悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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感想を下さった方々、ありがとうございます。
そして中々返信できなくて申し訳ないです。


第百四十七話【鉄槌】

「……」

 

ダークゴーネとザウラーの言葉を無言で聞いていたカイザーベリアル。

黙ってしまえば、その表情はウルトラ族特有の表情が変わらない顔により、窺い知る事は困難だ。

だが、先程から変わらず、不機嫌オーラは未だにその全身から滾っている。

 

「ベリアル様?」

 

行方不明になったパルデスへの悪口はどこへやら、

張り詰めた空気に耐えかねたダークゴーネが問いかけると、カイザーベリアルはゆっくりと口を開く。

 

「だがな、有用な奴なら話は別だ……帝国の参謀を名乗るぐらいなら、分かるだろう?」

 

ダークゴーネは喉からヒュッと息を漏らして沈黙する。

 

支配惑星の統治、兵站の維持、兵器開発……実質的に、パルデスはこれらの全てをこなしていた。

自分達が率いている大艦隊や大量のロボット兵、肉体の維持に必要な潤沢なエネルギー、広大で住み良い拠点、贅沢三昧の日々……

その全てを支えてくれていたのがパルデスだったのだ。

 

パルデスのもたらした物を脳内で反芻しているダークゴーネのその隣で、同じく沈黙してしまったザウラーも、気まずそうな顔をして固まっている。

おそらくは同じことを考えているのだろう。

 

(パルデス)が俺様からの命令を聞いている間、貴様らは能天気に狩り(粛清)をしているだけだったな……アイアロンもだが」

 

アイアロンが不穏分子殲滅の為にこの場に居なかったのは幸運だっただろう。

もしもカイザーベリアルの今の雰囲気でこの言葉を聞いていたのなら、間違い無く縮み上がっていたはずだ。

その事実に対して柄にもなく「狡い」と八つ当たりに近い怒りを覚えていたダークゴーネだったが、次のザウラーの行動で我に返る。

 

「だっ、だが、奴は俺達と比べて現場での仕事に出ていなかったじゃ「黙りなさい!!ザウラー!!」

 

自分の仕事を『能天気』という言葉で括られたのには流石に反感を覚えたのだろう。

ザウラーが思わずカイザーベリアルに反論しようとし、ダークゴーネは途中で遮った。

 

言葉を遮られた事で、明らかに不満そうなザウラーに、ダークゴーネは舌打ちをするのを堪える。

今、怒りの感情に駆られているカイザーベリアルに対して、そんな行動を取るという事がどれ程に愚かしい事なのか。

 

その予感にダークゴーネの背筋が震えるが、もう遅い。飛び出した言葉を引っ込めるのは不可能だ。

ザウラーの不満の言葉はカイザーベリアルの鼓膜を震わせ、そして爆発的に怒りを増幅させた。

 

「グアァァァァッ!?」

「俺様に口答えするとは、テメェも偉くなったもんだナァ……」

 

徐にザウラーの前へと歩み寄ったカイザーベリアルは鬼のような形相でザウラーを睨むと、その鉤爪でザウラーの頭部を鷲掴み、締め付ける。

悲鳴を上げながらも、どうにかその手を引き剥がそうとするザウラーだが、カイザーベリアルの凄まじい握力により全力を出してもその指は離れない。

 

「確かに奴は現場にはあまり出なかった……奴が出れば『一瞬で星ごと消し飛ばしちまう』」

 

そう言ってカイザーベリアルは、片手で掴んだザウラーを投げ飛ばす。

きりもみ回転しながら飛んで行ったザウラーは、凄まじい勢いで壁際の情報パネルに叩きつけられた。

 

「アガァッ!!」

 

その勢いは凄まじく、轟音と共にいくつかのパネルが割れ飛び、拉げた操作盤の断線した部分から火花と煙が立ち上る。

叩きつけられた衝撃で動く事も出来ず、痛みに悶え呻くザウラー。

 

そんなザウラーを無感情な目で一瞥し、カイザーベリアルはダークゴーネへとゆっくり振り向く。

恐怖のあまり、ダークゴーネは上がりそうになる悲鳴を抑えながら、ただひたすら頭を垂れ続ける。

 

「貴様らに、それ程の仕事が出来るのか?パルデスの抜けた穴を補えるだけの仕事が」

「うっ、そっ、それは……」

 

咄嗟に答えられなかったが、ダークゴーネの中ではすでに結論が出ていた。

パルデスの抜けた穴を補うのは、自分達だけでは不可能であると。

あの一瞬で希望も絶望も消し飛ばす滅亡の光(波動砲)を超える事は無理であると。

 

しかし、そんな事を馬鹿正直に言えばどうなるか。

その事を考えると、とてもそんな言葉は吐けない。

 

……が、そのダークゴーネの行動は、『答えない』という結論をカイザーベリアルに示しているのと同じであった。

煮え切らないその態度に、カイザーベリアルの堪忍袋の緒が切れたのは、ある意味で必然であっただろう。

 

「何とか言いやがれ!!ダークゴーネッ!!」

 

ここで、ウルトラマンジードの本編を思い出して欲しい。

ベリアルの怒鳴り声というのは、音響武器として通用する程の威力を誇るのである。

そんな怒鳴り声を、室内という限定された空間で放出されたらどうなるのか。

 

≪ドォンッ!!≫

 

カイザーベリアルの口腔から発せられた暴力的とも言うべき怪音波は、ダークゴーネの鼓膜をまるでプロボクサーの打撃を受けたサンドバッグの如く震わせる。

そしてそれだけに留まらず、その猛烈な衝撃波は第一指令室内を駆け巡り、耐えられなかった部屋中の壁という壁が、コンソールごと吹き飛び大爆発を起こした。

 

あまりの出来事にへたり込むダークゴーネと、壁ごと吹き飛ばされ雑に転がされた形となるザウラー。

そしてその情けない有様に、より怒りが膨らむカイザーベリアル。

 

「テメェら、どう落とし前付ける」

 

パルデスが居なくなったことで、光の国への侵攻計画も完全に狂った。

このエスメラルダを中心とした文明圏を支配するだけなら、自分達だけでも十分に可能だ。

 

が、光の国は完全に話が別だ。

 

パルデスが齎す潤沢な装備や技術、これが光の国の侵攻には必要なのである。

認めたくない事実ではあるが、カイザーベリアルは確信していた。今の銀河帝国に一番必要な人材がパルデスであると。

 

その最後のピースをぶち壊した愚か者を、怒りのままに粛清しようと手を振り上げる。

 

「どうされましたか?カイザーベリアル様」

 

その時、この場に居ない筈の者の声が、第一指令室だった場所の空間に響き渡った。

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