悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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シン・ウルトラマンは実に素晴らしい。


ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ編
第四十二話【失われた試験機】


「征服惑星の破壊、痛快だったな」

「お褒めに預かり光栄です、ベリアル様」

 

迎賓館の敷地内に新たに建設された離れ、そこで俺はベンチプレスでトレーニングを続けるベリアルへと先日の反乱の顛末について報告した。

ここは「体が鈍るから運動できる場所を作れ」というベリアルからの命令によって造られたジム棟だ。

ウルトラマンゼロ打倒の為なのか、ベリアルは毎日このジム棟でトレーニングを行っている為、時々こうしてジム棟で運動するベリアルへと報告しに行く時が有る。

 

腐っても光の国出身だからなのか、ベリアルは支配や復讐に対しての執着は凄まじいものの、意外な事に性欲に関してはかなり薄いようで、女を連れて来る等ソッチ方面の要求は受けた事が無い。

以前にその事について聞いてみたが、本人曰く「下等生物と寝るつもりは無い」との事。

ちなみに、マリーの事を思い出した俺はうっかり「心に決めた人が居るんですね」と言ってしまい死にかけた、マジで。

 

まあその事は今は関係無いから置いておくとして……

 

「奴らに恐怖を与えるのには良い道具だが、エメラル鉱石の多い星に使えんのは惜しいな」

「波動エネルギーはエメラル鉱石のエネルギーに強く反応し過ぎるので……」

 

軽々とバーベルを上下運動させているベリアルへと向かって、俺はいかにも残念そうに言うが、内心では好都合だと思っていた。

波動エネルギーがエメラル鉱石のエネルギーに反応し過ぎる欠点は、すなわちエスメラルダへの波動砲を発射を防ぐ事が出来るという事だ。

既に惑星アヌーに含有するエメラル鉱石の量も調べ、その含有量を参考に『波動砲を撃って良い惑星』のリストも製作してあるし、問題は無いと思う。

 

「ダークゴーネが調べたところによると、レジスタンスに協力している惑星は複数有ります」

「エメラル鉱石を持っていない、尚且つ利用価値の少ない星をいくつか破壊しろ、奴らへの脅しになる」

「承知いたしました」

 

ベリアルの指示を聞き、俺は離れから退出しようとした。

 

《ピーッ、ピーッ》

 

だが、その足は突如として鳴ったブザーによって止められる事になる。

離れの壁に設置されたコンソール、そのホログラフィックディスプレイに表示されるアイアロンの名前と緊急通信の文字。

 

「アイアロンからの通信のようです」

「繋げ」

 

俺はコンソールへと歩み寄り、通話ボタンを押す。

離れの天井に設置されたプロジェクターが光ると、数秒後にはアイアロンの姿が立体映像で描画された。

 

『アイアロンよりベリアル様へ通信』

 

いつもの如く、アイアロンの低く粘りつくような口調がスピーカーに流れる。

 

今の刻限に通信を行っているという事は、どうやらレジスタンス基地の殲滅任務は順調に進んだようだ。

チシタリアの件からベリアルに対して従順な惑星もそれなりに増えた。

その中にはレジスタンスからベリアル銀河帝国へと鞍替えする勢力もいる。

 

今回アイアロンが行った殲滅任務は、そういった経緯でベリアル側に付いた勢力からもたらされた情報を基に行われた。

 

『任務の方は完了、レジスタンスの拠点は破壊したが、どうやら一足遅かったようです』

「察知されたか、まあ良い、奴らの貧弱な武装で俺様達を倒せるはずが無いからな」

 

そう言いながら、ベリアルは持ち上げていたバーベルをラックへと置いて上半身を起こす。

というか、額に汗一つかいてない上に呼吸も普通なんだけどバケモノなのか?バケモノですね、そうですね。

バーベルシャフトにセットされた片側100kg(合計200kg)のプレートから目を逸らし、ベリアルとアイアロンの会話に耳を傾ける。

 

『けれども、任務終了後にブリガンテのセンサーが緊急信号を感知』

「緊急信号だと?」

『……貴様もそこに居るのか、パルデス・ヴィータァ』

 

予想外の事に思わず口を出した瞬間、不機嫌そうに自分の名前を呼ぶアイアロンの声が鼓膜に刺さる。

 

どうもファーストコンタクトがアレ(サルヴァラゴン)だったせいか、俺はアイアロンとダークゴーネからあまり良く思われていないようで、こうして塩対応される事が多い。

まあ主君への忠誠心が高い彼らからすれば、ベリアルを殺しかけた奴が側近としてのうのうと生きている事は腹に据えかねるのだろうが、我慢して欲しいものである。

少なくとも現時点では、ベリアル銀河帝国に対してこうして様々な手助けをしているのだから。

 

「ああ、私も同席している、君が私を嫌っているのは承知しているが、今は個人的感情は置いて報告を優先してくれ」

 

俺がそう発言すれば、アイアロンは不機嫌そうにしながらもベリアルへの報告を始めた。

こういったところでキチンと感情に折り合いを付けられるところには、素直に好感を持てるな。

 

『緊急信号の発信された地点は空間座標371045、コード解析の結果、信号の発信元は帝国軍が運用していた宇宙超越試験機と一致』

「宇宙超越試験機……ダークロプスゼロか、アレはチシタリア宙域での戦闘で喪失したはずだが」

 

忘れもしないチシタリア宙域での炎の海賊団との決戦。

あの時にダークロプスゼロはディメンションストームを発動し、自らも次元の穴に飲み込まれて消失したはず。

 

それが何故今になって……

 

「貴様からの報告は分かった」

 

考え込んでいた俺の耳にベリアルの声が入り我に返る。

ベリアルはしばし顎に手を当て考え込んでいたが、結論が出たのか、背後で待機していた俺の方へと視線を向けた。

 

「例の試験機、俺様も気になる。今すぐ調査の用意をしろ」

「承知いたしました」

 

俺は手早くアナライザーへと通信を繋ぐと、ベリアルからの命令を伝える。

アナライザーも近頃はAIの学習が進んだ事もあってか、おおまかな指示でも必要な物事を遂行してくれるようになった。

おかげで仕事の手間も省け、だいぶ助かっている。

 

「明日出発し、空間座標371045への調査を開始いたします」

 

そして今度こそ、部屋から退出しようとした時だ。

 

「待て」

 

突然、ベリアルが俺を呼び止めた。

何か他に用があっただろうか?と俺が疑問に思っていたその時、ベリアルは予想外の事を言い出した。

 

「俺様を調査に同行させろ」


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