悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

153 / 164
私生活が忙しく、再び間が開いて申し訳ありません。
それと感想を下さった方、真にありがとうございました


第百四十八話【不意の帰還】

突然聞こえて来た声の発信源を辿るように、カイザーベリアルはゆっくりと振り向き、ダークゴーネも垂れていた頭をハッと上げてカイザーベリアルの背後へと視線を移す。

二人の視線の先には青緑色の一隻の宇宙船、そしてその甲板には軍服姿で悠然と後ろ手を組みながら立つ男が一人。

その顔には焦りや恐怖のような物は一切無く、ただ静かに自分に視線を向けて来る二人と、気絶して地面に転がっている一人へ視線を返している。

 

「パルデス」

 

カイザーベリアルが低く囁くような声でその名を呼ぶ。

そう、甲板の上に立っていたのは、この事態が起こる事になった原因にして、生死不明と思われていたパルデス・ヴィータその人であった。

 

「また随分と……いかがされましたか?カイザーベリアル様」

 

破壊されつくした第一指令室だった場所を一瞥し、カイザーベリアルへと話しかけるパルデス。

いつもと変わらないその様子に、毒気を抜かれたようにカイザーベリアルから怒りのオーラが無くなり、それを見たダークゴーネは自分の命が繋がった事を悟りホッと肩を撫で下ろす。

 

「第一指令室は放棄、第二指令室に指揮機能を移譲します」

「カイザーベリアル様はこちらへ、ダークゴーネはザウラーを連れて医務室へ行きなさい」

 

対するパルデスは、答えが帰って来ない事に然程の変化も見せず、一つ溜息を吐くと矢継ぎ早に指示を出す。

途端、無事に残っていた数少ないモニターから表示が消え、照明は非常灯に切り替わり、第一指令室はその短過ぎる運用期間を終えたのであった。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

第二指令室に移動した俺は、ひとまずは事が収まった事に安堵の溜息を吐く。

あの様子から察するに、あの惨状はベリアルが癇癪を起した事によるものだろう。

 

全く、ダークゴーネとザウラーは何をやらかしたのか。

 

背後で玉座に腰かけるベリアルをチラリと見て、医務室で医療ポッドに入っているであろう二人の幹部(バカ)の事を考えるが、もう過ぎた事であり思考の無駄だろう。

今はニュークシアの興亡の賭かった大一番、ベリアル銀河帝国最後のクライマックスとなる一大決戦と、戦後の事を考えなければ。

 

「既にウルトラマンゼロの動向は把握しております」

 

俺が目の前のコンソールを操作すれば、俺とベリアルの目の前に巨大なスクリーンが展開される。

そこには分かりやすくディフォルメされた星系図に、ジャンバードの予想航路と鏡の星(目的地)が表示されていた。

無論、これはゼクダスに持たせた通信機から発せられる物である。

 

「奴らは現在、スペースニトロメタンの海からワープ航行の後、座標MR1971の地点を航行中、推定では目的地は鏡の星と思われます」

「それは正確なのか?」

「この座標近辺には他の有人星は有りませんので間違いは無いかと」

 

背後から降り注ぐベリアルの視線を感じながら「原作通りならね」と心の中で付け加える。

というか、バラージの盾に接触するという重要イベントをこなす訳だから、ここで原作と乖離するという事は絶対に無いだろう。

 

玉座の上で足を組み、顎に手をやりながらベリアルは何やら考え込む。

十中八九ウルトラマンゼロの事だろう。宿敵がようやく自分の手に墜ちて来そうな状況なのだ。

ベリアルからしてみれば、自らの屈辱を晴らすチャンスなのである。

 

まあそんな事は置いておいて、俺はベリアルの方へと振り向き、恭しく首を垂れる。

 

「これより、ウルトラマンゼロ捕縛の為に鏡の星へ出征を……」

 

これから最後の詰めをしなければならない。

その為に自らもゼロ捕縛の現場に赴こうとお伺いを立てた、が……

 

「ダメだ」

「……は?」

 

思わぬ返事に、思わず垂れていた頭を上げ、ポカンとした表情でベリアルへと視線をやる。

そんな俺の呆気にとられた様子を気にするでもなく、いつもよりもどことなく険しく見える様子で立ち上がると、ベリアルはマントを翻して俺の間近へと歩み寄って来た。

とはいっても、本当に間近まで来てしまうと身長差(何せ50m巨人と2mも無い人間なのである)で顔が見えない為に数十メートル離れてはいるが。

 

「アイアロンに行かせる、貴様はこの要塞に居ろ」

 

ベリアルの意外な言葉に、俺は呆気にとられてしまう。

まさか、俺の身を心配でもしてるのか?

いや、ベリアルに限ってそんな……

 

「お言葉ですが、アイアロンが捕縛任務なんて器用な事が出来るとお思いで?」

「……」

 

俺がそう返すと、ベリアルは苦虫を噛み潰したような表情で押し黙る。

まあ本編ではウルトラマンゼロの身柄はベリアルの御前にしょっ引かれている訳だから、アイアロンにもそれぐらいの命令をこなす能力は有ると思うんだけども。

 

アイアロンあんま信用されてないんだな、何だかちょっと可哀想。

まあ奴は脳筋だからな……

 

おっと、話が逸れた。

 

「無茶はしません、荒事はアイアロンに任せて、私はウルトラマンゼロの捕縛に専念いたします」

「ほう、貴様がゼロの相手をできるのか?」

 

俺の言葉に、ベリアルが訝し気な反応をする。

 

「奴は情に厚い、それを利用します、それに……策は既に」

「……貴様がそこまで言うのなら、良いだろう」

 

俺の言葉を聞いたベリアルは、しばし考えた末にようやく許可をくれた。

予想外の出来事も有ったが、それもまあ些細な事。

俺はコンソールから通信を開く。

 

「アナライザー、艦を出してくれ」

『ドノ艦を出しマスか?』

「そうだな……」




ちなみに、ベリアルの呼称は三人称では「カイザーベリアル」で、主人公視点は「ベリアル」のみとしています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。