悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

34 / 164
とうとうニュークシア防衛戦も最後です。


第三十話【終戦】

「ハァ…ハァ…」

「フゥ…フゥ…」

 

満身創痍で立つのもやっとという状態で、肩で大きく息をしながらアイアロンとダークゴーネは目の前のサルヴァラゴンVer.2と正対する。

 

圧倒的な強さで自分達を嬲り続けた金属の悪魔は今、その場でジッと静止していた。

おそらくは、敵の本拠地にベリアル様が乗り込んだという事なのだろう。

そう考えていたダークゴーネの目の前で、今が破壊するチャンスとアイアロンが殴りつけようとした。

 

「ブルァッ!!」

 

《バァンッ!!》

 

が、拳が到達する寸前で波動防壁に跳ね返される。

そしてその反動で尻餅をついたまま、体力の限界に達してとうとう動けなくなった。

 

「今はベリアル様を待ちましょう」

「ぬぅ、無念……」

 

悔しそうに唸るアイアロンの後ろで、ダークゴーネも腰を下ろして少しでも体力を回復しようと努める。

そしてその間も気を抜くこと無く敵の様子を睨む。

サルヴァラゴンVer.2は突如として停止したが、いつまた動き出すかは分からない。

 

膠着したまま、時間だけが過ぎていった。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

夜風が吹く、木々に囲まれた冷涼なテラス。

足元に洒落たテラコッタタイルが敷き詰められ、丁寧に剪定された植木に囲まれた中で、俺は緊張をどうにか表に出さないようにしつつ目の前の存在と正対する。

 

ウルトラマンベリアル、ウルトラ族史上唯一の犯罪者。

光の国に反旗を翻して一度は牢獄に封印されるも、敵性宇宙人の手引きにより復活、その後は何度も宇宙規模の戦いを引き起こしてきた悪の帝王。

そして未来の話ではあるが、最終的には自らの野望の為に生み出したクローンである『ウルトラマンジード』の手により、とうとうその生涯に終止符を打たれた。

 

そしてその悪の帝王が今、俺の前に足を組んで座っている。

ティーカップの紅茶をガブガブと飲みながら、テーブル上の菓子を貪るように食すその姿からは想像出来ないが、間違いなく悪の帝王ウルトラマンベリアルその人だ。

緊張しながら対峙する俺を他所に、いたってマイペースに菓子を食い続ける。

 

こちらから要件を聞いてみたところ、第一声が「腹減った」だったのは恐れ入ったが、まあ良いだろう。

おかげで少し落ち着く事が出来た。

 

「……満足したかね?」

「フン、まあまあだな」

 

ひとしきり菓子を食べたベリアルは散らかったテーブルの上で頬杖をついてコチラへと向き直る。

ニヤニヤと笑う顔からは殺気等は感じないが、油断も出来ない。

俺は恐る恐る、真の目的を聞こうと言葉を切り出す。

 

「で、本題は?」

「ああ、俺様の配下に付け」

 

ベリアルの発言と共に、ベリアルの背後に染み出すように黒い闇が現れ、徐々に人型の形態をとっていく。

その闇に、俺は覚えが有った。

かつてクシアを助ける為に、自分と悪魔の契約をした全能の宇宙人。

 

『久しいな、パルデス・ヴィータ』

「レイブラッド、そうかお前がベリアルを……」

 

思った通りというか予想は出来て来たが、やはりレイブラッドがベリアルを嗾けさせたようだ。

それなら、ベリアルの目的はやはり……

 

「ギガバトルナイザー、お前が造ったってのは聞いてる」

 

「コイツからな」と親指でレイブラッドを指すベリアルに、俺は思わず頭を抱えたくなった。

そうだ、この時期のベリアルはギガバトルナイザーを失っている。

ベリアル自身が強いのは間違い無いのだが、やはり光の国を相手取るには強力な武器が欲しいという事なのだろう。

 

「俺様は全宇宙を支配する、そして俺様の前に立ちふさがる奴らは全てぶっ潰す、特に……ウルトラマンゼロ」

「ウルトラマンゼロ、それが君の敵の名前かね?」

 

ウルトラマンゼロの名を出した途端に、ベリアルの表情が苦々しく歪む。

まあ、そりゃあそうだろう。自身が得る事が出来なかったプラズマスパークの力を手にし、さらには光の国への復讐という野望を打ち砕いた若き戦士。

ベリアルからすれば、何よりも潰したいだろう存在だ。

 

「奴には借りが有るからなぁ、地獄に落としてやらなきゃ気が済まねぇ」

「言いたい事は分かった」

 

俺はしばし悩む。

ニュークシアはこうしてベリアルによって占領されたものの、それはベリアル自らが単身でコッソリと乗り込むという特殊な作戦の結果であり、少なくともその他の面においてはニュークシアはベリアル軍に勝っている。

ベリアルが今まで占領してきた星のように無闇に破壊活動をせず、こうしてワザワザ俺に交渉を持ち掛けてきたという事は、この星の技術を活用したいという事なのだろう。

そう考えると、今のところ[ベリアルに殺される]というリスクは少ない。

 

『貴様にもベリアル軍に入るメリットが有るはずだ』

 

悩んでいた俺に、レイブラッドが援護射撃を加えて来る。

 

『こんな星をただ一人で管理しているという事は、この星へのクシア人の移住を考えているのだろう?』

『クシアの住民達を連れて来る為に、元の世界に戻りたいのではないか?』

「……」

 

その言葉に、俺は思わず黙り込んでしまう。

 

そうだ、ベリアルと組む事にもメリットはある。

自動化は進んでいるものの、今の状態では人手が少なくて平行世界の探査を進める事が出来ないでいる。

その点をベリアル軍に協力してもらえれば、条件をクリアする事が出来るはずだ。

現に、原作のベリアル銀河帝国ではベリアル側が先にM78ワールドを発見し、光の国にダークロプスを送り込んでいる。

 

確かにウルトラマンゼロを待つというのも一つの手だろうが、こうしてベリアルに乗り込まれてしまった以上はそれも出来ない。

 

「もしも俺様に協力するのなら、この星は今まで通りお前の物、手出しをする事は無い」

 

ベリアルが頬杖をついたままこちらを見てくる。

だが、先ほどまでとは違いその眼は真剣だ。

おそらくは、本気でこの交渉を持ち掛けているのだろう。

 

《もし断れば?》なんて野暮な質問返しはしない。

断ればどうなるのかは火を見るより明らかだ。

 

そうなると、俺が出せる返事は一つしかなかった。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

《キュォォン……》

 

 

「起動したか!!」

「まだ戦いますか!?」

 

膠着した状態がしばらく続いていたが、突如として起動したサルヴァラゴンVer.2に、アイアロンとダークゴーネは即座に身構える。

だが、サルヴァラゴンVer.2はその場を動かず、直立した姿勢を崩そうとはしない。

 

「動かんなぁ……」

 

アイアロンがそう呟いた時だ、突如としてサルヴァラゴンVer.2のスピーカーから音声が出力される。

 

『私はこの惑星、ニュークシアの管理人であるパルデス・ヴィータ』

『カイザーベリアルとの交渉の結果、私はベリアル軍の軍門に下る事となった』

『これ以上の攻撃は実行しない』

 

『繰り返す……』と再び同じ内容を再生しだしたサルヴァラゴンVer.2に、アイアロンとダークゴーネはようやく肩の力を抜いた。

これで終わったのだと。

 

かくして、大規模な戦争となったニュークシア防衛戦は、双方に痛手を残してここに幕を下ろした。

この結果が、後に凄まじい惨劇を巻き起こすなど誰にも分らぬまま。

宇宙には、変わらず静かな時が流れていた。




ようやくニュークシア防衛戦も終わり、主人公はベリアルの傘下となりました。
ここからようやく本当に『悪の帝国のテクノクラート』となっていきます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。