悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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第二話、主人公の始まりの物語。
不穏なタイトルですが……


惑星クシア編
第一話【ある生の終わりと始まり】


「※※※博士」

 

自分を呼ぶ声に、俺は薄く目を開いて横を見る。

 

「……△△△か」

 

老いて霞んだ目が映したのは、長年の付き合いになる部下だった。いや、弟子と言っても良いだろう。

彼にはこれまで様々な無茶な要求を出したり、無理難題を言ったりしてきた。

どんな事をしても必死に付いて来た彼は、今やこの星で最高の科学者だ。

 

既に起き上がる事も出来なくなり数か月、長い付き合いになったベッドの横に座り、俺の手を握っている。

俺の手が冷たいのか、はたまた彼の体温が高いのか、温かい感覚が心地良い。

 

「まだ我々には貴方が必要なんです」

 

泣きそうな声を絞り出した彼は、無意識なのか俺の手を握る力を強める。

少々痛んだが、ここで顔を顰める訳にはいかない。

柔和な笑顔を保つ事に努めつつ、俺は彼に優しく声をかけた。

 

「私はやり切った、これからは君達の時代だ」

「そんな事……」

「この老い先短い老人に、あまり心配させるな」

 

会話している内に、だんだんと瞼が落ちて来る。そして体中から力が抜けてきた。

もう寿命という事なのだろう。眠気に逆らいながら、俺は最後になるであろう声をどうにか発する。

 

「これからの、この星を頼むぞ……」

「……あなたは、()()()()()()最高の科学者でした」

 

彼のその言葉を最後に聞いて、俺は瞼を閉じた。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

「……またこの夢か」

 

朝を迎えベッドから起き上がった俺は、一つため息をつきながらシャワーブースへと歩いて行く。

数年前からほぼ毎日と言っていい頻度で見ている夢、端的に言えば『別の惑星で生きた科学者の一生』とでも言えば良いのか。

所々抜け落ちて朧気ではあるものの、その科学者は偉大なる功績を上げ、とても敬愛されていたであろう事は分かる。

 

シャワーを浴びた後、俺は外出用の服を着て白衣を羽織る。偶然なのかは分からないが、夢の中の人物と同じく俺も科学者である。

簡単な朝食を済ませ家を出ると、いつもの仕事場へと行く為に歩いて行った。

ワープスポットへでも行けば一瞬なのだろうが、健康の為には多少の運動が有った方が良いし、頭もよく回る。

とは言っても、職場近くの官舎に住んでいるので徒歩数分程度とかなり近いのだが。

 

「おはようございます」

「おお、おはよう『パルデス』君」

 

セキュリティーゲートをくぐった先に上司の顔が見えたので挨拶を交わす。

ここ数年の研究でずっとお世話になっている人物だ。挨拶は欠かせない。

俺こと『パルデス・ヴィータ』は、先を行く上司の横に小走りで追いつき横に並んだ。

 

「今日はいよいよ例のAIの起動ですね」

「ああ、長かった研究もようやく実を結ぶよ」

 

朗らかに笑う上司の顔を見て、思わず俺の顔にも笑みが浮かぶ。

そう、今日は特別な日だ。長年研究してきた研究成果がようやく日の目を見る。

 

「もう、この星の民が怯える事も無くなる、平和がやって来るんだ」

 

長年、この星の宙域は侵略を目的とした異星人の攻撃に悩まされてきた。

高度な科学技術を持つこの星は獲物としてはうってつけで、今は軍の反撃により表面上の平和を保ってはいるが、既に死者は軍人・民間人合わせて万を数え、市民はいつ攻撃されるとも分からない恐怖に怯えていた。

国はこの状況を打破すべく、様々な方法を討論してきたが、最終的に選ばれたのが『高度なAIによる強力な無人兵器運用』という手段であった。

人的被害を抑えるための手段、そう分かってはいるのだが反対する者も多かった。

 

「……正直、人工知能にこれだけの権限を与えるのは不安なのですが」

「まあ、確かに反対意見も多いが、安全は十分に確保されている、大丈夫だ」

「そう、ですよね」

 

かく言う俺も、実は不安をぬぐい切れずにいた。何せ初めての試みだ、それにAIの暴走を危惧する声も有る。

ただ、人的被害を無くしつつ星を守るには、この手段がベストだという事も分かっている。

 

「成功すると良いですね『ブラン博士』」

 

上司である『ブラン・サデルーナ博士』は、不安そうな俺を激励するかのように肩に手を置いて笑った。

 

「なに、このAI『テラハーキス』は必ず成功するさ!!」




【訂正】9月20日 13時5分
文章内の「地球外生命体」という部分を「異星人」に訂正。
地球の話ではないので。
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