悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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主人公がベリアル軍に入ってからしばらく経ち……


第三十一話【与えられたモノ】

澄み渡る青空、微風が木々の葉を揺らす春先の朝。

 

俺は研究所の建物から外に出て空気を肺一杯に取り込むと、今日の予定を完遂するべく用意された車に乗り込む。

扉が閉まると車は自動で発進し、木々の間を潜り抜けて敷地内を走っていく。

敷地内に広がる自然を享受するのは自分達だけではなく、時々野生のタヌキが駆けていくのを見て心を癒されつつ、車は進んで行く。

 

半蔵門から街へと出ると、周囲の景色は大きく変わる。

かつて世界最大のメガロポリスであった東京も、数百年単位で放置されればゴーストタウンの如く不気味な様相を晒している。

 

そんな荒涼とした光景を眺めながら、俺は最近の悩みへと思考を移した。

ベリアル軍に与するという事は、すなわち他星への破壊活動へと手を染めるという事だ。

今は停滞しているが、遅かれ早かれ俺も手を貸す事になるのだろう。

クシア人を救う為とはいえ、やはりこちらの都合で無辜(むこ)の民を犠牲にしてしまうのは避けたい。

けれどベリアル軍に所属している限り、逃げる事が出来ない現実だ。

 

そういったジレンマに対して延々と悩んでいる内に、車は目的地へと到着する。

 

正門を潜って敷地内を走り、やがて車寄せへと静かに停車した。

車を降りると、目の前にそびえ立つのは壮麗なネオ・バロック様式の建築。

 

【迎賓館赤坂離宮】

かつては東宮御所として建設され、近代には改装を受けて海外の要人を受け入れる為の施設として使用されていた建造物。

ここも俺が来てからしばらくの間は放置していたが、今はとある用途の為に再び清掃や改造を施して使用している。

 

『オハヨウございます、パルデス様』

 

扉の前に立っていたロボットが俺の姿に気づくと、静々と扉を開けて中へと案内する。

重厚な石造りの外装と違い、内部は職人の技術の粋を集めた煌びやかな内装だ。

磨き抜かれた大理石の上に敷かれた分厚い赤絨毯、上を見上げれば鮮やかな絵画と金箔に彩られたアーチ形の天井。

豪華絢爛な内部の中央階段を、俺は二階へと昇っていく。

 

『コチラへ……』

 

先を行くロボットに付いて歩いて行く。

その間も大理石をふんだんに使用した柱や緻密な彫刻が目に入るが、既に何度もここに来ている為に見慣れてしまった。

それよりも今は用事を済ませる事が先決だ。

 

『コノ部屋で、現在お食事を取っていらっしゃいます』

「分かった、案内御苦労」

 

お辞儀をして去って行くロボットの後ろ姿を見送り、俺は目の前の扉を2回ノックする。

返事は無いが、そもそも今から会う相手は返事をわざわざ返してくれるような性格でも無いので、

「なんだかんだでこの暮らしにも慣れてしまったな」と最初の頃に怯え緊張しながら接していた事を思い出し苦笑しながら、そのまま扉を開けた。

 

「失礼します」

 

ガチャリと開いたドアの先には、これまた煌びやかな光景が広がる部屋だった。

壁面や天井に余す所無く施された彫刻や絵画、吊り下がった巨大なクリスタルのシャンデリア、幾つもの巨大な窓から射す光が室内を明るく照らしている。

 

そんな部屋の中央に置かれた丸テーブルに、目的の人物は座っていた。

 

「定期報告です、ベリアル様」

 

俺の言葉に目的の人物、ウルトラマンベリアルはチラリとコチラを一瞥した。

だが、そのまま俺から目を逸らして目の前の作業、いわゆる『食事』へと戻る。

そしてテーブルに並ぶ古今東西ありとあらゆる料理(主に肉)を物凄い勢いでガツガツと口に運んでいく。

今のベリアルはどうやら肉体を失って人間に憑依している状態のようで、人間の肉体の維持の為に、本来ならウルトラ族には不要な筈の食事を必要としているらしい。

 

俺はその様子を見つつ、いつもの様に手元のタブレットを見ながら報告事項を確認する。

ベリアルによるクシア襲撃から約半年になり、毎日行われるこの仕事も既に習慣となってしまって久しい。

 

「まず、支配惑星の状況ですが……」

 

一つ一つの報告事項を脳裏にまとめ、言葉に出す。

支配した惑星の資源採掘情報、戦艦や戦闘用ロボの製造情報、平行宇宙の調査情報など、

報告中もベリアルは食事の手を止めないが、これでいてキチンと聞いているので、やはり指導者としての能力は高いのだろうなと思う。

 

そして最後に支配地で実質的な統治を任されているアイアロンとダークゴーネの近況を報告する。

クシアでの戦いでかなりの深手を負った2体だが、その傷も凄まじい早さで回復し、再びベリアル軍の仕事へと戻る為に宇宙へ飛び立って行った。

その驚きのタフネスさと忠誠心には舌を巻くばかりだ。

 

「……以上が本日の報告です」

 

一通りの報告を終え、俺はいつもの通りに挨拶を済ませて退席しようとする。

 

『待て』

 

いつもならそのまま帰して貰えるが、今日は何故か呼び止められた。

どうしたのかと思えば、ベリアルの傍らに黒い闇……レイブラッドが現れる。

その黒い闇はゆらりと揺れたかと思うと、俺の方に迫って来た。

 

「なっ!?」

 

避ける間も無く、闇はそのまま俺の体へとぶつかり、すり抜けるように体の外へと出て行った。

一瞬、何が起こったのか分からず硬直していた俺だが、こちらを見てニヤニヤと笑うレイブラッドに“趣味の悪い悪戯”だと自己完結し、足早に部屋から退出した。

 

その結論すら、レイブラッドに植え付けられた都合の良い思考だと気付かずに。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

ベリアルは食事の手を一旦止め、皿の上へ無造作にナイフとフォークを置くとレイブラッドへと視線を移す。

レイブラッドの顔には相変わらずの笑みが浮かべられていて、ベリアルは背筋が粟立つような不快感と不気味さを感じていた。

 

「貴様、あいつに何をした?」

 

剣呑な表情で自分を睨んで来るベリアルに、扉を見ていたレイブラッドはチラリと横目でベリアルを一瞥し、再び闇の中へと溶けるようにしてベリアルの体内へと消えていく。

「おい!」と怒鳴り声を上げそうになったベリアルの脳内に、テレパシーによって直接言葉が伝えられた。

 

『奴に足りない物を与えてやっただけだ』

「ハァ!?」

『奴の重責に対して足りない物、どんな困難をも乗り越える鉄の意思、それが……』

 

ニィっと、レイブラッドの口角が吊り上がる。

 

狂気(かくご)だよ』

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

迎賓館から出た俺は車に乗り込むと、流れていく景色を眺めながら再び先ほどの悩みについて思考する。

ベリアル軍で侵略に手を染めながら現地の人々を救う方法、それは……

 

ふと、俺の中にパズルのピースを嵌めるように、テトリスのピースを一列揃えた時のように、ストンとある考えが浮かんだ。

 

「有るじゃないか、侵略しながら現地の人々を守る方法!!」

 

まるで雲が晴れるかのように、俺の脳裏に浮かんだ名案。

アレを作れば、ベリアル軍としての侵略と、現地民の保護を両立できる!!

そう、()()()()()()()()()を使えば……

 

「早速製作しないと!!」

 

俺は歓喜に胸を躍らせつつ、研究所へと到着すると走って建物内へと入って行った。

善は急げ、と意気込んで。

 

その名案が、レイブラッドに与えられた覚悟(きょうき)によるものだと知らずに……




はたして主人公が至った結論とは?
主人公の覚悟(狂気)とは?
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