悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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ウルサマへ行って来ました!!
デッカー君が大好きになるよ!!


第五十話【時のはざま】

「ペンドラゴン!?」

 

思わずヒュウガが声を上げた。

 

小高い崖の上に立つ三人の目の前で、白煙を上げ、かつての勇壮な姿からは想像も出来ない姿を晒すスペースペンドラゴン。

外観から搭乗区画は辛うじて原形を保ってはいる事が分かるが、外装を覆う特殊金属の装甲は無惨にも捲れ上がり、左舷側のエンジンは墜落の衝撃からか完全に脱落してしまっている。

 

だが、おかしい。

そもそもヒュウガとレイはスペースペンドラゴンに乗ってこの星へとやって来たのだ。

そして今、ペンドラゴンは背後の谷を抜けた先に停泊しているはず。

 

何故この場所にペンドラゴンが、それもこんなにボロボロの状態で……

不可解な状況にヒュウガが考え込んでいるその傍らで、ペンドラゴンを眺めていたレイがある事に気づいた。

 

「ボス!!」

 

レイが叫ぶような声で指さした先には、ZAPの制服を纏った人物が一人倒れている。

こちら側からは背中しか見えないが、その髪型から『とある人物』を連想させた。

 

「どうやら気を失っているらしいな」

 

パルデスの言葉を聞いてレイとヒュウガは顔を見合わせ、次の瞬間には駆け出し、崖を滑り降りていく。

その後ろ姿を見送り「ふう」と一つ溜息を洩らすと、パルデスは一人、安全に崖を降りる事が出来る道を探すのだった。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

しばらく歩いて緩やかな坂を見つけた俺は、悠々と崖の下へと降りて大破した『もう一つのペンドラゴン』の所までやって来た。

その時にはもうクマノは『もう一人のヒュウガ』の腕の中で輝き、そして光の粒となって霧散していく所だった。

 

「クマノっ……」

 

目の前で仲間が消えていくのを目の当たりにした『もう一人のヒュウガ』が、泣きそうな声でクマノの名前を呼ぶ。

光の粒子が天に昇って行くそのさまは、神秘的でどこか物悲しい。

 

「……詳しい事は分からないが、故人の冥福を祈る」

 

俺の言葉を聞いて振り返る『もう一人のヒュウガ』

それにしても奇妙な光景だ。何せ同じ顔が二つも並んでいるのだから。(片方は負傷してボロボロだが)

 

「ヒュウガ船長に双子の兄弟が居たとは……」

「「違う!!」」

 

ここで反応しないのも不自然だと思い少々ボケをかましてみたが、二人のヒュウガからまるで大音量のステレオのように返された。

正直五月蠅い……

 

まあ、ソレは置いておいて、だ。

ヒュウガとレイにとって現状は分からない事だらけだ。

 

大破した『もう一つのペンドラゴン』

目の前で消滅した仲間。

突如として現れた『もう一人のヒュウガ』

 

そして……地面に倒れ伏した大量のウルトラ戦士と、天に光を放出する謎のタワー。

 

「宇宙人の実験基地だ」

 

謎のタワーを指さして、『もう一人のヒュウガは』語る。

 

「あの基地で行われている何かの実験が、多次元宇宙に穴を開けてしまったんだ」

 

多次元宇宙。

宇宙は一つではなく、次元を隔てて同じ宇宙、同じ地球、同じ人間が平行して無数に存在する。

 

……まあ、俺は多次元宇宙の研究にも精通しているし、なんなら視聴者視点での知識も有る。

なので聞かなくても分かっているのだが、怪しまれないように口をつぐむ。

 

「だが、驚いたよ。救助に来てくれたのが別次元の我々とは……君は初めて見る顔だが、そちらの次元のペンドラゴンクルーなのか?」

「いや、私は偶然この星に迷い込んでこの二人と出会っただけだ」

「彼はこの星で仲間とはぐれたらしいんだ、今は仲間を探しがてら、私達と同行してくれている」

 

突然、『もう一人のヒュウガ』に話しかけられて驚くが、ここは無難な答えを返しておく。

そしてヒュウガのフォローも有り、『もう一人のヒュウガ』も納得したようだ。

改めてタワーへと目をやると、『もう一人のヒュウガ』は知り得る限りのこの惑星の情報と、自分達が置かれた過酷な現実について話す。

 

「我々は異物なんだよ、あの歪を通って、別次元から紛れ込んでしまった……」

 

あの塔を作った奴らのせいで、この惑星がどの次元にも属さない孤立した惑星に変えられてしまった事。

異物である我々は、この空間では適応できない事。

そして、クマノと同じくハルナやオキといったペンドラゴンクルーらも消えてしまった事。

 

「この惑星に居る限り、俺達も同じ運命って訳か」

「厄介だな、時計が止まった時点で予想してはいたが、やはりここはある種の次元の断層という事になる」

 

俺はこの次元に関して考えを巡らせる。

次元断層――宇宙戦艦ヤマト2199に登場した、通称『大宇宙の墓場』

その名の通り次元の間に存在するボイド空間であり、ワープの失敗により稀に迷い込んでしまう事が有る。

 

ん?『アンドロメダ級は大丈夫なのか』って?

確かに、次元断層は本来、波動機関にとっては致命的な弱点になりえる場所ではあるが、俺が造ったアンドロメダ級にはそこら辺の対策がキチンと行われているという事は言っておこう。

 

「君は、この空間に関して何か分かるのか?」

 

俺が何かしらの答えに行きついたと察したレイの言葉に、その場の全員の視線がこちらを向く。

ここに関しては特に隠す事は無いので、簡単にではあるが話しておくことにした。

 

「ワープの原理は分かるかな?」

 

懐からメモ帳を取り出し、ページを一枚破り取る。

そしてペンを取り出し、両端にそれぞれ【A】と【B】の文字を書いた。

 

「単純に言えば、この紙に書いたA地点とB地点の間の距離が100光年有る場合、光速の10倍の速度でも10年は掛かる、だが……」

 

紙を折り曲げ、【A】と【B】の部分を裏表になるように合わせる。

 

「こうすれば、A地点とB地点の距離は実質ゼロだ、そして……」

 

持っていたペンを、【A】と【B】の文字が重なった場所に突き刺した。

【A】と【B】の部分に穴が開き、最短距離で繋がった状態になる。

 

「今俺達が居るのはココだ」

 

【A】と【B】を繋ぐボールペンを指さす。

 

「A地点とB地点を結ぶ亜空間、厳密に言えば異なるが、ほぼ同じような物と言って差し支えは無い」

「つまり、この場所は宇宙の歪の間を繋ぐ、ある種のワープ空間という事か」

「そうなる、だからこの場所では時間も進まない」

 

俺が説明を終えると、ヒュウガとレイ、そして『もう一人のヒュウガ』は考え込む。

おそらくは、この空間から脱出する方法を考えているんだろうな。

 

だが、全員無事に脱出するにはこの空間を消滅させる必要が有る。

その為には、サロメ星人の基地を破壊するしか無いだろう。

 

「ひとまずは、脱出前にそれぞれの目的を果たさないか?」

 

俺の言葉にハッとしたヒュウガが、『もう一人のヒュウガ』へとある質問をした。

 

「君達の世界にも、レイはいるのか?」




悩んでたら小難しい説明回になってしまった。
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