悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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第百五十四話【穏やかな侵入者】

「シルバークロス!!」

 

ミラーナイトの一声と共に手から発せられた光の刃が、迫り来るレギオノイドを切り刻み宇宙の藻屑へと変えていく。

その一撃一撃が高い攻撃力を誇る光線技、シルバークロスは、今のところはベリアル軍に対して大きなアドバンテージを発揮していた。

 

が、何事にも限界は有る。

 

「数が多過ぎるっ」

 

消耗を隠しきれず、肩で息をしながら敵方へ視線を向けるミラーナイト。

視線の先では、今しがた切り裂いたばかりの残骸を跳ねのけるようにして後方から新たなレギオノイドが迫って来る。

 

たった一人で鏡の星を背に庇うミラーナイトにとっては、例え弱い雑兵とはいえ波状攻撃は実に効果的に作用していた。

 

しかし、ミラーナイトは希望を失ってはいなかった。

ゼロ達がバラージの盾を手に入れてくれれば、きっとこの状況も打開できる。

 

そう信じながら気力を振り絞って戦いを続けるミラーナイト。

 

今のところは敵の侵攻を防ぐ事に成功している。

だが、そう考えた時にふと、脳裏にある疑問が浮かんだ。

 

敵の侵攻を防ぐ事に成功しているのは間違いない、というかむしろ、敵の侵攻を防ぐ事に()()()()()()()()

 

繰り返しレギオノイドが数体ずつミラーナイトに接近してはシルバークロスにより切り裂かれているが、敵はそんな状況にも関わらず戦術を変えていない。

大量のレギオノイドが待機しているのにも関わらず、ミラーナイトの目の前にやって来るのは決まって数体程度、ちょうどシルバークロスの一発で掃討出来る程度だ。

 

そしてより頑強な装甲と強力な火力を持つであろうブリガンテは、レギオノイドの後方で待機して動いていない。

 

明らかにおかしい。

まるで計画的に自分をココに釘付けにしようとしているような……

 

しかし敵の目的がそうだとしても、それはそれで疑問が浮かぶ。

 

鏡の星は2次元世界にある星だ。

そうであるが故、3次元世界からアクセスするには、今自分が背に守っているゲートを使わなければアクセスできない。

鏡の星や、そこに居るゼロ達を抹殺する事が目的だとするのなら、一気呵成に総攻撃を行いゲート事粉砕する方が効率が良い筈。

 

一体何故、敵の目的は……

 

心中に疑問を抱えつつ、ゲート前でベリアル軍を屠り続けていたミラーナイトだったが、

不意に脳裏へとテレパシーによる通信が届く。

 

《ミラーナイト、聞こえるか?》

 

送信主は鏡の星の本星を守る防衛隊司令官だった。

普段なら冷静に状況を精査する落ち着いた人格者の筈なのだが、どうもその声色には焦りが見える。

 

何か有ったのか?と思ったミラーナイトに、次の瞬間発せられたのは耳を疑う一言であった。

 

《次元間の膜に揺らぎを検知した、本星にベリアル軍が侵入した可能性が有る》

 

《なっ!?》

 

その内容に、ミラーナイトは驚愕した。

まさか2次元世界に干渉する事が可能だとは思わなかったからだ。

 

鏡の星の住人は3次元世界への不干渉を掟としているが、コレは裏を返せば3次元世界から2次元世界への干渉が不可能だという事を前提とした掟でもある。

少なくとも、今のこの宇宙の文明圏の技術では不可能な筈だ、いや、()()()()

 

たった一人の“例外”を除いては。

 

「俺はぁっ、鋼鉄将軍アイアロンだっ!!」

 

その例外の顔を思い浮かべていたミラーナイトの耳に聞こえて来た、高らかに名乗りを上げる野太い声。

本星の危機に駆け付けられない事に内心で舌打ちをしつつ少し上を見上げれば、周囲の艦から突出して接近して来た一隻のブリガンテの艦首に、一体の怪物が仁王立ちしている。

 

その怪物――鋼鉄将軍アイアロンの姿に、ミラーナイトには見覚えがあった。

エスメラルダがベリアル軍に襲撃された際、カイザーベリアルの背後に控えていた二体の怪物の一人。

 

屈辱に塗れた記憶を思い出し、怒りに目を光らせるミラーナイトの目の前で、アイアロンは自らの頭頂部の赤い発光部に手を翳す。

 

―来る!!―

 

ミラーナイトが本能的に攻撃を察知し、身構えたのとほぼ同時の事だった。

 

「アイアロンソニック!!」

 

アイアロンの頭頂部から、凄まじい怪音波が発射された。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

エメラナとナオを背中に庇う様にして、ゼロとゼクダスが前に立ち身構える。

 

≪カツン……カツン……≫

 

神殿内に、精緻に敷き詰められた石畳の床と、磨き上げられた革靴の靴底が奏でる足音が響く。

一歩一歩と鳴るそのゆっくりとした間隔と共に、近づいて来る人影。

 

銀色に光るベリアルのウルトラサインが施された軍帽、上質な漆黒の布地で仕立てられたオーバーコート。

悠然と現れたその姿を見て、ゼロは眼光を鋭くし、その名を呼ぶ。

 

「パルデスっ……」

 

「また会ったね、諸君」

 

顔に薄く笑みを浮かべ、ゼロ達へ静かに視線を向けるパルデス。

敵であろう自分達を目の前にしているとは信じられないぐらいに口調や態度は穏やかで、不気味さすら感じる程に気楽な雰囲気を纏っている。

 

「宝探しの結果は、聞くまでも無いか」

 

「……どうやってこの場所へ来た」

 

「落ち着きたまえ、『急いては事を仕損じる』という言葉も有る」

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