悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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第百五十二話【鏡の星、襲撃】

ようやくミラーナイトも正気に戻り、ゼロ達がホッとしたのもつかの間、

腹の底に響くような重い衝撃音と共に、鏡の星の大地が揺らぐ。

 

「きゃっ!?」

 

突然の揺れによろめき、バランスを崩してその場に転びそうになるエメラナ。

咄嗟の事で対応出来ずに地面へと崩れ落ちそうになるその体を、横から差し伸べられた二本の腕が支えた。

 

「あっ、ありがとうございます……」

 

エメラナは自分を支えてくれた腕の主――ゼクダスに礼を言う。

だが、ゼクダスからの反応は無い。

どうしたのかとエメラナが顔を上げ、ゼクダスの顔を見上げる。

 

「……」

 

エメラナが見上げた先に有ったゼクダスの顔は、いつもと変わらない無表情ながらも、どことなく険しい物で、

まるで何かを堪えているような、それでいて思いつめているような、何とも言えない表情だった。

 

「あの……?」

 

その様子に疑問と、一抹の不安を感じたエメラナがゼクダスに再度話しかける。

しかし、ゼクダスはエメラナへと視線をやりながらも、何処か遠くを見るような目でたったの一言だけをその口から発した。

 

「……来たか」

 

「何だこれは!?」

 

その一言にエメラナが疑問を覚えるも、再度口を開く前にミラーナイトから発せられた戸惑いの声に遮られる。

そして空を仰ぎ見ると、夜空のような濃紺の空中に水面の如く鏡面が広がり、まるで巨大なディスプレイの如く二次元世界の外の様子が映し出された。

 

「ベリアル軍!!」

 

ジャンバードが通過した二次元世界と三次元世界を繋ぐゲートの外、そこに数百隻はあろうかという数でベリアル軍の大艦隊が押し寄せていた。

ベリアル軍の艦は砲塔からビーム砲を発射し、ゲートへと攻撃を加えている。

 

≪ゴォンッ!!≫

 

ベリアル軍の軍艦が発するビーム砲がゲートに当たる度、鏡の星に衝撃音と振動が響き渡る。

先程までは紳士的で穏やかだったミラーナイトの口調にも焦りが見え隠れし始めた。

 

「ここは私に任せて、バラージの盾を!!」

 

「どこに有るの!?」

 

揺れによろめく身体をゼロに支えられつつ、ナオがミラーナイトへと声を張り上げる。

そんなナオからの問いに、ミラーナイトは一瞥するとその在処を端的に口頭で伝えた。

 

「地下の神殿へ、川の流れを遡るのです!!」

 

そう言うや否や、ミラーナイトはベリアル軍を迎撃するべく空へと飛び立って行く。

対するゼロ達は川と言われてもどの川なのか分からずに困惑するばかりだった。

何せ、この鏡の星の表面には川を彷彿とさせるような白い流れが無数に走っている。

 

一同が『一体どうすれば……』と思ったその瞬間、カメラのフラッシュのような光と軽い浮遊感と共に周囲の景色が一変した。

 

先程までの鏡面のような大地や、オーロラが光る濃紺の空とは打って変わり、

露出した粗い岩肌と、刺々しい結晶が周囲を取り囲んでいる。

 

どうやら、鍾乳洞の中へテレポートさせられたようだ。

冷たい空気が鼻孔を満たし、不快にも思える湿気が体を包み込む。

 

「あっちだ」

 

水のせせらぎの音に耳を澄ませ、周囲を見渡したナオは、洞窟内を流れる水の流れを発見した。

おそらくはコレが、ミラーナイトの言う“川”なのだろう。

 

ナオの先導で、四人は川の上流へと歩みを進める。

鏡の星の地層の特殊さ故か、光る鉱石が所々に顔を出している事で、洞窟の中にも関わらず幸いにも視界の確保には困らないぐらいの光量が保たれている。

 

岸と言える物が無く、直接川の中を歩かねばならない為に足が濡れる不快感は有るものの、それさえ耐えれば浅く緩やかな流れの川を遡る事に然程の労力は掛からなかった。

 

時間が無い為に、4人は黙々と足を進める。

時にはエメラナが躓いて転ぶも、抱き起こしたゼロに礼を言って先を急ぐ。

 

ベリアル軍がこの星まで来ているとなると、もう残された時間は僅かだ。

一刻も早く、バラージの盾を手にしなければならない。

 

その一念でゼロ達は洞窟を進み続ける。

 

一番後ろを歩くゼクダスが、悲し気な表情を浮かべているのに気づかぬまま。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

「シルバークロス!!」

 

一方、鏡の星へと繋がるゲートの前では、大勢のベリアル軍を前に孤軍奮闘をしていた。

両手を胸の前で組んだ後、前方へ押し出すようにエネルギー弾……シルバークロスを発射する。

 

十文字の光線であるシルバークロスは、密集して侵攻して来るレギオノイド達へと直撃し、その鋼鉄で出来た体をいとも簡単に切り裂く。

 

「鏡の星を穢す事は、この私、ミラーナイトが許さない!!」

 

高らかにそう言い放ったミラーナイトは、その白銀の肉体を構えてグッと全身に力を漲らせている。

ゲートの前に立ちはだかり、敵を見据えるその姿からは、凄まじい気迫が滲み出ていた。

 

「ほ~う?ベリアル様の闇を克服したか」

 

「鏡の騎士ミラーナイト、やはり厄介な敵だな」

 

そう口では言いつつ、俺は内心で鏡の騎士の姿に多少の興奮を感じていた。

今は自分の目的を邪魔する障壁ではあるが、やはりヒーローの姿は何度見ても良い物だ。

特にミラーナイトは一旦闇に墜ちてからの復活というカタルシス要素も持ち合わせていてオタク的には美味しいキャラでもある。

 

……仕方ない事だとはいえ、闇墜ちから帰還するシーンを見る事が出来なかったのは大いに残念だ。

 

「怖気づいたかパルデス?逃げ帰っても良いんだぞ?」

 

そんなミラーナイトの勇姿を艦橋のモニター越しに眺めていた俺は、ハッと我に返って艦隊後方でブリガンテの甲板に仁王立ちしているアイアロンに返事を返す。

戦闘狂のきらいが有るアイアロンはミラーナイトとの戦いに滾る物が有るようで、その興奮を示すかの如く先程から頭部の赤い発光機関が激しく明滅している。

 

「ベリアル様からの御命令だ、そのような事は出来んよ」

 

「ハッ!!精々頑張る事だな、俺は遠慮なくあの美しい星をカチ割ってくれるわ!!」

 

発奮したアイアロンを乗せたブリガンテが一気に加速し、戦列の最前面へと飛び出していく。

相変わらず血の気の多い奴だ、何というか呆れるほどに。

 

まあ、それは置いておいて、だ。

 

「さて、作戦行動を開始するか」

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