悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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シン・ウルトラマンの入場特典が配布開始だそうで。
メフィラスの名刺欲しいわ。


第四十四話【そこは異次元であった】

有名な小説の冒頭に「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」という一文がある。

国語の得意な方なら、この文章が『トンネルというスイッチで現実から非日常への切り替わりを示している』という意味に取れるらしいが、

今の俺は、まさにそんな気分を味わっていた。

 

「今の状況を現すなら、『時空の長い穴を超えると異次元であった』ってところか?」

 

宇宙に開いた穴に吸い込まれ、その果てにたどり着いた場所。

そこに有ったのは、俺達が吸い込まれたのと同じ穴が無数に浮かぶ宇宙空間だった。

 

おそらくこの一つ一つが、別の世界に繋がっているのだろう。そして傍らの時計を見れば、デジタル表示の秒針は完全に動きを止めている。

間違い無い、俺の記憶が正しければココは……

 

『11時ノ方角よりダークロプスゼロからノ信号を受信、距離ハ約60000宇宙キロ』

 

アナライザーの言葉と共に、メインモニターにが切り替わる。そこに映ったのは鴇色(ときいろ)に輝く地球型惑星だった。

俺の記憶が間違っていなければ、あの星は……

 

「惑星チェイニーか……」

 

何の因果だろうか。俺は頭痛のあまり艦長席の上で頭を抱えた。

 

【惑星チェイニー】ウルトラシリーズの一作であり、ベリアル銀河帝国の前日譚にあたるオリジナルビデオ『ウルトラ銀河伝説外伝 ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ』に登場した惑星だ。

ご存じ我らがヒーローのウルトラマンゼロとサロメ星人が率いるニセウルトラ兄弟が壮絶な戦い繰り広げる舞台である。

(ちなみに、この作品は後に『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』で脚本を務めた岡秀樹氏のウルトラシリーズ初監督作品である)

 

まあ、それはともかくだ。今の状況は色々とマズい。

 

今の時系列がどうなっているかは分からないが、あの星にはサロメ星人の基地があり、異次元侵攻用のニセウルトラ兄弟が大量生産されている。

技術的優位ではサロメ星人に負ける気はしないが、今の手札はアンドロメダを除けば量産型のブリガンテ級十数隻と、それに搭載されたレギオノイドβが数十体。

レギオノイドβは量産用にある程度スペックを落として生産性や耐久性を上げており、ウルトラマンゼロと互角に渡り合うニセウルトラ兄弟が相手となると絶対的なスペックではおそらく劣るだろう。

 

それにだ、今の俺はベリアル様を連れて来ているのである。

 

これに関しては本編の事を忘れていた俺のうっかりミスだが、あまりにも致命的だ。

バレればウルトラマンゼロと敵対してしまう可能性が有る。

今後の事を考えれば、それだけは避けたい。

下手をすればウルティメイトイージスの力で次元の果てまで追って来るだろう。

 

そうなれば“詰み”である。

 

「ここはダークロプスゼロを諦めてやり過ごすべきか……」

 

このダークロプスゼロ自体は数少ない試験機で、スペックも量産型を上回ってはいるものの、既に異世界へと跳躍するシステムに関しては完成しており、後は探査機を送り込んでM78ワールドを探し当てるだけだ。

その為、炎の海賊団との一件が無ければ先兵の一体として使用する予定だった。

 

それに、ダークロプスゼロは最終的にウルトラマンゼロに敗れて自爆という末路を辿る。

証拠は消え、サロメ星人によって生み出されたこの歪な異次元は消滅し、後は此方が光の国を探し当てるまで特に特筆すべき出来事は無いはず。

 

それならば……

 

「アナライザー、次元の穴をスキャンして次回のエネルギー位相反転のタイミングを計算しろ。この異次元からの脱出を行う」

『了解』

 

考えた結果、俺が出した結論は『時空の穴のエネルギー位相が逆転したタイミングを見計らい、この異次元から抜け出す』という物だ。

ベリアル様には適当に「ダークロプスからの信号をロスト」と伝え、このままニュークシアへと帰還する。

そうすれば全てが丸く収まる筈。

 

……そう思っていた時期が、俺にも有りました。

 

《ピコーン!!》

 

突如として艦橋に鳴り響く計器の音、この音が指し示すのはただ一つ。

俺の方を向いていたアナライザーが計器の方へと目を移し、そして最悪の報告を口にした。

 

『レーダーに感アリ、11時の方向、メインモニターに映しマス』

 

惑星チェイニーの全景を映し出していたモニターが切り替わる。

 

……最悪だ。まさかこのタイミングでやって来るとは。

 

そこに映っていたのは、宇宙空間を飛ぶ複数の人影。

ウルトラマンエース、ウルトラマンジャック、初代ウルトラマンの姿が有った。

 

いや、正確には『姿を借りた偽物』と言うべきか。

 

関節部分に、オリジナルのウルトラ戦士には無いプロテクターが装着されている。

コレは間違い無く、サロメ星人が製造した『ニセウルトラ兄弟SRチーム』だろう。

 

ただ、これだけならまだ良かった。

いくらレギオノイドよりもスペックが上回るとはいえ所詮は決められた動きしか出来ないロボットだ。

数で攻めて押し潰してしまえばどうとでもなる。

 

……問題は、そのニセウルトラ兄弟に追われるようにして此方へ向かって来る存在だ。

 

燃えるような赤と大海のような青のツートンカラーに銀のラインが入った体色。鋭く吊り上がった琥珀色の双眼の上に控える二対の白銀の刃。

その姿は忘れようも無い。前世ではそのカッコよさや高潔さに心奪われ、そして今一番会いたくなかった存在……

 

「ウルトラマンゼロ」

 

緊張のあまり引き絞られた俺の喉から、掠れた音で紡ぎ出されたその名前。

 

かつて光の国をベリアルの魔手から救い、そして今の俺がこういう状況に追い込まれた原因の一端でもある若き最強戦士。

『ウルトラマンゼロ』その人が、コチラへと接近してきていた。

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