「本日も有意義な会談を行えた事、感謝いたします」
『こちらこそ、どうかご息災でありますよう』
最後に挨拶を交わした後に通信が切れた。
国家元首との会談とあって緊張していた俺は、ため息をつきながら肩の力を抜き、テーブルに用意してあった冷めきった紅茶をグイっと飲み干す。
ここ最近は、エスメラルダ側の警戒心も薄れてきたようだ。
過去には不幸な行き違いでエスメラルダの軍とは一戦を交えた事もあり、国交を結べるかどうかは未知数だったものの、
既に事件からは百年以上は楽に過ぎている事もあって、時間が薬になってくれたのだろう。
まあ、そもそもあの戦いはエスメラルダ側から仕掛けて来たのだが。
ニュークシアには俺一人しか居ない分、設備が十分に整うまでは色々と周囲に誤魔化す必要が有った。
万が一、この事が知られれば不埒な輩に侵略を受ける可能性が有るからだ。
基本的にこの宇宙は平和のようだが、ウルティメイトフォースゼロを結成する必要が有る程度には悪人もいる。
だからこの星系に来た当初は、基本的に惑星そのものを鎖国状態にしていた。
物量は無いので基本的には索敵に徹し、一定の領域に侵入してきた宇宙船へは宇宙空間にクシアの戦艦をホログラムで映し出して追い払うという『こけおどし艦隊作戦』
バカらしいかもしれないが一定の効果は有ったらしく、コレで大体の宇宙船は引き返していったのだが、ある時とうとう警告を無視して攻撃を仕掛けようとする艦隊が現れる。
それが、なんと惑星エスメラルダの艦隊だった。
国交を結んだ時にエメラド王から聞いた話だが、歴代のエスメラルダ王の中で最も好戦的な男がニュークシアへの侵略を実行したとの事。
まあ、会談中にエスメラルダ側の謝罪も有ったし、こんな事もあろうかと作っておいた『火焔直撃砲』のおかげでこちらの被害は無かったので許す事にした。
今後の事を考えた場合、エスメラルダとの関係は良好にしておいた方が良いし。
『ご主人様』
そんな事を考えていた俺のもとに、アナライザーがやって来る。
このアナライザーも、製造当初に比べればかなり成長した。
アーク号に保存されたクシアのデータアーカイブを吸収し、俺の研究もどんどんインプットしている。
「どうした?アナライザー」
最近は俺は研究に専念し、作業の方はほぼアナライザー任せ、
他にも作業用ロボットを生産してあるので、その管制もアナライザーの役目だ。
ロボットによる生産は日進月歩で、今や繊細な精密機器から大型の戦艦まで製造できるようになった。
『空間遮蔽装置ガ、間もなく完成しマス』
「そうか……」
俺が求めていた物が、とうとう完成する。
これでどうにか、ベリアルの魔手からこのニュークシアを守る事が出来るはずだ。
空間遮蔽装置、これは『宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟』に登場した《恒星間播種船シャンブロウ》に搭載された物であり、惑星そのものを亜空間へと収納する事で通常空間から消失させる事が出来る。
元々は古代アケーリアス文明が開発した物であり、俺自身もこの開発に携わっていた為、今回このニュークシアへと設置する事が出来た。
これが有ればベリアルの目からニュークシアを隠す事が出来るので、やりすごして全てが終わった後にウルトラマンゼロとコンタクトを取って、M78ワールドへと戻る算段だ。
「計画の進捗は上々、後は『人事を尽くして天命を待つ』ぐらいかな」
俺は意気揚々と席から立ち、日課の研究を行いに研究室へと戻る。
まだまだ山のように研究したい事が有るし、宇宙戦艦ヤマトの世界の技術で再現したい物も他にまだ沢山有る。
この時の俺は、まだ呑気に構えていた。
良かれと思って行った『エスメラルダとの国交』
コレが思わぬ形で裏目に出るとは夢にも思わずに。
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遠く離れた宇宙空間、
無数の小惑星が浮かぶ場所に、ゆらり、と一つの影が揺れる。
まるで炎のように浮かび上がる橙色の双眼。
禍々しき闇を思わせる漆黒の体に、そこを走る血の如く赤い模様。
今、この宇宙を揺るがす大乱が始まろうとしていた。
作中用語紹介
【火焔直撃砲】
旧作では「宇宙戦艦ヤマト2」に、リメイク版では「宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟」並びに「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」に登場。
劇中では敵勢力である白色彗星帝国(ガトランティス)が保有するしており、
仕組みとしては、巨大な火柱のような超高熱エネルギー弾を、瞬間エネルギー移送装置によって直接目標の至近へとワープさせるという物。
この特性から、発射から着弾までのタイムラグがほぼ無い上に、通常の砲に比べてアウトレンジからの射撃が可能、さらには弾道が無いので回避は事実上不可能という恐ろしい兵器。