悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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ニュークシアを巡る戦いは、果たして何をもたらすのか。
主人公は、そしてベリアルの運命やいかに。


第二十四話【ニュークシア防衛戦:6】

『カウントが0になりマシた、発射シテ下さい』

 

アナライザーが、無機質に波動砲発射を促す。

 

だが、

 

「くっ……」

 

撃てない。

どうしても、撃てない。

 

分かっている、ここでベリアルを討たなければニュークシアは火の海になってしまうだろう事は。

それでも、撃てなかった。

 

「何故、何故だ」

 

俺はターゲットスコープ内で、相変わらず暴れるベリアルを睨みつける。

怒りでもあり、哀しみでもあり、悔しさでもあり、一言でまとめれば「葛藤」とでも言えばいいのだろうか?

そんなグチャグチャの感情を、俺は思わず言葉に出してしまっていた。

 

「何故、お前はここに来てしまったんだ、ベリアル!!」

 

吐き出すような、言い捨てるような、苦しみ悶える叫びのような、そんな言葉。

 

俺はかつて、原作という運命から逸脱して多くのクシア人を救った。

クシアの人々を放っておけなかったし、平行宇宙の存在を信じていたから。

原作通りの平行宇宙も有るはずだからと、割り切ったはずだ。

例え、俺の行動のその先に待っているのが地獄だったとしても。

 

だが、それでも、

 

「何故こんな事に……」

 

本当なら、ウルトラマンゼロがベリアルに勝つまでは隠れて引きこもっている予定だった。

確かに、ヤマト世界の技術が有ればベリアルを倒せるかもしれないとは思ったが、もしもここベリアルを倒してしまうと『ある問題』が発生してしまうからだ。

 

そう、『ウルトラマンジードが生まれなくなる』という問題である。

 

実は現時点で、いまだにギルバリスへの根本的な対処法は見つかっていない。

あまりにも強力なハッキング能力のせいで、主だった武装が使用できないからだ。

もしもギルバリスが波動砲に接触したのなら、目を覆うような惨事を引き起こすだろう事は想像に難くない。

だからこそ、確実にギルバリスを仕留める為に、ジードの存在は不可欠だ。

そういう事情も有り、ベリアル銀河帝国へは介入しないようにしようと思ったのだ。

 

だが、それはあくまで現実的な理由に過ぎない。

 

「やっぱりカッコいいなぁ、ベリアル陛下は」

 

やっぱり、俺はウルトラマンが好きなのである。

だからこそ、この手でウルトラマンベリアルを倒してしまうという事に、そしてジードと言う未来を摘んでしまう事に、凄まじい葛藤を覚えているのだ。

 

けれど、そんな俺に無情にも決断の時は迫っていた。

 

『警告、プロトタイプ波動砲、一部破損、出力が低下しています』

「!?」

 

突如として画面に表示されたアラートに、俺は思わず悪態を吐きそうになるのを噛み殺した。

 

やはりこれだけのエネルギーをそのままにしておくのは無理が有ったか。

破損により強制的に作動した安全弁で徐々に下がっていく波動砲の出力と、ベリアルが包囲網を突破しそうな状況を見て、俺はようやく決意した。

 

再び発射トリガーを握り直し、ターゲットスコープ内のベリアルを睨む。

 

残念だ。

実に残念だ。

あなたにここで消えてもらわなければならなくなった事が。

 

さらば、ウルトラマンベリアル

 

「波動砲、発射!!」

 

俺は今度こそ、波動砲の引き金を引いた。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

【次元波動爆縮放射器】 通称【波動砲】

 

詳しい仕組みを解説するなら、

 

波動エンジン内で発生した余剰次元を射線上に放出し、

余剰次元が『我々の暮らす宇宙』を押しのけて『別の宇宙』として展開し始める際、

その小さなサイズに見合わない膨大な質量によってマイクロブラックホール化し、

それが放つホーキング輻射のエネルギーにより域内の敵を破壊し尽くす。

 

という兵器だ。

 

文明の叡智がもたらしたその光は、かつてある銀河を支配した帝国の力を示す物でもあり、ある者はこう言い現わした。

「星を死に至らしめる一撃」と。

 

発射された波動砲は、一筋の光線を描きながら目標へと飛んで行く。

その先では、ウルトラマンベリアル、ダークゴーネ、アイアロンの三体が戦いを繰り広げていたが、交戦していたプレアデス改級と共に避ける間も無く光の中へと飲み込まれていった。

 

しかし、波動砲がそこで止まる事は無かった。

後方で艦戦を繰り広げていたニュークシア軍、ベリアル軍の一部を飲み込みながら、さらに直進していく。

 

そして、無人の惑星へと着弾した。

 

波動砲のエネルギーと、その星に少量だが含まれていたエメラル鉱石が反応し、莫大なエネルギーを放出する。

次の瞬間、眩い閃光と共に惑星は大爆発した。

 

無数のスペースデブリが飛び散り、ニュークシア軍と違いまともなシールドも備えていなかったベリアル軍の艦に損傷を与えていく。

 

そしてそんなデブリの嵐の中を、小惑星帯から離脱したジャンバードはエスメラルダ本星へと飛んだ。

「一刻も早く、この状況を知らせねば」と。

 

その日、アナザースペースで初めて確認された波動砲は、やがて全宇宙を巻き込む戦乱への序章に過ぎなかった。




作中用語紹介

【プロトタイプ波動砲】

全長:100メートル
全幅:30メートル
全高:35メートル

ニュークシアの衛星軌道上に設置された波動砲搭載の無人砲台。
移動は可能だが、外宇宙航行は考えられていないため航行能力は最低限。
元々は主人公の趣味の実験と、隕石等が迫って来た時の防衛用を兼ねて建造されたが、
今回のベリアル襲撃という事態に、迎撃用の最終兵器として動員された。
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