そして感想を書いてくれた方、遅ればせながら真にありがとうございます。
「ハァ……ハァ……」
漆黒の宇宙空間の中、とある宙域に蛍の如く光る場所が有った。
赤や青、時には緑など、所々が薄っすらと光るその光景は実に神秘的である。
ここがかつて『スペースニトロメタンの海』と呼ばれた場所の成れの果てとは、誰も気づかないぐらいに。
「ちぃっとばかし無茶し過ぎたな……」
無重力に巨体を任せて漂いながら、グレンファイヤーはボンヤリと所々で光る灯――ニトロメタンの残り火を眺める。
全身全霊を持ってゴルバへと突入し、そのままニトロメタンの海へと落ちて行ったグレンファイヤーの体は、生命維持に必要な最低限を除いて殆どのエネルギーが枯渇した状態であった。
胸のコアは蝋燭の如く揺らめき、その
だが、全身の虚脱感に苛まれながらも、グレンファイヤーの心は満たされた状態であった。
何せ敵幹部の一角であるパルデス・ヴィータを葬る事が出来たのだ。
「へへっ、ざまあカンカンだぜ」
パルデス自身は武闘派では無かったものの、恐怖による他惑星の支配・統治やベリアル軍の装備等の物資調達など、後方支援的役割を担っている事は炎の海賊側でも把握していた。
そのキーマンを失った事で、ベリアル軍の侵略行為もかなり遅延するだろう。
それに、惑星チシタリアの壊滅の件も有る。
あの惨劇で惑星の住人のみならず、駐留していた少なくない数の炎の海賊の仲間達も犠牲になった。
『これで死んで行った仲間達も少しは浮かばれる』と思いつつ、グレンファイヤーは最後の力を振り絞り、普段とは比較にならない程の遅い速度で近くの恒星へと向かって行く。
グレンファイヤーの肉体は実体は有るものの、その構成はどちらかと言えばエネルギー生命体に近い物だ。
ウルトラ族の肉体に血液に代わって光が流れているように、グレンファイヤーのその肉体には燃え盛る炎のエネルギーが血潮のごとく流れている。
それ故に、プラズマスパークから発せられるディファレーター光線でウルトラ族が回復出来るのと同じく、グレンファイヤーもまた、恒星の炎のエネルギーで回復する事が出来るのだ。
「もう少し近寄れれば……」
もう少し、あと少し近寄る事が出来れば、恒星が発するエネルギーに当たる事が出来る。
恒星へと伸ばしたグレンファイヤー、ジワリとそのエネルギーが身を包もうとするのを感じた。
「は?」
瞬間、グレンファイヤーの目の前で宇宙が揺れた。
まるで水面のように、目の前の光景が揺らぎ始めたのだ。
産まれてから数えきれない月日を宇宙空間で過ごしてきたグレンファイヤーにとっても、今目の前で起こる現象は初めての事であった。
「一体全体、何だこりゃあ?」
波紋が空間に広がり、恒星のエネルギーが乱反射した事で、グレンファイヤーへのエネルギーが絶たれてしまう。
困惑するグレンファイヤーの目の前に、突如として“ソレ”は現れた。
《グォォォン!!》
空間を、まるで水面から突き出すかの如く割って、一隻の宇宙船が姿を現す。
深緑色のその宇宙船は、先端にかけて尖った柳の葉のような鋭利な形状をしており、グレンファイヤーは以前にとある星で見かけた「水中を走る船」の事を思い出した。
「オイオイオイ、まさか……」
それと同時に、グレンファイヤーの脳裏にとある『最悪の可能性』が思い浮かぶ。
そして、その最悪は、次の瞬間には残念ながら的中する事となるのであった。
《ここまでは敵ながら天晴、よくやったと褒めてやろう、グレンファイヤー》
突如として聞こえて来た声、それは間違いなく、先程倒した筈の宿敵の物である。
グレンファイヤーは、悔しさを隠せずに、忌まわしきその名を吼えるように叫んだ。
「パルデスぅぅぅぅっ!!」
「流石に肝が冷えたよ、まあ、こんな事もあろうかと“仕込み”をして正解だったな」
宇宙船……正確には『次元潜航艇』のセイル上部から、パルデスが悠々と見下ろすようにグレンファイヤーを眺めていた。
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いや、マジでヒヤッとしたわ。
俺は土ペロ(宇宙空間なので概念)しながら悔しがるグレンファイヤーを見て留飲を下げると共に、額にかいた冷や汗をハンカチで拭う。
念には念を入れて、脱出艇として
「流石に、ゴルバを沈められたのは予想外だったが……」
チラリと横目でモニターに映るゴルバの残骸を見やる。
まさかゴルバが沈められるとは……波動砲を防ぐ事が出来るから大丈夫だと思っていたが誤算だったな、甘く見過ぎてたわ。
考えてみれば、惑星を吹き飛ばすようなチート戦士をも輩出する光の巨人と肩を並べるレベルの実力者だし、こうなる可能性も考えておくべきだったな。
とはいえ……
『ワープアウト反応ヲ確認、第28統治艦隊が現着しまシタ』
「即時展開、グレンファイヤーを包囲しろ」
俺が指示を出すと、無人制御の艦体はグレンファイヤーを囲むように展開して行く。
先程の捨て身の攻撃で消耗しきった今なら、抵抗も出来ないだろう。
「ここまでか……殺すならサッサとしやがれ」
流石のグレンファイヤーも、この状況を打開する事は出来ないと悟ったのだろう。
そう啖呵を切った後に、俺へと鋭い眼光を向ける。
きっとグレンファイヤーの体が動いていたなら、俺の体は塵一つ残さずこの世から消え去っていただろうな。
包囲網が完成し、グレンファイヤーが完全に拿捕された状態となる。
そして複数の冷たい砲門が、グレンファイヤーの方へと振り向いた。