悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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前回、滅亡直前の地球へとやって来た主人公。
誰もいなくなった地球を第二の故郷『ニュークシア』と定めた主人公は、
自らの科学技術を駆使して地球の救済を行うのだった。


第十四話【地球を救う、使命を帯びて】

かつて人類によって『太陽系』と呼ばれていた場所は、今まさに滅亡の時を迎えていた。

太陽が自身の中にある水素を使い果たした事により限界を迎え、惑星表面でも核融合反応が起こり、膨張を始めたのだ。

 

太陽の引力が弱まった事により、公転の遠心力で惑星達が逃げるように太陽から遠ざかるが太陽の膨張速度はそれ以上、あっという間に水星が飲み込まれ、その後しばらくして今度は金星が飲み込まれる。

 

次はとうとう地球だ。

 

膨張する太陽が、逃げようとする地球に追い縋る。

灼熱の紅炎(プロミネンス)が、地球にその魔の手を伸ばしたその時だった。

 

《カッ!!》

 

地球から眩い閃光が上がった。

もしもこの光景を見ている者が有れば、しばらくの間は視力を失いかねない程の強い光。

一瞬眩く瞬いた閃光は徐々に治まっていき、やがて宇宙は元の暗闇に包まれる。

 

光が完全におさまった今、かつて地球と呼ばれた惑星は跡形も無くなっていた。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

どこまでも続く真っ白い砂浜、遥か彼方まで広がる青い海、

かつて『沖縄』と呼ばれた孤島に、ウェルシュドラゴンの機体は着陸している。

 

「たまには息抜きしないとなー」

『風量は丁度いいデスか?』

「ああ、気持ちいいぞ」

 

そして、砂浜の目の前に建てられたヴィラで、俺は束の間の休息を過ごしていた。

パラソルの影の下、黒いラタン製のビーチチェアの上で、トロピカルドリンクを飲みながらくつろぐ。

通気性の良いアロハシャツを、アナライザーが煽る団扇の風が通り抜けて心地良い。

 

「そういえば、この地球……ニュークシアに来てどれくらい経ったっけ?」

『詳しくハ把握しておりまセンが、ワタシが製造されて既に562年3か月12日と10時間47分45秒が経過しておりマス』

「もうそんなに経つのか……」

 

俺はこの次元の地球ことニュークシアに来てからの日々を振り返る。

 

「この地球を救う」と決意したものの、やはり一人という事も有りマンパワーの不足という難題は如何(いかん)ともしがたく、とりあえずは当座の間に合わせとして太陽の延命に着手した。

 

そこで建造したのが『ハイドロコスモジェン砲』だ。

 

旧作の『宇宙戦艦ヤマトⅢ』に登場したこの砲は、太陽のような恒星の核融合を自在に操る事が出来る。

流石に太陽の完全修復は不可能ではあるものの、理論上はコレで100年以上の延命が出来るはずだ。

 

そしてその間に今の太陽系と似たような星系を見つけ、最終的にはニュークシアそのものを安全な宙域へとワープさせる。

 

難しく壮大な計画ではあるものの、不可能な計画ではない。

 

というか、現に俺はこうして成し遂げた。

ギリギリにはなったものの、ニュークシアは無事に新しい星系へとワープし、こうして存続している。

 

『博士ノ尽力で、コノ星は救われマシた』

「ああ、この惑星は救われた」

 

ただ、懸念すべき問題があった。

 

「だけど、エスメラルダに比較的近い場所だったのは誤算だったな……」

 

候補地が決まらず、ハイドロコスモジェン砲での太陽延命にも限界が見え始めた所に見つけたこの星系、

太陽が限界を迎えた事もあって慌ててワープしたものの、調査の結果、ニュークシアから約1万光年の距離に惑星エスメラルダが存在している事が分かったのだ。

最初は見間違えかと思い何度か調査を試みたが、結局は都市構造や惑星の組成から、ココが間違いなく惑星エスメラルダだという事が確定。

 

予想もしない事態に頭を抱えたものだ。

 

1万光年といえば遠く感じるかもしれないが、地球からの距離で考えればウルトラマンの故郷である光の国までは約300万光年、宇宙戦艦ヤマトが向かうイスカンダルでさえ16万8千光年も有る事を考えれば近所と言っても差し支えないだろう。

事実、宇宙船のワープを使えば一瞬でエスメラルダ近辺まで到達できてしまう。

 

今のところベリアルの存在は確認出来ないものの、油断はできない。

最新の情報として『エスメラルダ王家に第二王女誕生』、つまりはエメラナ姫が生まれたという情報が入ってきており、このまま行けばベリアル襲来まで10~20年程度しか残されていない事は明白だった。

 

『じゃあまた惑星ごとワープして逃げれば?』と思うかもしれないが、惑星のワープにも大質量を転送させるという事からリスクが有り、そう簡単には出来ない。

それに、他にもこの星系に居なければいけない理由があった。

 

現在、俺が元々居た宇宙であるM78ワールドへの帰還を考えてはいるのだが、それこそ星の数に例えられるぐらいに無数の平行宇宙が有る中で、俺の居たM78ワールドを見つけるという事は不可能だ。

自分でアナザースペースへ来たのなら帰り道も分かるのだが、レイブラッドによってこの宇宙に飛ばされた事でM78ワールドへと戻る道が分からなくなってしまった。

 

そうなると、必然的にクシア人の生き残りが居るであろうサイドスペースへも行く事も出来ない。

今俺はクシア人の生き残りをこのニュークシアへと移民させる計画を立てているのだが、このままでは夢想に終わってしまう。

 

だが、一つだけ打開する方法がある。

 

今から少し先の未来で、M78ワールドからはるばるアナザースペースへとやって来て、ウルトラマンベリアルを倒す英雄《ウルトラマンゼロ》だ。

彼の力を借りる事が出来れば、この次元からM78ワールドへと戻る事も可能だろう。

何としてでも接触する必要が有る。

 

「とりあえずは備えるしか無いな」

 

ベリアルから何としてもこの星を守り抜き、ウルトラマンゼロへと接触してM78スペースへと戻る。

難しいが、どうにか成就させなければ未来は無い。

 

俺は考えられる限りの手を打つべく、思考を巡らせた。




作中用語紹介

【ハイドロコスモジェン砲】
宇宙戦艦ヤマトⅢに登場した、恒星の核融合を自由自在に操る事が出来る大砲。
つまりはスイッチ一つでエンペラ星人の真似事が出来る超兵器。
元々はヤマトⅢの劇中に登場したシャルバート文明の遺産だった。
今作では主人公が古代アケーリアス文明時代の知識を活かして建造する。
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