悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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第四十六話【危険な仕事】

「ベリアルは俺達で倒したはず、何でこんな所に?」

 

ダラリと両腕を下げたまま、ジッと此方を見ながら動かないベリアルに、構えを解かないままゼロは思考を巡らせる。

あの時、ベリュドラを操っていたベリアルへと攻撃したのは自分だ。確実に止めを刺したはず。

そう思いながら、ゼロはベリアルを切り伏せた時の感覚を思い出すかのように、手を開いたり閉じたりする。

 

数秒、体感では数分にも数時間にも感じる程の緊張感をもって、相対したまま静止する。

 

―――先に動いたのはベリアルだった。

 

「うらぁっ!!」

「ぐっ!?」

 

一瞬でゼロへと近づいたベリアルが、そのカギ爪の付いた手でゼロを切り裂こうとする。

それに対して、ゼロは持ち前の反射神経でスラッガーを手に取り、その爪を受けた。

 

「ベリアル、お前っ!?」

 

鍔迫り合いに飛び散る火花、それを浴びながら、ゼロはある違和感に気づいた。

 

妙に力が弱い。

 

ベリアルは強い。その強靭な身体から繰り出される剛力はウルトラ兄弟を地へと沈める程だ。

だが、そんなかつての強さを感じさせない程に、今のベリアルの力は弱弱しかった。

そして、よく考えてみれば分かる事だが、ベリアル程の強大な闇が近づいて来て、ここまで自分への接近を許すほど気づかないという事はまずあり得ない。

 

そこまで考えたところで、ゼロは口元に不敵な笑みを浮かべた。

 

「そーいう事か、サロメ星人(アイツら)も趣味が悪い事をしやがるなぁ!!」

「ッ!?」

 

ゼロが力任せにベリアルを弾き飛ばし、キックで追撃を仕掛ける。

ベリアルは腕でガードするが、衝撃を殺す事が出来ずに吹き飛ばされた。

 

ここで、ゼロは()()()()()をした。

 

今まで戦っていたサロメ星人のニセウルトラ兄弟、そして突如として目の前に現れた弱すぎるウルトラマンベリアル、そこから導き出される結論は……

 

「さしづめ、『ニセウルトラマンベリアル』ってところか?」

 

そう、ゼロは目の前のベリアルを『サロメ星人が造ったロボット』だと思ったのだ。

『実は異世界で蘇っていたうえ、主人公()と戦った事で弱体化させられている』とは夢にも思わない。

 

そして対するベリアルも……

 

「ウガァァァァァッ!!」

 

目の前のゼロに対して理性を失い、完全に狂戦士状態となってしまっていた。

 

誤解が解けないまま、両者は拳を交える。

だが、勝敗は明らかだった。

 

今のベリアルはあまりにも弱すぎる。

深く激しい怒りの感情はベリアルの肉体を具現化させる程の力は有ったものの、あくまでも一時的なものに過ぎなかった。

 

拳を交える程に、ベリアルはどんどん押されていく。

やがて、惑星チェイニーの重力圏に達しそうになったところで、ゼロは先ほどよりも高く舞い上がった。

 

そして……

 

「ハァァァァァァァッ!!」

 

ゼロの右足にエネルギーが集まり、真っ赤に燃え上がる。

師匠であるウルトラマンレオ直伝の必殺技『ウルトラゼロキック』

それが、ベリアルへの腹部へと炸裂した。

 

「グァァァァァッ!?」

 

弱体化した肉体を無理やり酷使した事で、既に体力の限界に達していたベリアルは、成すすべ無くチェイニーの地表へと落下していく。

 

その姿が小さくなり、見えなくなったところで、ゼロは改めて目的地へと飛んで行った。

ニセウルトラ兄弟を止め、サロメ星人の野望に終止符を打つ為に。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

『記録映像はコレで全てデス』

「……ありがとう、アナライザー」

 

映像を見た俺は、指で眉間を押さえながら考え込む。

 

艦の応急修理が済んだのは、ベリアル様がアンドロメダの装甲を突き破って飛び出してから約一時間後。

その間はアナライザーがベリアル様とゼロの様子を記録してくれていたようで、俺は修理を終わらせた後、作業服のツナギ姿のままで艦長席に座って記録映像を視聴した。

 

「幸いにも、ウルトラマンゼロはベリアル様を偽物だと判断したようだな」

『あくまデモ感情の高ブリによるイレギュラーな復活、ウルトラマンゼロが知る全盛期ニハ程遠かったようデス』

 

アンドロメダの各種センサーは、あらゆる音波や思念波を収集出来るほどに高性能だ。

やろうと思えば、こうしてウルトラマン同士のテレパシーによる会話を収集する事も可能である。

 

だからこそ、こうして正確な状況を知る事が出来た。

 

「さて、これからどうするか」

 

しかし、状況自体は分かったが、事態は最悪だ。

ウルトラマンゼロに気づかれなかったのは僥倖ではあるものの、ベリアル様は惑星チェイニーへと落下してしまった。

時系列通りに進むのなら、チェイニーはこの後にダークロプスゼロの自爆により消滅してしまう。

いや、それ以前に俺達はこの次元に紛れ込んだ異物だ。長時間滞在してしまえば適応できずに消滅してしまう可能性が高い。

 

「全く面倒な事を……」

 

今後の為に、ベリアル様は絶対に救出しなければならない。

そうしなければウルトラマンジードの誕生は無くなり、憎きギルバリスを倒す手段が無くなってしまう。

 

「アンドロメダの完全修復にはどれぐらいかかる?」

『完全修復とナルと、艦内工場や修復用ロボットを全力で稼働サセて、最短で約二十六時間ほどデス』

「分かった。アナライザーにはアンドロメダの修理を頼む」

『了解』

 

艦長席から立ちあがった俺は、アナライザーへと指示を出し、艦橋から退出する。

そして、艦載機が搭載された艦内のドックへと向かった。

 

危険な仕事ではあるが、やらざるを得ない。

今ここに、俺一人による『ベリアル様救出作戦』が発動した。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

惑星チェイニー、何の生命体も存在しないはずの荒れ果てた地表に、一つの大きなクレーターが存在していた。

今しがた出来たばかりであろうそのクレーターからは湯気や土煙が立ち上っており、周囲の気温は高い。

 

「ぐっ……ううっ……」

 

そのクレーターの中心で、一人の男が倒れていた。

うつ伏せのまま気を失っているその男は、苦悶の表情を浮かべ苦し気なうめき声を上げている。

 

「何者だ?コイツは……」

 

その様子を、クレーターの外縁から訝しげに見る二人の男。

突如として基地のセンサーに感知された衝撃に調査をしに来てみれば、目的の場所に有ったのはこんな不可思議な光景であった。

 

「俺に聞くな。とりあえず侵入者であるという事は確かだ、基地へと運ぶぞ」

「了解っと、運が良ければへロディア様の実験動物として生きられるかもな」

 

男の一人が片手を上げると、地響きと共に巨大な物が着地する。

それは真っ赤な体色と、頭部に付いたモヒカンのような刃が特徴的な一体の巨人だ。

この巨人を知る者は、一目見てこう言うだろう。

 

『セブン』と。

 

「セブン、この男を慎重に運べ」

 

男の指示を聞いた『セブン』は無言で頷き、いまだにクレーターの中心でうめき声を上げる男をソッと手の内に収める。

そして、グッと踏ん張って飛び上がると、超音速で目的地へと飛んで行った。




主人公主導のチキチキ救出大作戦、はっじまっるよ~♪
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