悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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前回の最後の文で分かった人は分かったとは思いますが、
主人公が生まれたのは「あの星」です。


第二話【消失と覚醒】

時刻は午後五時、全ての業務を終わらせた俺は悠々と会社を出て家路へと急ぐ。

今日は華の金曜日、明日は土曜休みだ。だが、ただの土曜休みではない。

 

「明日が楽しみだな~っと」

 

俺はいわゆるオタクという奴だ。子供の頃からアニメや特撮が好きで、一人暮らしの部屋には蒐集したグッズが所狭しと並んでいる。

そして、明日にはとある大イベントが控えている俺は、鼻歌交じりで歩道を歩いていた。

 

「前売り券ヨーシっ、録画予約ヨーシっと」

 

懐から取り出したスマホで確認をして笑みを浮かべる。

 

明日は『リメイク版宇宙戦艦ヤマト』の最新作の公開日だ。

偶然にも地上波で見た『宇宙戦艦ヤマト2199』からハマり、ここ数年ずっと追いかけている。

本当は今日公開で会社を休もうと思っていたのだが、どうにも忙しくて休めなかったのは実に惜しい。

でも、既に明日のチケットは押さえたし、少々奮発してプレミアシートの一等地を予約した。

後は悠々と映画館へ行ってポップコーンとドリンクを買うだけだ。

 

……おっと、パンフレットと劇場限定ブルーレイも忘れないようにしないとな。

 

そして土曜日といえば忘れてはならない、ウルトラマンの放送日でもある。

最新作も非常に面白く、中盤に差し掛かって劇的な展開に目が離せない。

勿論リアタイで見る予定だが、コレクション用にブルーレイに録画する予定だ。

後で円盤を買っても同じだろうと言われるかもしれないが、リアタイ放送にしか無いCM等も有り、当時の空気感を保存するタイムカプセルのようなものだ。

 

そんな調子で気分よく横断歩道を渡っていた時だ。

 

 

ドンッ!!

 

 

……何が起こった?

 

突然俺を襲った衝撃と浮遊感、まるでスローモーションのように流れる景色に、猛スピードで走り去る車が見える。

 

ああ、撥ねられたのか……

 

 

ドサッ!!

 

 

地面に叩きつけられる激痛と共に、俺の意識は急速に遠のいていった。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

「はっ!?」

 

飛び起きた俺は、何が起こったのかと周囲を見る。

白い壁に囲まれた個室、どうやら病院のようだ。

俺はどうしていたんだ?確か家に帰る途中車に撥ねられて……

 

混乱していると、入り口のドアが開かれた。

 

「気が付いたか」

 

そこに立っていたのは色黒の肌に濃い顔をした渋いイケメン。え?宍〇開さん?

どういう状況?コレ、と混乱していたが、ふと脳裏に目の前の人物の物であろう名前が思い浮かぶ。

 

「……ブラン博士」

 

そう口にすると同時に、ブワッと記憶が再生される。

あまりにも膨大で激流のような記憶は鋭い頭痛を呼び、思わずうめき声を上げながら頭を押さえてしまう。

 

「あまり無理をしてはいけない」

 

苦しんでる俺を見て歩み寄って来たブラン博士が、優しい手つきで俺の背を撫でる。

その手は男らしくゴツゴツとしているが温かく、痛みが少し和らいだ。

次第に落ち着いて混乱も収まると、博士もその様子を察知したようで、撫でる手を止め少し距離を開けてベッド横の丸椅子に腰を掛けた。

 

「頭を強く打ったんだ、安静にしていなさい」

「博士いったい何が……」

 

俺がそう質問すると、ブラン博士は表情に影を落とす。

明らかに尋常じゃないだろうその様子に、俺は一握の不安を覚えた。

そして、博士は重い口を開く。

 

「テラハーキスが暴走した」

 

テラハーキス……暴走……あっ!!

その瞬間、少し前の記憶が再生される。

 

 

―燃え盛る研究所―

―暴走するロボット―

―浮かぶ真っ赤な人工知能―

 

《私の名はギルバリス》

《『永久の平和を実現せよ』という命令に従い》

《争いから逃れられない全ての知的生命を》

《抹殺します》

 

 

「君は暴走したロボットの一体に殴り飛ばされて意識を失っていたんだ」

「傷はそのものは浅かったが、頭部の衝撃が酷かったようで、しばらく危篤状態だったんだ」

 

ブラン博士の言葉を、俺は他人事のように聞いていた。

いや、実際()()()なのだ。

 

「少し、一人にしてはもらえませんか?」

「分かった、また後でな」

 

そして「ゆっくり休んでくれ」と言い残し、ブラン博士は病室から出て行く。

最後まで優しいその人の背を、俺は罪悪感を感じながら見送った。

 

博士は研究所に来たばかりの俺に優しく接してくれた。

どんな失敗をしても根気強く面倒を見てくれたし、庇ってもくれた。

そのおかげで、俺は研究員として大成したのだ。

俺……いや、()()がそう訴えている。

 

だが……

 

「ごめんなさい、ブランさん、あなたの部下はもうこの世にはいません」

 

その記憶の持ち主であるパルデス・ヴィータ本人は()()()()()

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