悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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炎の海賊団に出会った主人公ことパルデス・ヴィータ君、しかし今の装備は心許無いもので……


第三十三話【自由の炎】

モニター上に映る炎の海賊団の艦隊は、確実にコチラへと近づいて来ている。

何故、奴らはこちらの位置を知っている?今回の視察の件は公には伏せられていたはず。

 

そう考えた所で、一人の顔が思い浮かんだ。

ベリアル軍に所属している者以外で、今回の視察の詳細を詳しく知っている者。

 

「あの野郎、やりやがったな!!」

 

脳裏に浮かぶ征服惑星の指導者の顔に、俺は怒りのあまりカモミールティーが入っていたカップを壁へと投げつけた。

哀れ、ティーカップは甲高い音を立てて砕け散り、飲みかけだったカモミールティーの飛沫が飛び散る。

そしてすぐさま駆け付けた清掃用のロボが汚れを掃除しているのを横目に、俺は指示を出した。

 

「……アナライザー、炎の海賊団側にコンタクトを取れ」

『了解』

 

ストレスのあまり痛む頭を片手で押さえながら、俺は艦長席へと再び腰を掛ける。

「あの指導者め、目にもの見せてくれる」と呪詛を呟きながら、俺は通信が繋がる暫くの間を天を仰ぐように上を向いて待っていた。

 

そして……

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

「船長、敵艦隊から通信です」

 

炎の海賊団の旗艦であるアヴァンギャルド号、その艦橋で通信係のクルーの一人が通信を繋ぐ可否を求める。

 

「ほほう、今までのベリアル軍の奴らとは違うようだな」

「奴らは毎回、問答無用でこちらに砲を向けて来たからなぁ」

「通信をかけて来るって事は()()()()は正しかったって事か」

 

艦橋の奥から堂々と歩いて来る三人の男、彼らがこの海賊団を束ねるガル、グル、ギルの船長三兄弟だ。

彼らは目の前のモニターに映るベリアル軍の艦艇を見て、つい先日に起こった事を思い出す。

 

3日程前の事だ。

海賊団が根城として使用する通称【隠れ宙域】と呼ばれる場所に、一隻の小型宇宙船が漂流してきた。

外観から見て激しい攻撃を受けたらしく、傷だらけの上にいくつもの穴が開いてしまっている。

 

海賊団のクルーが小型宇宙船の内部を調査したが、残念ながらほとんどの船員は既に事切れていた。

ただ一人、瀕死の状態の船員が居たのだが、その船員も海賊団のクルーに一枚のデータチップを渡して息を引き取った。

 

「我らの星を救ってくれ」と言い残して。

 

データチップの内容は二つのデータだった。

一つ目はベリアル軍の高官が三日後にとある惑星へと視察に来る事。

そして二つ目は、その惑星の指導者から炎の海賊団へと向けた哀願だった。

 

その惑星はベリアル軍による侵攻を受け、資源であるエメラル鉱石にも乏しい星であった事から人夫の提供を求められた。

軍の強化の為に次から次へと建設される工場、凄まじいノルマを課せられ奴隷の如く働かされる住人達、

既にその星の住人は限界に達していた。

 

そこで最後の望みを賭けて、炎の海賊団へと使者を送ったのだ。

きっと辛かっただろう、きっと怖かっただろう、きっと苦しかっただろう。

それでも使者は自分達の命と引き換えにベリアル軍の包囲網を抜け、見事に隠れ宙域へとたどり着いた。

 

遺体は、海賊団の手によって荼毘に付された。

例え自分が命を落としたとしても故郷を救いたい、大切な人を守りたい、そんな最後の願いが炎の海賊団を動かした。

彼らの想いを無駄には出来ない、と。

 

「通信を繋げ」

 

ガルが通信を繋ぐように指示を出し、通信係のクルーはベリアル軍側との通信を繋いだ。

しばらくのノイズの後に、画面に映像が映し出される。

 

悠然と艦長席に座る一人の男。

怜悧な眼差しが、画面越しでも分かるような威圧感を向けてくる。

金ボタンで留められた黒いロングコート、そしてその頭に被せられた軍帽にはベリアル軍の紋章が記されていた。

 

一目見てベリアル軍の高官と分かるような出で立ちのその男は、少しの間を置いた後ゆっくりと口を開いた。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

こちらから炎の海賊団への通信が繋がり、画面に三人の男が現れる。

前世の記憶が正しければ、確かガル、グル、ギルの三兄弟だったはず。

テンションが上がると四方八方へと銃を乱射する傍迷惑な奴らだが、これでも炎の海賊団を率いる船長だったはずだ。

 

「こちらはベリアル軍の技術将校、名前はパルデス・ヴィータだ、貴殿らの指導者との会談を望む」

 

なるべく礼を失しないように言葉を選んで話しかける。

相手は自由を愛し、義理と人情を重んじる宇宙海賊だ。

少なくともキチンと接すれば、話ぐらいは聞いてくれるはず。

 

「ワシら海賊三兄弟」

 

画面に映った三人の男は人垣の中から前へと抜け出て来ると、こちらを睨みつけながら名乗りを上げる。

 

「ガル!!」

「ギル!!」

「グル!!」

 

力強い名乗りを上げた瞬間、周囲の船員達は雄叫びを上げる。

 

『流石は海賊、野蛮人が揃っているなぁ』とか思いながら、早速俺は彼らに交渉を持ち掛けた。

今は研究・開発が遅れているせいでこうしている時間さえ惜しいし、戦いへと発展した場合の事を考えると戦力が心許無い。

 

正面に展開する炎の海賊団の艦隊はコンピュータによる解析の結果では約100隻、それにプラスして用心棒のグレンファイヤーが構えている。

それに比べてこちらの艦隊はグレート・プレアデス一隻とブリガンテ10隻、それとブリガンテ一隻につき20機ずつ搭載されたレギオノイドβが合計200機

正直言って、勝敗が全く想像できない。

 

そのため、俺は穏便に事を収めようと話しかける。

 

「今現在、この宙域はベリアル軍の領域となっている、退避するのなら攻撃はしない」

 

そう言った瞬間、画面に映った三人は大笑いした。

 

「……何がおかしい?」

 

一体どこにそんな笑う要素が有った?

俺が困惑していると、三人は一頻り笑った後に炎の海賊団とは名ばかりと思える程の冷えきった視線を向けて来る。

 

その視線に、俺は背筋へと悪寒が走るのを感じた。

 

「俺達は何よりも自由を愛する海賊!!」

「誰からも縛られる事は無ぇし、縛ろうとする奴も許さねぇ!!」

「ベリアル軍からの指図なんて聞く耳持たねぇなぁ!!」

 

そう啖呵を切ると、三人は腰のホルスターから銃を取り出し、上へと向かって発砲。

《パン!パン!パン!》と画面越しに響く銃声に思わず耳を塞いでしまう。

そして一頻り銃を撃った後、三人は宣言した。

 

「野郎共、ベリアル軍をぶっ潰せ!!」

「一人も逃がすな!!」

「突撃突撃ィ!!」

 

船長の宣言に、海賊団のクルー達は「ウオオオオオオ!!」と雄叫びを上げる。

そしてそのままプツリと通信は切れ、艦橋を寒々しい沈黙が支配した。

 

俺はあまりの絶望感に、脱力して艦長席へと腰かける。

ダメだ、まさかこんな事になろうとは……

 

相手はダークゴーネの知略すら掻い潜る手練れの海賊団、果たして俺達に勝機は有るのだろうか?

 

『ご主人様、敵艦隊ガ猛スピードで迫って来ていマス』

「……分かっている、アナライザー」

 

アナライザーが指示を急かすかのように、俺へと迫って来る。

そうだ、このままではいけない。

俺の手にはクシア人の未来がかかっているのだ。

何としてもこの場を切り抜け、生き残らねばならない。

 

俺は覚悟を決め、艦長席から立ち上がり指令を飛ばした。

 

「第一種戦闘態勢へと移行、全てのレギオノイドを出撃させろ!!」




レギオノイドは原作だとエスメラルダ占領以降に製作されたことになっていますが、今作では「主人公がベリアルの要望に答える形で製作した」という設定になっています。
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