抜けられると信じているのだ。
……ちょっと待て、この流れはマズいのでは?
この後に何が起こるかを予想して冷や汗を流す俺。
その目の前で、グレンファイヤーは当たって欲しくなかった予想を口に出した。
「ゼロ、俺はお前がベリアルの野郎を倒すと信じてる」
「グレンファイヤー……」
「だから、お前も俺を信じろ!!心配すんな、俺は絶対に死なねェからな!!」
マズイ、マズイマズイマズイっ!!
絶え間ない砲撃に揺れ続けるゴルバの中で、俺は状況の不味さに再び焦る。
当たって欲しくない予想が現実になりつつある。
そしてその予想を裏付けるかのように、ゼロはしばしの逡巡の後に、その顔を上げた。
「いや~相変わらずイケメンですね」と現実逃避したくなるぐらいに、黄金の双眸は決意に満ち満ちた光を湛えている。
「死ぬんじゃねぇぞ、グレンファイヤー!!」
「あたぼうよ!!あの世の死人に俺は熱すぎるだろうからなァ、すぐに帰って来てやるぜ」
「……ヘヘッ、その顔と減らず口をもっかい聞くまで、星が爆発しようと待っててやるからな!!」
啖呵を切ると共に、ゼロは腕をゆっくりとL字型に組む。
その構えから繰り出されるであろう技は、ウルトラシリーズのファンからすれば簡単に分かるだろう。
「待て!!話せば分かる!!」
「もう遅ぇよ!!」
嘲るような言葉を返して来るグレンファイヤーの向こうで、構えを取ったゼロの腕が発光し始める。
あ、ダメだコレ。
「食らいやがれ、ワイドゼロショットォッ!!」
光が最高潮に達すると共に、ゼロの腕から黄金の光線――ワイドゼロショットが発射された。
発射された光線はゴルバの頂上部、つまり俺が居る艦橋部分へと真っ直ぐ向かって来る。
「おわぁぁぁぁぁっ!?」
―――――――――――――――
ゼロが発射したワイドゼロショットは、ゴルバの頂上部分に着弾した。
凄まじい轟音と共に、波紋のようにシールドが揺らぐ。
暫くは耐えていたのだが、グレンファイヤーの命がけの攻撃と、炎の海賊による援護射撃による負荷により、とうとう限界を迎える。
≪ドカァァァァン!!≫
とうとうワイドゼロショットの奔流がシールドを貫き、ゴルバ頂上部へ直撃。
それと同時に、グレンファイヤーもシールドを破り、ゴルバ内部へと突入する。
≪グォォォォォン……≫
外装を彩っていた光が点滅と共に消失し、代わりにグレンファイヤーによるものであろう小爆発がゴルバ中で巻き起こり、糸が切れたようにスペースニトロメタンの海へと落下して行った。
≪カッ!!≫
ゴルバがスペースニトロメタンの海へと着水し、炎がガスに引火する。
一つの惑星帯を占めるガスが全て誘爆して行くその光景は、まるでこの世の終わりのようだ。
凄まじい高熱により発せられた白光に、周辺が包まれていく。
「小癪な真似をっ!!」
悪態を吐きながら、ダークゴーネは自らの搭乗する旗艦をワープさせる。
何隻かのブリガンテは爆発に飲み込まれ破壊されたが、旗艦がワープした事で連動して旗下のブリガンテもワープしていった。
「おわぁっ!?」
「緊急ワープ!!」
広がる爆炎はアバンギャルド号へも襲い掛かり、艦体を激しく揺らす。
そんな中でも冷静な操舵手の指示により、間一髪、アバンギャルド号は宙域からのワープに成功する。
だが、そんな中でジャンバードだけはワープしなかった、いや、出来なかった。
短い旅とはいえ、仲間として尽力し『ベリアル打倒』並びに『エスメラルダ奪還』の糸口を見つけてくれたゼロを、このまま置いて行く事に迷いがあったからだ。
「ハァッ!!」
逃げ切れないと悟ったゼロが、僅かに残されたエネルギーを振り絞ってウルトラゼロディフェンサーを繰り出す。
エネルギーの壁に容赦なく襲い掛かる炎の奔流を、必死になって堰き止めるゼロ。
だが、炎は容赦無くジャンバードとゼロを襲う。
そして……