「CRSエレメント製造装置の完成も近いな……」
ベリアルがニュークシアへとやって来てから数か月が経ち、俺が相変わらず研究に励む中でも身を取り巻く状況は刻々と変わって行く。
まず、制圧した惑星から資源や人手を補填できた事により、ベリアル軍は大幅な増強に成功した。
現地に大規模な工場を建設、レギオノイドを筆頭とした軍事用ロボットや、それらを輸送出来るブリガンテ級戦艦を凄まじい速度で製造し、今やその規模は一つの惑星の軍隊を軽々と上回る。
勿論、ただ原作通りという訳ではなく、これらの兵器にもヤマト世界で培われた様々な知見が活かされている。
例えば、ブリガンテはガトランティスのカラクルム級をベースに設計されており、今後完成する生体技術を利用した製造プラントを利用すれば更なる大増産が可能だ。
あと、エスメラルダ側へは正式にベリアル軍への加入を宣言した。
原作通りにベリアル、ダークゴーネ、アイアロンが倒されれば、おそらく矢面に立つのはベリアル軍に技術将校として所属している俺だ。
その場合、俺が責任をもって和平交渉を執り行わねばならない。
ただ、今研究している
まあベリアル様からの無茶振り注文もかなり有るので遅れてはいるが。
主にダークロプスゼロとかダークロプスゼロとかダークロプスゼロとかが原因で……
ある日突然呼び出されて「ウルトラマンゼロにソックリのロボットを作れ」と渡された絵が、は○だしょ○こお姉さんばりの画伯だった時のあの絶望感は筆舌に尽くしがたい。
しかもベリアル様は「お前本当はゼロが好きなんだろ!?」と口に出したくなるぐらいに、やたら細かくディテールにダメ出しして来るし、あの時の事は本当に思い出したくも無い。
おかげさまで他の研究や生産にも影響が出ており、現在急ピッチで挽回しようと奮闘中だ。
そんな事を考えつつ、俺は時計を見て研究を中断した。
今日はベリアル軍の領地に新しい兵器工場が完成する日だ。
試験機のダークロプスゼロの研究により完成した量産型ダークロプスの新工場、その視察をしなければならない。
『船の準備ハ完了してオリます』
「ありがとう、アナライザー」
俺は席から立ち、白衣をハンガーにかけて皺にならないように伸ばすと研究室から出て行った。
―――――――――――――――
用意された戦艦、グレート・プレアデスへと搭乗し、護衛として引き連れていく多数のブリガンテ級に囲まれながらニュークシアから飛び立つ。
本当ならアンドロメダ級に乗って行きたかったが、こちらもダークロプスの一件の影響で計画が遅れ、まだ建造中なのでやむを得ない。
ちなみに、ベリアル軍の標準艦は勿論ブリガンテではあるが、ニュークシアの戦艦に関しては好きにさせてもらっている。
ベリアル様は命令さえ聞けば、それ以外は案外好きにさせてくれるので結構助かっている。
というか割と気前が良い所も有ったり豪胆な所が有ったり、かと思えばストイックな所も有ったりと、時々繰り出す無茶振りを除けば非常に魅力的な方だ。
……いかんいかん、ベリアルは悪の帝王、冷酷非情な独裁者、うっかり絆されるところだった。
やはりベリアル様のカリスマ性は非常に高いと思う。
「タイムライン通りに立ち上がったな」
征服惑星に建造されたダークロプスの製造ラインは予定通りに稼働した。
工場内にはフル稼働する工業用ロボットと現地民から選抜した従業員が忙しなく動き回り、ダークロプスを一から組み上げていく。
この調子なら日産500体は可能だろうと思う。
だが、まだ足りない。
「現場の改善を進め、日産1000体まで向上させろ」
「でっ、ですが……」
俺が現地のまとめ役である征服惑星の指導者に指示を飛ばすと、その指導者は戸惑いの混じった表情を浮かべる。
そりゃあそうだろう、苦労してやっとここまで生産機数を増やしたのだ、これ以上は厳しいというのも道理だ。
しかし、ベリアル様からの指示は更なる増産。
「『期限までにダークロプスを100万体製作しろ』これがベリアル様からの命令だ」
「100万!?」
指導者が100万という数を聞いて腰を抜かしてへたり込む。
そうなる気持ちも分かる、だがだからと言ってベリアル様からの命令が覆る事は無い。
俺は非情に徹しながらも、多少なりとも指導者の気持ちを和らげるべく言葉を選んで命令をする。
「勿論、この工場のみで100万体製作しろとは言わない、だが日産1000体が最低ラインなのは譲れない」
「そっ、そんな……」
「出来ないのなら、資源に乏しいこの星をベリアル様が存続させる理由を探してみる事だな」
絶望に項垂れる指導者を背にして、俺は工場を後にした。
―――――――――――――――
「つくづく損な役回りだと思わないか?アナライザー」
『確率的に考えレバ、ご主人様の行動はアノ征服惑星を救ウ最善策です』
「まあ、そりゃあそうなんだけれども……」
気疲れから艦長席にドッカリと座り溜息を吐きつつ、俺は給仕ロボットが持って来たカモミールティーに口を付ける。
古代には薬草としても使用されていたカモミールは、リラックス作用の有るハーブの一種だ。
その香りを堪能し気分を落ちつけつつ、俺はあの征服惑星へと思いをはせる。
ベリアル軍の侵攻初期に征服されたあの星は、エメラル鉱石が取れない上に文明の程度も低く利用価値無しと判断されていた。
その為、下手すれば暇つぶしに殲滅されるか、ベリアル軍に集まったゴロツキの玩具にされる運命を辿るところだったのだ。
そこで俺がベリアル様に「この星を工場として利用したい」と進言し、実際に工場を建設した事でどうにか存続が許されたのである。
まあ自己満足でしかないが、一応は俺があの惑星を救ったという事なのだろう。
それが例え地獄への一本道だったとしても。
「俺は出来る限りの救済をした、後はあの星の住人の頑張り次第だ」
そう言葉を締め、途中で放置してしまった研究の事を思い出す。
早くニュークシア本星に戻って研究を再開させねばならない、それがこの宇宙で死ぬ運命にある者たちを少しでも多く救う事が出来る手段なのだから。
そう考えていた時だった。
《ピーッ、ピーッ、ピーッ》
「何事だ!?」
突如として艦橋に響き渡った警告音に、俺は思わず艦長席から身を乗り出す。
『艦進行方向に大規模な位相の褶曲ヲ検知』
「位相の褶曲……何者かが正面にワープアウトして来たと?」
『ハイ、本艦から約35万宇宙キロの地点ニ艦影を多数検知、メインモニターに映しマス』
数秒のラグの後に、艦橋上部の巨大モニターへと映像が映される。
それを一目見て、俺は全身から血の気が引いて行くのを感じた。
「そんな、まさか……」
冷汗を流しながら、俺は正面のモニターへと映された映像を凝視する。
リアルタイムで投映されている映像には有機的な曲線で構成された黄土色の艦が多数、そしてその中央には燃えるような赤い色の旗艦と思しき艦影が一つ。
最悪だ、マジで最悪だ、ココでのエンカウントは予想していなかった。
ギリリと歯を食いしばった俺へ、アナライザーが無情な現実を突きつける。
『艦種識別、【炎の海賊団】デス』
ズームされた映像、その中に赤い戦艦の上で腕を組んでコチラを睨み付ける【紅蓮の巨人】の姿が有った。
【宇宙船解説】
ガイゼンガン兵器群 ブリガンテ級戦列艦
全長:700メートル
武装:回転大砲塔×3基
艦橋砲塔×3基
艦橋大砲塔×1基
艦首超大型固定砲×1基
宇宙戦艦ヤマト2202に登場した『ガイゼンガン兵器群 カラクルム級戦闘艦』をベースに主人公が設計した戦艦。
後ろ半分にはカラクルム級の面影が残っているものの、前半分はダークロプスやレギオノイドを多数搭載する為に大幅な設計変更が行われている。
カラクルム級最大の武装であった雷撃旋回砲はオミットされたものの、艦首部分のベリアル軍の紋章部分には高出力のレーザー砲である『艦首超大型固定砲』が搭載され、それはカラクルム級数隻が必要となる戦略攻撃『インフェルノ・カノーネ』と同等の威力を誇る。
今現在は工場での量産が主だが、将来的には生体技術を応用した建造方法により無尽蔵に生物の如く生み出し、生産する事が可能になる。