悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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第四話【星を救う事は出来ないが】

草一つ生えない荒野が広がる大地、燦々と射す太陽が隅々まで広がるその場所は、不気味な程の静寂に包まれている。

そんな冗長な風景に唯一緩急を与えるかの如く転がっている岩の陰に、一匹のトカゲが顔を出した。

トカゲはクネクネと身を躍らせながら太陽の光の下へと顔を出し、日光の温かさに浸るかのように目を閉じて恍惚とした表情を浮かべて……

 

ドォンッッ!!

 

突如として閃光が走り、岩ごと跡形も無く消し飛ばされた。

濛々と上がる煙が収まり、焼け焦げたクレーターのみがその場に残される。

 

《キュォォン》

 

そして、一つの生命を奪った下手人であるロボット……『ギャラクトロン』は、命令を果たした事に満足感を覚える事も無く、鳴き声とも起動音とも取れる音を発しながら無機質に次のターゲットを索敵し始めた。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

ギルバリスが人類に反旗を翻してから約十年の時が過ぎた。

この十年で既に惑星上の面積の約80%が奪われ、年々生存領域は狭まってきている。

水は枯れ、肥沃だった大地は乾ききり、既に国土の大半が赤茶けた大地を晒しているさまは実に痛々しい。

俺達クシアの民はどうにか状況を打開しようとしてきたものの、最近は遅滞戦術で少しでも敵の進行を遅らせる事が主になりつつある。

 

「今なら、遊星爆弾で荒廃した地球を眺める沖田艦長の気持ちが分かる気がする」

 

そんな事を考えながら俺は研究室で一人、脳内の知識を総動員して、どうにかギルバリスの侵攻を遅らせる事は出来ないかと四苦八苦していた。

 

ギルバリス本体に対しては、ファイヤーウォールでどうにか不正アクセスに対応し、残された都市機能を守っている。

「アケーリアスのプログラムならギルバリスにとっては未知のはず」という考えはある程度当たっていたようで、まだ星外に出ておらず学習が未熟な状態では流石に苦戦しているようだ。

しかし徐々にではあるが押されている為に安心は出来ない。いつかは突破されてしまうだろう事は容易に想像出来る。

 

そして物理的にやって来る敵に関しても、ある程度対応は出来ていた。

……少々、()()()()()()が必要であったが。

 

《ウォォォォン……》

 

居住区に警報が響く。

窓の外に目をやれば、地平線まで続く荒野の地平線上に一体のギャラクトロンが見えていた。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

警報が響いて住民たちがシェルターへ避難する中、居住区の防衛隊員達は複数の車両に分乗して敵の下へと向かう。

敵であるギャラクトロンは真っ直ぐに居住区へと向かって来ており、残された猶予は少ない。

 

クシアの守護神(ギャラクトロン)も堕ちたもんだなぁ」

 

変わり果てたかつての『希望』を見て一人の隊員が溜息をついた。

母星を襲おうとする侵略者に対して八面六臂の活躍を見せていた勇ましき姿は、もう存在しない。

そこには機械仕掛けの王(ギルバリス)に忠実な操り人形が有るだけだ。

 

「居住区に近づかせるな!!大砲撃てぇっ!!」

 

部隊長の号令が走り、複数の車両に備え付けられた大砲の口から爆炎と共に砲弾が発射された。

骨董品のような物ではあるが、ギルバリスに対してはアナログ兵器の方がリスクが少ない為に、現在では主力兵器となっている。

もちろんクシアでは強力なエネルギー兵器も実用化されてはいたものの、高度なコンピューターを使用するそれらはハッキングの餌食になり兼ねず、現在では完全に置物だ。

 

「弾着、()()()()()()()()前へ!!」

 

一部はレーザーで撃ち落とされたものの、数発の砲弾がギャラクトロンの機体に直撃して、その姿勢を大きく崩した。

その隙に、装甲車に守られるように背後を走っていた数台のバイクが車両の間を縫うように前へと躍り出て、装甲車が敵との距離を開けて停止する中、砂煙を上げながら猛然と敵へ向かって行く。

 

「総員、()()()()()()()起動!!」

 

先頭を走るバイクに乗った男が号令をかけると、全員が懐から()()()()()()を取り出して天にかざした。

片手に収まるサイズのソレは、長方形で表面に三つの窓が有り、その三つの窓のそれぞれから怪獣の顔が見えている。

 

《バトルナイザー、モンスロード!!》

 

瞬間、そのデバイス……『バトルナイザー』から眩い閃光と共に光球が飛び出し、姿勢を立て直そうとするギャラクトロンの下へと向かって行く。

それぞれの隊員が持つ複数のバトルナイザーから、次々と光球はギャラクトロンの前へと集結し、やがて光球の一つ一つが肥大化して怪獣の姿を形作る。

 

《グォォォォッ!!》

 

現れた怪獣達は稲妻の如く高らかな鳴き声を上げ、全身に漲る力に任せて目の前のギャラクトロン()へと襲い掛かった。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

現れた怪獣達がギャラクトロンをタコ殴りにして撃破する様子を眺め、爆炎と共に迸る閃光を見て俺は安堵した。これで今日の命は繋げられた。

俺が苦労して準備したレイオニクス部隊は、今や絶対に欠かせない防衛隊の最強戦力となっている。

しばらくはコレで大丈夫だろう。

 

ただ、ギルバリスのエネルギーリソースが整ってしまえば終わりだ。

今は自然エネルギーに頼っているので時間がかかっているものの、いつかはその時が来てしまう事は明白だった。

そうなれば山のように製造されたギャラクトロンや、惑星そのもののデータ化で完全にアウトになってしまう。

 

一刻も早く、計画を進める必要が有る。

 

そう思いながら、再びコンピュータへと向かい合った時だ。

 

《ピロリン♪》

 

一通の電子メールが届く。

【至急】の件名を見て、すぐ文に目を通すと、そこには長らく待ち望んだ内容が書かれていた。

これでやっと俺の、いや、パルデス君の願いが叶う。

 

「星を救う事は出来ないが、人命だけはどうにか救ってやるぞ」

 

だから安心して眠っていてほしいと、今は亡きパルデス君に向けて呟いた。

()()()()()』発動の時は近い。

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