はたして主人公はどのような道を歩むのか……
ご期待ください。
第十二話【具現する記憶】
仕事休みのある日、その日はどうにも暇だった。
俺は世間一般で言われる『パラサイトシングル』と言われるような奴で、仕事をしつつも両親の居る実家で暮らしていた。
リビングのソファーで寝ころびながらTVを見てると、買い物から帰って来た母親がリビングに入って来る。
「掃除するから外出してくれる?」
「はーい」
面倒くさいが、母親を怒らせるともっと面倒くさい。
俺は上下ラフなスウェットを着て、玄関へと歩いて行く。
「車使っていい?」
「鍵は玄関の棚の上」
了承を示す母親の声に俺はスニーカーを履きながら、財布と車の鍵を取る。
掃除機をかけ始めたので聞こえないだろうとは思ったが、一応「行ってきまーす」と一言声をかけ玄関を出た。
そしてガレージに停めてあった軽自動車に乗り込むと、街へと繰り出した。
「さて、何をしようかなっと……そういえば」
ふと助手席に置いてあった長財布を開けてみれば、そこには一枚のクーポン券が。
[映画割引クーポン500円]
「最近映画館に行ってなかったな、たまには行ってみるか」
そう考え、俺は近所の映画館に足を運んだ。
ショッピングモールに併設されている為に、休日になると駐車にも一苦労な場所なのだが、幸いにも平日な為に楽に車を停める事が出来た。
「さて、どんな映画がやってるかなーっと」
車を停め、ショッピングモール内を移動した俺は、映画館の入り口でポスターに掲示された上映スケジュールを眺める。
最初は何か一本ぐらい時間が合うだろうと思っていたが、実際にはほとんどの映画が『上映されている』もしくは『次回上映一時間後』といった有様で、俺は思わず唸る。
「都合よくいかないもんだな」
しばし上映スケジュールを確かめた俺は踵を返して立ち去ろうとしたが、ふと、上映スケジュールの最下層にある映画が目に入った。
【ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国】
下の方に有ってパッと見では気づかなかったが、あと10分ほどで上映開始と時間的にも都合がいい。
子供向けの映画ではあるが、暇つぶしぐらいにはなるだろう。
「たまにはこういうのも良いか」
俺は窓口でチケットを買い、ポップコーンとドリンクを揃え、既に入場開始している為に足早に入場口へと歩いて行った。
暇つぶしになるだろうと思った映画、これが自分の人生、ひいては転生後にも重大な影響を与える事など夢にも思わずに。
―――――――――――――――
「あたたたた……」
深い眠りから意識が覚醒した俺は、二日酔いのせいでまるで頭を鐘で叩かれたような鈍い痛みに、思わず頭を手で押さえた。
辺りを見渡せば乱雑に転がるカラになった酒瓶達、そして詰めてあったはずなのに、一部分だけポッカリとスペースが空いた倉庫の一角。
どうやらレイブラッドはしっかりとバトルナイザーを回収していったようだ。
「多分、ココって別の世界なんだよな……」
意識を失う前にレイブラッドが言っていた事が真実なら、俺は平行宇宙へと飛ばされたという事なのだろう。
実際に確かめない限りはまだ分からないが。
「それにしても懐かしい夢を見た。」
頭痛で調子が悪いながらも上半身を起こし、意識を失っている間に見た夢の事を思い出す。
一度目の人生の時に映画館へと見に行った、映画【ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国】
思えばこれが俺とウルトラマンとの出会いだった。
平行宇宙を股にかけた壮大なストーリー、銀幕内を所狭しと活躍する魅力的なキャラクター達。
確かに子供向けの映画ではあったが、俺はこの時初めてウルトラマンという作品に魅了された。
それから俺はシリーズを見るだけでなくグッズも集め始め、そのグッズを置くためにとうとう実家から自立した。
いわば、ウルトラマンシリーズは俺の人生を動かしてくれた作品なのだ。
「そこからSFにハマって、宇宙戦艦ヤマトも見始めたんだよなぁ……」
そうしみじみと思い出に浸る。
一回目の人生は短命ではあったものの、それなりに充実した人生だった。
遠い昔の事ではあるが、大切な記憶だ。
そこまで考えて、ふと、ある事を思い出す。
「そういえば、俺はブルトンの力で飛ばされたんだよな」
ブルトンが初代ウルトラマンに出て来た時はあくまでも『四次元を操る怪獣』という扱いだった。
そして大怪獣バトルに出て来た時は『様々な世界から怪獣を呼び出した』という設定が追加され、
さらにウルトラマンZに登場した時は『引き込んだ者の深層心理に有る思いや願いを現実にしてしまう』という設定が追加されたはずだ。
それを思い出し、俺は跳ねるように立ち上がって駆け出した。
倉庫を出て、通路をひた走り、一番近い場所に有る窓へとかじりつく。
射す日光の眩しさに目を細め、その光に目が慣れた頃に見えた光景に、俺は絶句した。
「ウッソだろオイ……」
窓の外に広がっていたのは一面の森、遥か向こうの地平線にまで広がる森の間には、雄大な大河が流れている。
そこまでなら普通の光景だ、というかクシアの住人達を移住させるのに適しているとさえ言えるかもしれない。
……ただ一つ、
地面の所々から生えた巨大な岩、その岩は普通の茶色でも黄土色でもなく、透き通った緑色に輝いていた。
「エメラル鉱石……」
それが指す事実はたった一つ、その事実に至り、俺は背筋に悪寒が走った。
ここは映画【ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国】の舞台であり、ウルトラマンゼロとカイザーベリアルが死闘を繰り広げた宇宙。
《アナザースペース》
どうやら俺は、その宇宙へと来てしまったらしい。
とうとうアナザースペースへとやって来ました。