悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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―チョットあらすじ―
ベリアル銀河帝国の夢を見た結果、ブルトンによってアナザースペースに飛ばされてしまった主人公。
このまま本編突入!!と思いきや、深層心理が意外な形で作用しており……


第十三話【新たなる故郷】

「よし、整備完了っと」

 

額の汗を拭い、工具をツールボックスにしまった後に、俺は軍手を脱いで水を飲む。

冷蔵庫でキンキンに冷やされた水は喉に心地良く、食道を下って行く冷たい感触に思わずため息が漏れた。

 

「これで完成だな」

 

達成感に満ち溢れた俺の目の前には、一機の小型宇宙船が鎮座していた。

星間探査用として半年ほどかけてアーク号の船内で建造された全長40メートル程のその船は、戦闘機に近い鋭利な見た目をしている。

だがその見た目とは裏腹に、胴体下にカーゴユニットを搭載して大容量の荷物を運ぶ事も可能なのだ!

 

「まあぶっちゃけ、スペースペンドラゴンのパクリなんですけどね」

 

見た目はスペースペンドラゴンにソックリのその宇宙船は、アーク号の予備機材を利用して船内の工場で建造された物だ。

だがそれでも、宇宙を航行する為の強度や自衛用の武装は十分に確保されているし、サルヴァラゴンの動力炉から発展させた波動エンジンを積んでいるのでワープやシールドも使う事が出来る。

だから原典のスペースペンドラゴンよりも高性能なのである(エッヘン)。

 

そもそも何故にこんな物をワザワザ建造したのかと言うと、アーク号では探査をするのにあまりにも大きすぎるためだ。

移民を大勢乗せる関係上仕方ない事ではあるのだが、小回りが全く効かないし、それにこんなデカ物で惑星探査を行おうものならかなり目立ってしまう。

そうなれば惑星の先住民達に恐怖を与えかねず、余計な軋轢を生んでしまう可能性がある。

 

「頼むぞ“ウェルシュドラゴン”」

 

元ネタのスペースペンドラゴンの名前がイギリスはウェールズの伝承から来ている事になぞらえ、

このウェルシュドラゴンも同じく、ウェールズの「赤い龍」の伝承から名付けている。

 

必要な物資を船内に運び込み、俺はウェルシュドラゴンの操縦席に座った。

そんな俺の隣には、今回の航海からパートナーとなる存在が鎮座している。

 

『システム、おーるグリーン、発進可能デス』

「了解、初の航海だが期待しているぞ()()()()()()

『リョウカイ』

 

アナライザー、宇宙戦艦ヤマトに登場したロボットで、ヤマト本編内では艦橋の自律型サブコンピュータとして製作された物だ。

流石に様々な雑務を一人でこなすのは難しいと判断し、サポート用として製作した。

……正直言って、話し相手が欲しかったというのも有るのだが。

 

隣でパネルに繋がってクルクルと頭を回すアナライザーに声をかけ、俺は操縦桿を握る。

そしてスロットルレバーを最大出力まで上げた。

 

「ウェルシュドラゴン、発進!!」

 

浮き上がった機体は急加速し、発進口から高らかに旅立っていった。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

とはいえ、この船で宇宙探査に出るのはまだ先だ。

 

『高度400キロメートル、巡航中デス』

 

アナライザーの報告を聞きつつ、自動操縦に切り替え情報パネルを注視する。

この宇宙を調査しないといけないのは分かっているが、まずは俺が居るこの星に関して調べなければ何も始まらない。

 

『間もナク、惑星全域の調査が完了シマス』

 

最初は知的生命の有無から確かめるため、高高度からセンサーで調査する。

今俺がいる惑星はサイズ的に、この高度でこの宇宙船のスペックなら一時間程度で惑星表面の調査は完了する。

だが、俺はそれ以前にある事に気づいて呆然とした。

 

「この星は……」

 

惑星上空から見る陸の形、それは完全に『地球』と同じものだった。

『地球型惑星』ではない、ユーラシア大陸や北米・南米大陸、オーストラリア、そして日本。

この星は完全に『地球』そのものだ。

 

何故地球に移動したか。

おそらくは深層心理に『地球に対する未練』が有ったからだろうと思う。

とはいえ、まさかアナザースペースの地球へと転移してしまうとは……

 

『解析完了、電波や熱反応調査の結果、コノ惑星に知的生命による活動は検知されマセンでした』

「どういう事だ?」

 

だが、調査の結果は意外にも『知的生命による活動は存在しない』というもの。

地球なのにどうして、何故人類は存在しない?

バット星人によって人類のほとんどが消失したフューチャーアースならまだ分かるが、ココは違う世界の違う地球だ。

そんな事はあり得ないだろう。

 

「……高度を下げて再度センサーを作動、その後は地上に降りて直接調査する」

『ドコに着陸しマスか?』

 

指示を仰ぐアナライザーからの声に、俺は迷い無く指さした。

 

「あの島に降りてくれ」

『リョウカイ』

 

ウェルシュドラゴンは徐々に高度を下げ、俺が指さした島……『日本』へと降下していった。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

所々にヒビが入り、崩れかけたビル群

手入れされなくなり、雑草が生い茂る道路

路上に放置された錆びた車達

 

かつて『東京』と呼ばれた都市の官庁街に、ウェルシュドラゴンは着陸していた。

目的地はただ一つ、おそらく最も情報を知るのに適した場所だ。

 

「新聞はココだな」

 

俺は永田町に存在する『国立国会図書館』へとやって来ていた。

建物そのものはどうやら建て替わっているようだが、場所自体は変わらず、入り口の看板のおかげで分かりやすかったのは僥倖(ぎょうこう)だ。

そこに保管されているであろう記録を読めば、この地球に何が起こったのかが分かるはず。

棚からいくつかの新聞を取り出し、そばに有った作業用のテーブルへと広げる。

 

「マジかよ……」

 

そして、読み込んで行った結果分かったのは、ある驚くべき事実だった。

 

「まさかこの地球が滅亡しかかっているとは」

 

そう、この地球は滅亡の危機に瀕していた。

科学技術の進歩によって観測技術が発達した結果、太陽の寿命が予想よりも早く訪れる事が発覚したのだ。

タイムリミットまでは約200年、太陽は赤色巨星となり、膨張する段階で地球は飲み込まれてしまう。

 

人類は一致団結してこの難題に挑み、そして『惑星移民計画』へと至った。

最初は無理だと思われていた移民計画ではあるが、新しいエネルギー資源として期待されていた『エメラル鉱石』による動力炉の実験が成功し、一気にそれは現実へとなっていった。

そして地球滅亡まで100年となった段階で全人類の避難が完了し、地球人類は観測の結果発見した『エメラル鉱石の豊富な地球型惑星』へと旅立つ。

旅の期間は約150年、人々をコールドスリープさせて、約10万光年先に有る惑星へ亜高速航法と完成したばかりのワープ航法を駆使して向かって行く。

 

「壮大だな」

 

ここは地球人類の幸多き未来を祈っておこう。

そして感謝も送ろう、人類生存に適した星を残してくれた事に。

 

「ここをクシア人の新しい故郷、“ニュークシア”と定める!!」

 

俺は着陸したウェルシュドラゴンから、アーク号へと戻って行く。

地球人類にはこの状況をどうにも出来なかったようだが、俺の科学力をもってすればこの地球の救済は十分に可能だ。

アナザースペースの宇宙空間も調査したいが、それは後回しにしよう。

地球救済の為のプランを考えながら、俺は通路を歩く。

 

 

そして、それから果てしない年月が過ぎて行った……




次回、一気に時間が飛びます。
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