似たような小説を書いている身からすれば、ちょっとシンパシーを感じます。
惑星ニュークシア、その地表に生い茂る木の葉から朝露の雫が落ち、穏やかな陽光の光をきらりと反射する。
気温は程良く、北から吹く微風は少しの冷涼さを爽快感と共に運んで来る。
そんなこの星に住む生きとし生ける者の大多数にとって歓迎すべき気候となった東京の中心部にはしかし、鳥や動物達の姿は消えている。
主に一人の男のせいで。
東京の中心部に鎮座する『迎賓館赤坂離宮』
その内部の一室で、怒りのあまり地の底から湧き出して来るような闇を纏いながら仁王立ちする男、今は人間の体を仮の姿としているウルトラマンベリアル。
ベリアルの内から発せられるその闇は、周囲の気温を氷点下にまで下がったような体感を抱かせる。
そんなベリアルの目の前で、俺ことパルデス・ヴィータは震える体を叱咤しながら跪く。
マズい、マジでマズい。
あまりの激怒具合に頭から報告事案が吹き飛びそうになるが、どうにかこうにか忘却の彼方へ旅立とうとする記憶達を引き留めた。
ここで機嫌を取らない事にはどうにもならない。
「……ダークロプスの工場を失ったってのは本当か?」
「残念ながら……」
《ピシッ!!》
俺が一言発した瞬間に、横から何かが割れるような聞こえた。
視線を向けてみればテーブルの上に置いてあった分厚いクリスタルグラスにヒビが入っている。
ヤバい、ウルトラ念力だ、下手したらペチャンコになる。
こめかみをタラリと一筋の汗が伝うのを感じた。
「俺様が一番嫌っている物は何か分かるか?」
「ウルトラマンゼロ、でしょうか」
突如として質問を投げかけて来るベリアルに、俺は少し考えを巡らせた後に答える。
少なくとも今の時点では、ベリアルにとっての天敵はウルトラマンゼロのはず、そう思って。
俺の返答にベリアルは「フン」と鼻を鳴らすと目を細めて俺を見下ろす。
「ああ、それもだな、だが俺様が今一番嫌っているモノ、それは……」
一瞬の間をおいて、ベリアルは言った。
「下等生物に舐められる事だ!!」
その怒鳴り声と共に《パァン!!》とクリスタルグラスが爆ぜる。
幸いにもガラスの破片が当たる事は無かったものの、飲みかけのブランデーの飛沫が顔にかかる。
だが、俺は跪いたまま姿勢を崩さない、ここで無様を晒せば、ベリアルに何をされるのか分からない。
「ダークゴーネが報告してきた、あの反逆者共は仲間を星に連れ込んでヨロシクやっているそうだ」
そうですね、こちらでも把握しておりますよ。
その言葉をグッと飲み込み、俺はベリアルの言葉に耳を傾ける。
しばらく不満を並べて怒りを現した所で、ベリアルは俺に問を投げかけてきた。
「パルデス・ヴィータ、この落とし前をどうつける?」
そんなヤクザみたいな質問、いや、ヤクザと変わらないか。
とにかく、ココは今後の方針を示す必要が有る。
「反逆惑星に関しては、既に今後の方針を決めております」
俺は懐からタブレットを取り出すと、サッとベリアルへと差し出す。
それを受け取ったベリアルは指で下へとスクロールして行った。
しばしの無言、緊張感が場を支配する中、ベリアルはタブレットに表示されたデータを読んで「ふむ」と顎に手を添える。
「まあ、上出来だと誉めてやろう」
多少機嫌が上向いたのか、ベリアルはタブレットを下へと放り、腕を組んでコチラを見下ろす。
その事にホッと胸を撫で下ろした俺は、タブレットを拾いながら今後の計画について考えた。
タブレットの内容は、今後の軍備に関する最新の生産計画に、完成しつつある
「一週間後には、ベリアル様の肉体を元に戻せるでしょう」
失ったベリアルの肉体の復元。
波動砲により肉体を消失したベリアルは、現在人間の体を借りている状態だ。
それを元に戻す。複雑ではあるものの、当然ベリアルからは肉体の復活を強く求められており、軍門に下った以上は言う事を聞くほか無い。
まあ、それに関しては『
詳しくは……後になれば自ずと分かるはずだ。
「ベリアル様、一つ提案が」
「言ってみろ」
「現状の戦力に併せて『ベリアル様の肉体再生』並びに『帝都要塞の完成』、この二つが済めばベリアル様は比類無き力を手に入れる事になるでしょう」
そして俺は、
「私は惑星エスメラルダの侵略に乗り出すべきと愚行いたします」
俺の提案を聞いたベリアルは目を見開き、しばし硬直した後に俯いて肩を震わせる。
どうしたのかと訝し気に様子を窺う俺を他所に、ベリアルは思い切り体を逸らして笑い始めた。
「……ククッ、ハッハッハッハッハッ!!」
部屋中に響く笑い声、ベリアルの豪胆な性格を表すようなその笑いは延々と続く。
耳が痛くなるようなその声に、俺は必死に耐えながら終わりを待った。
そもそもウルトラマンジードの劇中で披露していたように、ベリアルの大声はそのまま音波攻撃としても通用するぐらいの凶器だ。
しばらくして、ようやく笑いが治まり静まり返った部屋の中で、今までに見た事も無いような笑みを浮かべたベリアルが冷酷に命令を下した。
「面白い、良いだろうパルデス・ヴィータ、貴様の今後の働きに期待する」
「ありがたき幸せ」
ベリアルからの話が終わり、俺はようやく跪いていた所から立ちあがる。
姿勢を固定していた事で多少の足の痺れは有ったものの、一刻も早くこの場を後にしたい気持ちを優先し、強引に無視する形で俺は部屋のドアへと歩いて行った。
汗に滑る手でしっかりとドアノブを握り、重厚な木製の扉を開けて廊下へと踏み出す。
「お前の狂気、見せてもらおうか?」
ベリアルが俺の背に投げかけた最後の言葉は届かないまま、部屋の扉は閉じられた。
レイブラッドによって狂気に目覚めつつある主人公、はたしてどうなるのか。