悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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第百四十四話【それぞれの不安】

「フゥ……」

 

拳を下段に構えるナオ。

数度の深呼吸の後、ゼロを見据えて躍りかかる。

 

「ヤァァッ!!」

 

威勢の良い雄叫びを上げながら伸ばした手をゼロへと振り下ろし、チョップを決めようとする。

しかしそこは歴戦の戦士であるゼロ、素早く腕をクロスし、悠々と受け止め防いだ。

 

ジャンバードの広いコックピットルーム内で、ゼロとナオは拳法の稽古をしていた。

ナオは父直伝のアヌー拳法を、ゼロはウルトラマンレオ直伝の宇宙拳法を繰り出し、互いに声を出し合いながら組み手を繰り返す。

 

まあ稽古とはいえ、じゃれ合いに近い物ではあるのだが……

 

「ふふっ……」

 

それでも、今の絶望的とも言える状況の中では、これぐらいの明るいおふざけの方が心地良い。

少なくとも、笑みを零しながらこの稽古を見守るエメラナはそう思っていたし、そんな主人の久しい笑みに、ジャンバードは多少の煩さを我慢して、この状況を黙認していた。

 

「ハッ!!」

「おっと」

 

しかし、何度目かの組手の最中、エメラナはゼロの“ある変化”を見つける。

 

ナオが振り下ろした腕を掴んだゼロの手、その手首に装着されていたブレスレット、

三つの宝石が光り輝いていた筈のその輝きが、まるで電灯でも消したかのように一つ消えてしまっていたのだ。

その変化を見たエメラナは、ゼロと出会ってから今までの行動を思い出し、ある考えに思い至る。

 

『もしかして……』

 

ある考えに至ったエメラナが、それを口に出そうとした。

しかし、自分が今それを聞いてしまって良いのだろうか?

もしも自分が感じた不安が現実だった場合、その迫り来るリミットに耐えられるのだろうか?

 

エメラナは無邪気な笑みを浮かべながらゼロとの稽古を続けるナオを見る。

この事を不用意にナオに伝えてしまえば、不安を与えてしまうかもしれない。

 

しばし悩んだ後、エメラナは顔を上げ、壁際で二人の稽古を眺めるゼクダスへと視線を移した。

 

「すみません、少々よろしいでしょうか?」

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

「そうか……」

 

『少しゼクダスに用が有る』とゼロとナオに伝えた後、エメラナはゼクダスをコックピットの外へと連れだし、自分の感じたとある懸念を相談した。

エメラナとて不要な不安を広げるのは本意ではなかったが、故郷を占領されるという出来事を経験したエメラナには、これ以上の不安を自分一人で抱えられる自身が無かったのだ。

 

「あの腕の宝石が、ゼロが変身出来る回数を示している、と」

「あくまで私の推測ですが……」

 

その不安とは【ゼロの変身】に関する物だった。

出会った当初は三つ輝いていたゼロのブレスレットの宝石、それが今になって一つ消えてしまった理由、

どう考えても、あの変身が何らかの影響を与えている事は明白だ。

 

そして元の姿――光の巨人(ウルトラマンゼロ)への変身の前後で変わっているという事は……

 

「……だが、俺達にはどうしようもないぞ」

 

しかし、それもゼロの自己判断の上での変身だ。

変身回数が限られるというのなら、それは危機的状況という事である。

 

つまりは、ゼロが変身を迫られるような状況で、自分達に出来る事は殆ど無いだろう。

 

「それは承知の上です、しかし……」

 

ただ、それでもエメラナにとっては、放っておけないのだろう。

お優しい姫様だ……と思いつつ、一つ溜息を吐き、ゼクダスはしばしの考えの後にエメラナを正面から見据える。

 

「見守るだけだ、アイツの意思を曲げる事は出来ないだろう」

「ありがとうございます……貴方も悩みが有る中で、本当に申し訳ありません」

「……」

 

気付いていたのか、と内心で思いつつ、お優しい姫だと思っていたエメラナの思わぬ洞察力に、ゼクダスは軽く目を見開いた。

 

そう、ゼクダスはパルデスの安否に関して気に掛けていた。

今はゼロ達に肩入れしているが、自らの創造主であり恩も有る。

表面には出ないようにしていたが、やはり見る人が見れば浮足立っている事が丸分かりだったのだろう。

 

「……あの二人の故郷、アヌーの事を気に掛けていたんだ」

「そう、ですか……」

 

ひとまず、ゼクダスはアヌーの事を口に出して誤魔化し、エメラナもどこか気まずそうに固い口調で頷く。

そしてそれきり、二人は黙って窓の外を見ていた。

 

この何とも言えない沈黙の時間は、ジャンボットが次の目的地への到着を知らせるまで続いたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ここまでは敵ながら天晴、よくやったと褒めてやろう、グレンファイヤー」

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